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トランプ大統領が中国・カナダ・メキシコに追加の関税を課し低価格の輸入品への関税免除を停止する大統領令に署名、Alibaba・SHEIN・Temuなどの格安通販アプリに影響を与える可能性


中国発の格安通販アプリであるSHEINTemuAliExpressは、関税が免除される低価格の輸入品を大量に取り扱っており、これが世界各国で問題視されています。アメリカでは関税免除規則を改正するための法案が議会に提出されていたのですが、新たにドナルド・トランプ大統領が署名した大統領令では関税免除規則が適用されないという文言が含まれており、格安通販アプリに影響を与える可能性が報じられています。

Fact Sheet: President Donald J. Trump Imposes Tariffs on Imports from Canada, Mexico and China – The White House
https://www.whitehouse.gov/fact-sheets/2025/02/fact-sheet-president-donald-j-trump-imposes-tariffs-on-imports-from-canada-mexico-and-china/


Imposing Duties to Address the Flow of Illicit Drugs Across Our National Border – The White House
https://www.whitehouse.gov/presidential-actions/2025/02/imposing-duties-to-address-the-flow-of-illicit-drugs-across-our-national-border/

Trump Tariffs Target Loophole Used by Chinese Online Retailers - Bloomberg
https://www.bloomberg.com/news/articles/2025-02-02/trump-tariffs-target-loophole-used-by-chinese-online-retailers

海外から輸入される安価な製品の場合、「関税として徴収することができる税収」を「関税を徴収するために費やされる費用」が上回るケースがあります。このようなケースを避けるため、安価な製品に対して関税を徴収しないようにするのが「デミニミス免除」です。アメリカの場合、800ドル(約12万5000円)以下の輸入品では関税が免除されるようになっています。SHEIN・Temu・AliExpressといった通販アプリは、このデミニミス免除を利用して関税を支払わずに低価格の商品を多数輸入するため、アメリカやEUで規制に向けた動きが加速しています。

SHEINやTemuのような海外プラットフォームによる輸入品急増から域内業者を守るためEUが取り締まり実施の方針 - GIGAZINE


現地時間の2025年2月1日、ドナルド・トランプ大統領はカナダ・メキシコからの輸入品に25%の追加関税を、中国からの輸入品には10%の追加関税を課すという新しい大統領令に署名しました。この大統領令は「致死的なフェンタニルを含む海外から輸入される麻薬によってもたらされる異常な脅威」に対処するためのものであると説明されていますが、対象となる地域からの輸入品にはデミニミス免除が適用されないことも明記されています。

デミニミス免除が適用されないのが、メキシコ・カナダ・中国からの輸入に追加で課税される分だけなのか、既存のあらゆる貿易税なのかは不明です。ホワイトハウスの報道官は変更の範囲についての質問に回答しませんでした。しかし、貿易関連の法律に詳しい弁護士はトランプ大統領のデミニミス免除撤廃は、中国・カナダ・メキシコに対する既存の関税にも広く適用される可能性があると指摘しています。


これが実現した場合に大きな影響を受けるのは、SHEIN・Temu・AliExpressといった中国の通販アプリです。これらのアプリが格安で商品を販売できる大きな要因となっているのがデミニミス免除であるため、これが撤廃されることとなれば膨大なコストがかかるようになり、格安で商品を販売することができなくなる可能性があります。なお、アメリカ合衆国税関・国境警備局(CBP)の推計によると、アメリカが2024年1~9月に世界中から輸入した貨物に適用されたデミニミス免除は約480億ドル(約7兆5000億円)相当に上るそうです。

世界最大級のオンラインショッピングサイトであるAmazonは、購入からわずかな時間で商品を配送するという強みを活かしてきましたが、SHEIN・Temu・AliExpressといった中国発の格安通販アプリは配達まで時間がかかるものの、格安で商品が購入できるという点でAmazonに対しても優位性を獲得しています。市場調査会社・eMarketerの推計によると、Temuは2025年にアメリカ人ユーザーに300億ドル(約4兆6700億円)相当の商品を販売する見込みです。

トランプ政権による新しい関税措置について説明した政府高官は、デミニミス免除を撤廃する理由として「アメリカが莫大な関税収入を失っていること」および「税関職員がアメリカ国内に持ち込まれるフェンタニルを発見することが難しくなっていること」を挙げました。ただし、デミニミス免除撤廃が適用される範囲については明らかにしていません。


野村ホールディングスの調査によると、中国からアメリカへ輸出される「デミニミス免除に該当する少額貨物」は、全輸出の10分の1以上だそうです。CBPによると、アメリカに輸入される「デミニミス免除に該当する少額貨物」の総量は2024年に14億個に達しており、これは2022年時点の約2倍に相当する模様。これらはSHEIN・Temu・AliExpressといった中国発の格安通販アプリの流行が大きな要因であるとみられています。

なお、Temuはデミニミス免除撤廃の動きに対応するため、アメリカに大量の在庫を出荷し、大都市近郊の倉庫で保管するなどの施策を取っているとされています。これに対してBloombergは、「デミニミス免除撤廃の影響を緩和することに役立つものの、格安商品を販売するTemuのビジネスモデルには圧力がかかっているはず」と指摘しました。

イェール大学ジャクソン国際問題大学院のアミット・カンデルワル教授は、デミニミス免除が撤廃されれば一部の消費者に打撃を与えることになるだろうと語っています。

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in ネットサービス, Posted by logu_ii

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