毎日コーヒーやお茶を飲む人は「首から上のがん」のリスクが2~3割少ないことが判明
コーヒーやお茶を習慣的に飲む人は肥満や糖尿病のリスクが低いことや、心臓発作や脳卒中になった後の生存率が高いことなど、世界中で親しまれているこれらの飲み物は健康面のさまざまなプラスの影響と関連していることがわかっています。新しく、コーヒーやお茶を習慣的に飲む人は、口腔(こうくう)がんや喉頭(いんとう)がんなどの「頭頸部(とうけいぶ)がん」のリスクが低いことが確かめられました。
Coffee and tea consumption and the risk of head and neck cancer: An updated pooled analysis in the International Head and Neck Cancer Epidemiology Consortium - Nguyen - Cancer - Wiley Online Library
https://acsjournals.onlinelibrary.wiley.com/doi/full/10.1002/cncr.35620
Drinking tea and coffee linked to lower risk of head and neck cancer in study | Medical research | The Guardian
https://www.theguardian.com/science/2024/dec/23/drinking-tea-and-coffee-linked-to-lower-risk-of-head-and-neck-cancer-in-study
アメリカ・ユタ大学ハンツマンがん研究所のユアンチン・エイミー・リー氏らの研究チームによると、頭頸部がんは世界で7番目に多いがんで、2020年だけで約74万5000人の新規患者と36万4000人の死者が報告されているとのこと。高所得国では減少傾向にありますが、ヒトパピローマウイルス(HPV)の流行を背景に中咽頭(ちゅういんとう)がんの発生率は着実に伸びています。
2024年12月23日に、アメリカがん協会の学術誌・Cancerで発表した研究で、リー氏らは欧米や南米で行われた合計14件の調査のデータを分析しました。これらの調査は、参加者にコーヒーとお茶の消費パターンを尋ねるアンケートを実施するもので、9件にはカフェインレスコーヒーに関する質問もありました。なお、お茶は紅茶か、緑茶か、ウーロン茶かなど具体的にどのような種類なのかは決まっていませんでしたが、調査対象となった地域はいずれも紅茶がよく消費されている地域だったと研究チームは記しています。
そして、研究チームがデータに含まれていた頭頸部がん患者9548人と、対照群の参加者1万5783人について分析した結果、カフェイン入りコーヒーを1日4杯以上飲むと頭頸部がん全体のリスクが17%、口腔がんのリスクは30%、中咽頭がんのリスクは22%低下することがわかりました。また、1日の摂取量が3~4杯の場合は下咽頭がんのリスクが41%低下しました。
なお、カフェインレスコーヒーについては口腔がんリスクとの逆相関が見られ、1日の平均摂取量0~1杯の人は口腔がんリスクが34%低かったとのことです。
一方、お茶をよく飲む人は下咽頭がんのリスクが29%、特に1日の摂取量が0~1杯の人は頭頸部がんのリスクが9%、下咽頭がんのリスクが27%低いという結果でした。
リー氏はこの結果について、「コーヒーやお茶の摂取とがんリスクの減少に関する研究はこれまでにもありましたが、今回の研究では、カフェイン抜きのコーヒーでも何らかのいい影響があったという観察を含め、頭頸部がんのさまざまな部位に対するさまざまな効果が強調されています」と述べました。
カフェインレスのコーヒーでも一定の効果が見られたため、研究チームはカフェイン以外の生理活性化合物、特にポリフェノールがコーヒーとお茶の抗がん作用に寄与しているのではないかと考えています。
また、過去の研究では緑茶と口腔がんリスクの間に逆相関が見られたのに対し、今回の研究では1日1杯以上お茶を飲むと咽頭がんリスクが38%上昇してしまうとの結果が示されました。
過去の研究は、緑茶がよく飲まれているアジアのデータが中心だった一方、前述の通り今回の研究の対象となった地域では紅茶がよく飲まれており、研究チームは「紅茶は酸化されているためカテキンの濃度が低く、緑茶より抗酸化作用が低いこと」や、「お茶に含まれているテオフィリンが胃食道逆流症を引き起こすおそれがあること」が結果に影響したと推測しています。
研究チームは論文の中で、「これらの調査結果は、コーヒーやお茶を飲む人は頭頸部がんリスクが低減されることを裏付けています」と結論付けました。
また、研究には携わっていないロンドン大学キングス・カレッジの栄養学者のトム・サンダース氏は、イギリスの大手一般紙・The Guardianの取材に対し、「コーヒーやお茶をたくさん飲む人は、飲酒や喫煙といった他の有害な行動を避ける可能性が高いなどの理由でがんのリスクが低い可能性があります」と指摘しました。
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