退屈で単調な人生をより豊かで面白くする「マインドフルネス2.0」とは?
朝にスマートフォンのアラームが鳴って起きた時、「また退屈な会社へ行かなくてはならないのか……」と暗い気持ちになったり、単調なのに厄介なタスクばかりが積み上がる日々にうんざりしたりしている人は多いはず。そんな退屈で単調な人生をより豊かで面白くする「マインドフルネス2.0」について、アメリカのミドルベリー大学で哲学教授を務めるロレイン・ベッセル氏が解説しています。
Transform the daily grind to make life more interesting – a philosopher shares 3 strategies to help you attain the good life
https://theconversation.com/transform-the-daily-grind-to-make-life-more-interesting-a-philosopher-shares-3-strategies-to-help-you-attain-the-good-life-243242
ベッセル氏らが行った幸福や心理的豊かさについての研究では、人々は「挑戦的で心を刺激し、さまざまな感情を生み出してくれる経験」を大切にしていることがわかりました。多くの人々は「幸せな人生」や「有意義な人生」よりも、「心理的に豊かな人生」を選ぶとのこと。
ベッセル氏は自身の著書「The Art of the Interesting: What We Miss in Our Pursuit of the Good Life and How to Cultivate It(面白さの極意:良い人生を追い求めるあまり見落としているもの、そしてそれを育てる方法)」の中で、人生をより面白いものにすることで心理的な豊かさを加える方法について解説しています。人生に心理的な豊かさを加える最も簡単な方法のひとつが、「マインドフルネス2.0」という考え方を受け入れることだそうです。
◆「マインドフルネス2.0」とは?
ベッセル氏はマインドフルネス2.0について、「あなたの周りの世界に非評価的な認識をもたらすこと、つまり価値を判断せずに注意を払うことを意味します」と述べています。たとえば観葉植物の葉の質感に注目してみたり、歩道ですれ違う見知らぬ人の顔に注意を払ってみたり、スーパーの棚に並ぶ缶の大きさの違いに着目してみたりと、普段見落としがちな細部に意識的に目を向けることがマインドフルネス2.0です。
マインドフルネス2.0を通じて自分を取り囲む物事の詳細に気付くことで、心が刺激され、周囲と精神的に関与し、興味深い体験をすることができます。ベッセル氏は、特に朝の通勤中がマインドフルネス2.0を実践するのにオススメなタイミングだとアドバイスしています。多くの人々は通勤中にスマートフォンで動画を見たり、音楽やポッドキャストを聞いたりすることで時間を過ごしていますが、これは「退屈な通勤」という人生の一部から目をそらすことに他なりません。
逆にマインドフルネス2.0は、通勤中に見聞きするものに注意を払い、積極的に通勤に関わることで退屈さを軽減します。通勤中に目に付いた「バス停に集まっている人々」「信号の切り替わりによって変わる交通のパターン」「頭上を飛んでいる鳥の群れ」など、周囲の物事に気付くことで心が動かされ、興味深い体験の準備ができます。
◆好奇心を持って探求する
マインドフルネス2.0を通じて周囲の物事の細部に目を向けると、好奇心を持って日常のささいな物事を考えてみることが可能になります。たとえば朝の通勤中、「バス停の前に多くの人々が集まっている」ということに気付いたとしたら、好奇心によって以下のような疑問を思い浮かべることができます。
・あのバス停は自分が通勤を始めた時からあったのだろうか?
・バス停に貼ってある奇妙な不動産屋の広告は、いつから同じ場所にあったのだろう?
・彼らと一緒にバス停に並んだら、心のつながりを感じることができるだろうか?それとも彼らは、何の仲間意識も持たずに同じバスに乗っているのだろうか?
ベッセル氏は、「質問をすることで、それまで考えもしなかったことを考えるようになります。新たな思考が生まれ、その思考を継続させれば、同じ通勤をしている間に面白い経験をすることができます。さらにいいことは、その面白い体験を自分自身で作り出したということです。あなたは自分の人生を向上させ、コントロールする能力を使いこなしたのです」と述べました。
◆創造性を発揮して新しいことに挑戦する
さらに日常を面白くするためには、「創造性」を発揮することも大事です。創造性はアーティストや発明家だけに備わっているるものだと思うかもしれませんが、実際のところ職業や趣味にかかわらず誰もが創造的になることが可能です。ベッセル氏は、「創造性とは心と新たなつながりを形成するスキルです。何か新しいことや違うことをする時は、いつでも創造的になっています。鮮やかな風景画を描いたり、新しい色の組み合わせを着こなしたり、新しい料理を開発したり、単にレシピを微調整したりすることも、すべては創造性の傘下にあるのです」と述べています。
少しの創造性を発揮することで人生に大なり小なり目新しさが生まれ、それが心理的な豊かさにつながります。普段着ない服を着てみたり、手書き文字にちょっと凝ってみたり、いつもと違う色のペンで文字を書いたり、スクリーンセーバーやスマートフォンの壁紙を変えてみたりするだけでも、日々のルーチンに斬新さがもたらされます。これらの小さな微調整が日常に及ぼす影響に目を向けるようになると、これらの創造性が少しずつ日常を面白くしていることに気付けるとのことです。
ベッセル氏は、「面白いと感じる体験は人それぞれです。物事を面白く感じるかどうかは、私たちの心がどのように関わり、反応するのかにかかっているからです。マインドフルネス2.0を開発し、自分の経験に好奇心と創造性を持ち込むことで、どんな経験も面白いものに変えるような関わり方や反応ができるよう、心を訓練することができます。これがマインドセットがもたらす力です。誰でも開発することができる、人生を向上させる能力なのです」と述べました。
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