なぜかオーストラリア人に熱烈に愛されている超大陸「ゴンドワナ大陸」とは?
by Heribert Bechen, 5 million visits - many thanks!
人類やその祖先が誕生するよりずっと以前、現在の南アメリカやアフリカ、インド、オーストラリア、南極などの大陸はゴンドワナ大陸というひとつの巨大な超大陸でした。このゴンドワナ大陸の名前の由来や、現在の文化への影響について、教養雑誌のAustralian Geographicがまとめています。
Gondwanaland: the search for a land before (human) time - Australian Geographic
https://www.australiangeographic.com.au/topics/history-culture/2024/09/gondwanaland/
以下のムービーを再生すると、ゴンドワナ大陸を含む地球上の大陸の変遷を見ることができます。
ゴンドワナ大陸のアニメーション - YouTube
ゴンドワナ大陸はさまざまな大陸が分裂と衝突を繰り返す中で誕生しました。このアニメーションは、約2億年前にパンゲア大陸が分裂するところから始まっています。
これにより、超大陸はゴンドワナ大陸とローラシア大陸にわかれました。
その後もプレートテクトニクスにより大陸は分裂や衝突を繰り返し、長い歳月をかけて現在の姿になりました。
オーストラリアのニューサウスウェールズ大学で歴史を教えているアリソン・バシュフォード教授によると、ゴンドワナは「ゴンド族の土地」という意味で、地質学者のエドアルト・ジュースが1885年にインド中部のゴンド族にちなんで名付けたものだとのこと。
そのため、ゴンドワナ大陸は単に「Gondwana(ゴンドワナ)」と呼ばれることもあれば、インドの地域と区別するためにあえて「Gondwanaland(ゴンドワナランド)」と呼ばれることもあります。一方、前述のとおりゴンドワナそのものに「ゴンド族の土地」という意味があるため、そこに「land」を付けるとサハラ砂漠(サハラに砂漠という意味がある)のような重複表現になると指摘する研究者もいます。
皮肉なことに、植物の化石などの証拠を元にゴンドワナ大陸が再発見された当時、ゴンド族の人々は森林伐採や石炭の採掘のために故郷を追われつつありました。記事作成時点でも、インドにはゴンド族の帰還と国家としての独立を求めるゴンドワナ・ガタントラ党(ゴンドワナ共和国党)という政党があります。
このような経緯で提唱されたゴンドワナ大陸ですが、当初は仮説にとどまっており、アトランティス大陸と同じような架空の大陸として扱われていたと、バシュフォード氏は話します。
ゴンドワナ大陸(Gondwanaland)の「land」という言葉は神秘的な異世界のイメージと関連付けられ、大地の裂け目から別世界や別の時空に到達するという筋書きのSF小説の舞台になったこともありました。
やがて、プレートテクトニクスにより大陸が動くのだということが科学的に裏付けられると、かつてゴンドワナ大陸が実在していたことが確実視されるようになりました。
地質学的にも歴史的にもインドとの関係が深いゴンドワナ大陸ですが、Australian Geographicによると現代のオーストラリア人はなぜか「ゴンドワナ大陸という言葉は自分たちのものだ」と考えているとのこと。
オーストラリア企業のリストを検索すると、ゴンドワナもしくはゴンドワナ大陸を社名にした企業が350社ほどヒットするそうで、スパからアートギャラリー、オーストラリアで有名な児童合唱団まで、あらゆるものにゴンドワナの名前が付けられています。
その理由は不明で、バシュフォード氏は「オーストラリア人がなぜこんなにゴンドワナ大陸を独占しているのかは、私たちの研究テーマの1つです。こんな話はインドにも南アフリカにもなく、このオーストラリアにしかありません」と話します。
オーストラリアにおけるブランドとしての「ゴンドワナ大陸」の魅力のひとつは、その言葉から連想される時間と空間の壮大さや、太古の純粋なイメージ、そして好意的な印象だとのこと。
「もしこの言葉が著作権保護の対象であれば、そうなっていたでしょうね」とバシュフォード氏はコメントしました。
あまり関係がないのにオーストラリアのものになってしまったのはゴンドワナ大陸だけに限らず、例えばWi-Fiもオーストラリアで発明されたことになっています。
なぜオーストラリアが「Wi-Fiオーストラリア起源説」を主張しているのか? - GIGAZINE
約2億年前からゆっくりとバラバラになったゴンドワナ大陸ですが、その物理的な部分は今でも紅海やアマゾン川流域、南極など世界各地に存在しており、現在の地球に重要な影響を及ぼしています。
というのも、この時代に生きていた古代の動植物を人類が掘り起こし、石炭として燃やしているからです。
文脈によっては、石炭は「ゴンドワナ大陸の贈り物」とも呼ばれているとのこと。
バシュフォード氏は「世界が石炭をどのように使うか、あるいは使わないかに向き合っている今も、ゴンドワナ大陸の石炭の物語は生きていて、重要な意味を持っています」と話します。
ゴンドワナ大陸が残したものは石炭だけではありません。1986年には、オーストラリアに広がる熱帯雨林が、ゴンドワナ大陸との生態学的なつながりを理由にユネスコの世界遺産に登録され、2007年には正式に「ゴンドワナ熱帯雨林」と命名されました。
by Timothy M Roberts
1980年代まで、これらの熱帯雨林は伐採の対象となっており、世界遺産への登録は科学者や環境保護団体の活動のたまものと言えます。
しかしながら、オーストラリア政府がゴンドワナ熱帯雨林を保護するよりはるか以前から、オーストラリア先住民であるアボリジニの人々がこの森を守ってきたにもかかわらず、世界遺産の登録にはそのことが一切触れられていないなど、問題もあります。
ニューサウスウェールズ大学シドニー校とフリンダース大学が主導する国際的な取り組み「Gondwana/Land」では、歴史学者や地質学者、人類学者らを巻き込んでゴンドワナ大陸の歴史や文化的な遺産をまとめるプロジェクトが進められており、バシュフォード氏は「ある意味、私たちのプロジェクトはゴンドワナ大陸を再び1つにまとめるものです」と話しました。
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