サイエンス

ニンジンを食べると「2型糖尿病」対策になるとの研究結果、専門家が推奨するニンジンの食べ方は?


ニンジンは栄養が豊富な食材ですが、野菜としては糖分が多めなので、糖質制限をしている人からは避けられることがあります。そんなニンジンを不健康な食生活を送らせたマウスに与える実験により、ニンジンを食べると血糖調節機能が改善するとの結果が得られたとの論文が発表されました。

Effect of carrot intake on glucose tolerance, microbiota, and gene expression in a type 2 diabetes mouse model - Kobaek‐Larsen - 2024 - Clinical and Translational Science - Wiley Online Library
https://ascpt.onlinelibrary.wiley.com/doi/10.1111/cts.70090

Carrots vs. Diabetes: Surprising New Research Shakes Up Treatment Options
https://scitechdaily.com/carrots-vs-diabetes-surprising-new-research-shakes-up-treatment-options/

2型糖尿病は、血糖値を調節するインスリンの分泌が不十分になったり、インスリン抵抗性によりインスリンの効きが悪くなったりすることにより発症する病気で、症状のコントロールには食事療法やチアゾリジンジオンなどの経口薬が用いられます。


ニンジンなどの野菜に含まれる生理活性物質が、2型糖尿病治療薬の効果を副作用なしで再現するとの先行研究に着目した南デンマーク大学とコペンハーゲン大学の研究チームは、マウスにニンジン粉末を摂取させる実験を行いました。

実験に用いられた54匹のマウスは、18匹ずつ3つのグループに分けられて「高脂肪食」「高脂肪食+ニンジン粉末」「比較のための低脂肪食」のエサを与えられました。


なお、高脂肪食のみのグループと、高脂肪食にニンジン粉末を混ぜたエサのグループは、摂取する総カロリーが同じになるように調整されました。

16週間の実験の結果、ニンジンを与えられた高脂肪食のマウス(下図の赤線)は、ニンジンを与えられなかった高脂肪食のマウス(緑線)に比べて、グルコースを投与してから30分後の血糖値が有意に低いことが確かめられました。これは、ニンジンを食べたマウスは血糖値をコントロールする体の機能が改善されていることを示唆しています。


さらに、研究チームがマウスのフンを採取して腸内細菌を分析したところ、2種類の指標の両方で、ニンジンを摂取したグループのマウス(下図のオレンジ色)が最も腸内細菌の多様性が豊かだという結果が示されました。


この結果から、南デンマーク大学臨床研究学部の准教授であるモーテン・コベック・ラーセン氏は「私たちの研究は、ニンジンを食べると消化や健康の維持に重要な役割を果たす腸内細菌のバランスがより健康的に変化し、2型糖尿病のマウスにいい影響を与えることを示しました」と述べました。

ニンジンにはβ-カロテンや食物繊維を含むさまざまな栄養素が含まれていますが、研究チームは特にファルカリノールファルカリンジオールという生理活性物質に注目しています。

ニンジン、パセリ、セロリ、パースニップといったセリ科の野菜に含まれているこれらの生理活性物質は、今回観察された抗糖尿病作用のほかにも、抗炎症作用や抗菌作用、抗がん作用を持つことが知られています。

しかし、食材に含まれる生理活性物質は調理や加工によって減ってしまう可能性があります。今回の実験でマウスに与えたニンジン粉末も、地元の生産者が有機栽培したニンジンをフリーズドライして作られたものだとのこと。

効果的なニンジンの食べ方について、論文の共著者である南デンマーク大学のラース・ポルシャー・クリステンセン氏は、「長時間煮炊きしても、ある程度の生理活性化合物は残りますが、これらの有益な化合物ができるだけ多く残るようにするためには、生のニンジンか軽く調理しただけのニンジンが最良の選択肢のようです」とアドバイスしました。


ニンジンが大腸がんに及ぼす影響に関する予備的な調査では、生のニンジンまたは軽く調理したニンジンを毎日30~40グラムほど摂取すれば、有益な効果が得られる可能性があることが示唆されています。

ただし、今回の実験を含めたこれらの研究はあくまでマウスが対象で、人間にも当てはめられるかどうかはまだ確かめられていません。また、精製されたファルカリノールやファルカリンジオールを投与したわけではないため、本当にこれらの生理活性物質が効果を発揮しているのかどうかも不明です。

クリステンセン氏は、「私たちの研究は動物モデルを使用したものですので、臨床試験を行うことが次のステップとなりますが、それには多額の費用がかかります。そこで、私たちは比較的高濃度の生理活性物質を含むニンジンを使った小規模な臨床試験を行うための外部資金の確保に取り組んでいます。これにより、精製された生理活性化合物を使った動物実験などの大規模な臨床研究への道が開かれ、最終的にニンジンの2型糖尿病予防効果の実証につながる可能性があります」と話しました。

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in サイエンス,   , Posted by log1l_ks

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