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AIは著作権法を壊したのではなく「元から壊れていた著作権法の仕組み」を露呈させただけ


生成AIをめぐる著作権問題では「学習データに著作物を使っていいのか」「出力結果が著作物と似てしまったら誰が責任を負うのか」といった論点が繰り返し議論されています。テック系ブロガーのジェイソン・ウィレムズ氏は、そもそも著作権法は人間の規模で成り立つ前提に依存してきたのであり、生成AIはその前提を崩して曖昧さを表面化させただけだと自らのブログで指摘しています。

AI Didn't Break Copyright Law—It Just Exposed How Broken It Already Was | Jason Willems
https://www.jasonwillems.com/technology/2026/01/23/AI-Copyright/


ウィレムズ氏は「ソニック・ザ・ヘッジホッグの絵を自宅で描く」という行為を例に挙げて説明しています。個人的に描いて眺めるだけなら問題になりにくい一方で、SNSに投稿すると「無許可の二次創作物を公に配布した」と見なされる可能性があるように、著作権の運用は昔からグレーゾーンと黙認に支えられてきたとのこと。

しかし、生成AIはコンテンツを大量にほぼゼロコストで作れてしまうため、これまで人間の規模に収まっていた曖昧さが一気に巨額の利害へと拡大し、黙認で回っていた仕組みが耐えられなくなったのだとウィレムズ氏は指摘しています。


ウィレムズ氏は生成AIをどの段階で取り締まるかを整理すると議論の難しさが見えてくるとしています。まず、学習の段階で「著作物を含むデータでの学習を禁じる」という案は一見わかりやすいものの、インターネット上には評論・パロディー・報道などフェアユースに該当する可能性のある形で著作物への言及や断片が大量に存在します。

こうした合法的に公開された情報だけで学習した場合でも、キャラクターの見た目や特徴がAIモデルに入る可能性があるため「完全にクリーンな学習を定義するのが難しい」とウィレムズ氏は述べています。また、学習データが膨大な場合は「何を学習したか」を後から厳密に立証するのも現実的ではないとしています。


次に、生成段階で規制する場合、生成意図の判定が破綻しやすいとウィレムズ氏は指摘しています。人間が狙って著作物と似るように生成したのか、曖昧な指示によって偶然著作物と似たものが生成されたのかを機械的に切り分けるのは難しく、禁止語やフィルターのいたちごっこになりやすいとのこと。

さらに著作権の法定損害賠償は「人間がたまに侵害する前提」で設計されているため、コンテンツを安価で大量に生成できる世界にそのまま当てはめると現実離れした規模の損害が理屈上は成立してしまい、制度の正当性が揺らぐとウィレムズ氏は指摘しています。

本来著作権が強く働いてきたのは配布や公開の段階です。私的に生成して手元に置くのとYouTubeに投稿して拡散するのとでは意味が異なりますが、ウィレムズ氏は市場代替やブランド毀損(きそん)のような損害が生じるのは基本的にコンテンツの配布後、つまり投稿して拡散した場合だとしています。


ただし、責任を配布段階に負わせた場合、コンテンツが投稿されるプラットフォーム側がAI生成物の氾濫に押しつぶされかねず、逆に生成モデル側へ責任を押し戻す圧力も強まるため、結局は誰が責任を負うのかという議論になりやすいとウィレムズ氏は述べています。

また、アメリカ国内で規制を整えてもAIモデルは国境を越えて提供されるため、規制の効果が限定される可能性があります。厳しく規制するとアメリカの国内企業の足かせになり、利用が海外やオープンソースのAIモデルへ流れると「商用向けの安全なAI」と「野良のAI」の二層構造が進むかもしれないとウィレムズ氏は見立てています。

ウィレムズ氏は代案としてAI企業への補償金のような仕組みでの課金・分配や、強制許諾に近い包括ライセンスの仕組みも挙げています。とはいえ誰にどれだけお金を配るのか、どの段階で課金するのかといった点で管理コストが爆発しやすく、結局どの案も決定打になりにくいとのこと。


最終的にウィレムズ氏は今あるコンテンツをどう守るかだけではなく、コンテンツそのものが固定物からその場で生成される体験へ変わり始めている点に問題があると指摘しました。例えばニュース記事が一つの固定ページではなく読者ごとに長さやトーンが変わる生成物になった場合、著作権がどこで発生し何を保存して立証するのかという前提自体が揺らいでしまいます。

その上で、現在起きている「学習データに著作物を使っていいのか」「出力結果が著作物と似てしまったら誰が責任を負うのか」といった議論は、変わりつつある現実に従来の枠組みを当てはめて追いつこうとしているだけになっている可能性があるとウィレムズ氏は指摘しています。

この指摘についてはソーシャルニュースサイトのHacker Newsでも議論が交わされており、「技術者がこれまで著作権に批判的だったのにAIについては著作権侵害を問題視しているように見えるのは、立場の変化ではなく著作権を盾にする場合でも無視する場合でも結局は大企業が社会に害を与える構図が批判されてきたため」と整理するや、Google Booksの書籍スキャンなどを例に「テック業界はその時々の解釈で著作権の境界を押し広げてきたので、生成AIも同じ構図に見える」とするなどが出ています。

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in AI, Posted by log1b_ok

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