サイエンス

食事関係の研究結果はどうしようもなく不正確、理由は「人は食べたものを覚えていないから」


「コーヒーは体に良いのか?」「チョコレートを週にこれだけ食べる人はやせやすい」といった研究を実施する場合、たいていは人々の食事習慣と健康状態との関連を探すことが多くなります。しかし、2025年1月に発表された論文では、人々の食事習慣を調査するアプローチがいかに当てにならないかが示されました。

Predictive equation helps estimate misreporting of energy intakes in dietary surveys | Nature Food
https://www.nature.com/articles/s43016-024-01090-y

People are bad at reporting what they eat. That’s a problem for dietary research | Science | AAAS
https://www.science.org/content/article/people-are-bad-reporting-what-they-eat-s-problem-dietary-research


栄養学などの研究では通常、被験者に過去24時間、1週間、または数か月間の食事日記をつけてもらったり、特定の食事の摂取量に関するアンケートに答えてもらったりします。これまで生物統計学者は、人々が記憶を間違えたり、摂取したことを認めたがらなかったりする可能性があるため、このアプローチは信頼できないと長年警告していました。一部の研究者は、人間の生存に必要な最低量を下回る摂取量を報告する被験者を統計から除外するなど、アンケート結果の不正確さという問題を軽減する方法を提案して対処していますが、中には食事研究における調査を完全にやめるべき時だと主張する研究者もいます。インディアナ大学ブルーミントン校公衆衛生学部の生物統計学者であるデイビッド・アリソン氏は「この種のデータは非常に質が悪いため、使用する価値すらありません」と述べ、研究や政策で食事に関する自己申告に頼ることに反対しています。

リーズ大学医学・健康学部心理学部のR・ジェームズ・スタッブス氏らは、データセットから得られた人々のエネルギー消費量を測定する技術を用いて、食事に関する調査における回答の正確さを評価する方程式を考案しました。この方程式を用いて、国民健康栄養調査などの大規模で広く使用されている栄養調査データベースの記録を調べたところ、半分以上が「人々が摂取した食品を過少報告している」ために間違っている可能性が高いことがわかりました。スタッブス氏らの論文は、2025年1月に査読付き学術雑誌のNature Foodに掲載されました。


スタッブス氏は「今回の研究結果は、食事における回答を基にしたデータセットを使用して特定の食事と人間の健康を関連付けた何千もの研究に、疑問を投げかけるものです」と主張しています。インペリアル・カレッジ・ロンドンの栄養学者であるゲイリー・フロスト氏は「この種のデータに基づいて食品に関する政策を策定しようとするなら、明らかにその政策は根本的にある程度欠陥があるということです。人々が実際に何を消費しているかを理解するには、新しい方法論を探さなければなりません」と論文を評価しています。

アンケートを基にした食事の調査は不正確だという指摘は、過去にも行われています。2023年に発表された研究では、特殊な水を被験者に飲ませて尿サンプルを検査することで実際の食事内容を把握する二重標識水法による調査が実施されました。この調査をイギリスの国民食事栄養調査の結果と合わせて分析したところ、30%が報告した摂取量よりも食べ過ぎていることが判明しました。

スタッブス氏らの研究では、同様のロジックをさらに大規模なデータセットに適用し、二重標識水による測定値に性別や年齢、体重などの特性を含めた方程式を確立しました。結果として、国民食事栄養調査の記録のうち50%以上が正しく食事の量を報告していないことがわかっています。


一方で、ハーバード公衆衛生大学院の栄養疫学者であるウォルター・ウィレット氏は、食事に関するアンケート結果を不正確だとしたスタッブス氏らの研究には欠陥があると指摘しました。まず、二重標識水ではエネルギー摂取量を正確に把握できない可能性があります。また、ウィレット氏によると、誤報告の問題は適切に実施された研究における食事と疾患の関連性を歪めるほど深刻ではなく、複数の科学的証拠に基づく食糧政策を弱体化させるほどではないとのこと。

アメリカ全国民健康・栄養調査を監督するアメリカ国立健康統計センターは、Science誌への声明で「食事調査における報告の不正確性はよく知られていますが、それでもこのデータは貴重で重要です。食事に関する聞き取り調査員の集中的な訓練など、データの質を高めるために重要な措置を講じているほか、研究者向けにデータの分析方法に関する指導も提供しています」と述べました。

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in サイエンス,   , Posted by log1e_dh

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