オーストラリアの東に隠されていた大陸「ジーランディア」を裏付ける科学的資料が公表される
地球にはユーラシア大陸・アフリカ大陸・北アメリカ大陸・南アメリカ大陸・オーストラリア大陸・南極大陸という6つの大きな大陸があることが知られていますが、これらとは別の大陸の存在についての研究が進められてきました。近年行われた研究からはオーストラリアの東・ニュージーランドなどが位置するあたりに「Zealandia (ジーランディア)」と呼ばれる、大陸に相当する広大なエリアが存在していることが確実となってきました。
'Zealandia': New continent on Earth is sitting off Australia's coast - Business Insider
http://www.businessinsider.com/zealandia-continent-new-zealand-australia-2017-2
研究グループが調査を行ってきたジーランディア大陸は、以下の地図の中央付近にグレーで示されている部分。オーストラリア大陸の東に位置してニューカレドニアからニュージーランドをすっぽり覆ってしまうほどの広さで、面積は490万平方km。この広さはオーストラリア大陸のおよそ64%にも及び、インドからヒマラヤ山脈にわたるインド亜大陸とほぼ同じものとなっています。
あまり耳なじみのない人も多そうなジーランディア大陸ですが、その存在は2000年代前半から注目が集まっていました。ニュージーランドおよびニューカレドニア周辺に深さ1000メートル以下の海の浅い地域が広がっていたことから、かつてこの地域が大陸であり、地殻変動の中で海に沈んだのではないかと考えられてきました。
By Alexrk2
もう少し範囲を広く見てみた様子が以下の画像。赤枠のほぼ中心にあるニュージーランドと、左上にある細長いニューカレドニアが海の浅い(=海底図の色が薄い)部分でつながっており、平地に近いなだらかな地形が形成されていることが見てとれます。ちなみに赤枠の左側にあるのはオーストラリア大陸で、ジーランディア大陸の大きさがここからも感じられるかも。
先述のように、ジーランディア大陸は過去15年ほどの間に知られるようになってきましたが、それが大陸であることを裏付ける科学的根拠に乏しい状態が続いていました。しかし、2017年2月15日にGeological Society of America (アメリカ地質学協会)」が発表した内容において、10年余りにおよぶ研究の成果が公表されています。
GSA Today - Zealandia: Earth’s Hidden Continent
研究グループの成果について、海洋学博士であり1995年に最初に「ジーランディア大陸」の存在を提唱したブルース・ラインダイク氏は「研究を発表したのは最優秀クラスの学者の集まりであり、強固な証拠を集めて徹底的な内容を示しました。詳細な部分を除き、この説に異論を唱える動きは見受けられません」と語っています。なお、ラインダイク博士は今回の調査には加わっていません。ちなみに「ジーランディア」の名付け親はラインダイク博士で、その由来は「ニュージーランド」と「ニューカレドニア」、そして「ゴンドワナ」という3つの名前の組み合わせだとか。
ジーランディア大陸は、近年にできた新しい大陸というわけではありません。むしろ本当の姿は全くの正反対で、今からおよそ2億年前に存在していたゴンドワナ大陸の一部を形成していたと考えられています。およそ2億年前に分裂を始めたゴンドワナ大陸から現在の南極大陸が生まれ、その一部として存在していたエリアが分裂してオーストラリア大陸とジーランディア大陸に分裂してきたものだとのこと。その証拠として、ジーランディア大陸の地中には、南極などで見られる植物の化石と同じものが堆積していることが確認されているそうです。
研究チームは10数年に及ぶ調査の結果を、地質学者が「大陸」であることを判断する時に使う以下の4つのポイントにあてはめて大陸と認められるかどうかを判断したとのこと。
1.海洋底と比較して突きだした位置にあること
2.以下の3つのタイプの岩石による多様性を持つこと:火成岩(噴火によって生成)、変成岩 (熱と圧力によって変成したもの)、堆積岩 (岩石の風化・浸食によってできたもの)
3.周囲の海洋底と比較して、厚みがあり、密度が低い地殻の部分であること
4.「微小大陸」や「大陸断片」に分類されない十分に広大な領域を持っていること
研究チームは今回の調査結果により、ジーランディア大陸は4つの条件の3番目までを十分に満たすと判断しています。残るは「十分に広大な領域を持っていること」という点ですが、ここには多少の議論もあった模様。海上に姿を見せている主な地形がニュージーランドとニューカレドニアの国土である点が大きな論点となったわけですが、研究チームは人工衛星を用いた調査結果と微細な重力の違いを計測した「重力地図」を用いることで、ジーランディア大陸は全体して1つの大きな領域であり、インド亜大陸と肩を並べるほど大きなものであることを裏付けています。
また、地球には海が存在していることもジーランディア大陸の判断に影響を与えたとも。研究チームはこの点について、もし地形が隆起している状態の調査が水がない火星や金星と同じ基準で行われていたとしたら、ジーランディア大陸はもっと早くから大陸として認識され、調査されていただろうと記しています。
また、オーストラリア大陸とは別の大陸であることも明らかにされています。以下の地図のように、ジーランディア大陸とオーストラリア大陸は一部がほぼ接しているような状態になっていますが、実際には別の大陸になっています。
その様子は以下のページの地図で詳細に見ることができます。両大陸の間には「Cato Trough」と呼ばれる海峡のような場所があり、25kmの距離で2つの大陸を隔てています。
Cato Trough, Undersea Features - Geographical Names, map, geographic coordinates
さらに、上のイラストのように、ジーランディア大陸は太平洋プレートとオーストラリアプレートという2つの地殻にまたがっていることも大陸であるかどうかを裏付ける障壁になっていたとのこと。この点について研究チームは、アラブ地域や中央アメリカ、そしてアメリカのカリフォルニアなどにもプレートの境界はあるものの、いずれの地域も1つの「大陸」の一部として認識されている点を挙げています。ラインダイク博士は「私はカリフォルニア在住で、ここにはプレートの境界があります。今後数百万年後、カリフォルニアの西部一帯は今のアラスカの辺りまで移動すると考えられています。そうなった時に、『もう北アメリカの一部ではない』と言えますか?そんなことはないですよね」と語っています。
現在のジーランディア大陸は大部分が海に沈み、海上に姿を現しているのは全体のわずか5%の領域だけとなっています。かつては海面上に姿を見せていたジーランディア大陸でしたが、プレートテクトニクスの働きにより地殻が引き延ばされることで薄くなり、徐々に海中に沈んでいった結果、現在のような姿になったと考えられているとのこと。
このように長年の謎が徐々に明らかにされてきたジーランディア大陸の存在ですが、ことニュージーランドという国家にとっては単なる学術的な成果以上の意味を持つ可能性もあります。大陸を取り巻く海面下の大陸の延長部分は「大陸縁辺部」と呼ばれており、海に面する国家の場合はどの領域までその国による採掘が許可されるかが決定されると国連によって合意がなされています。ジーランディア大陸の地下には数兆円レベルの化石燃料が眠っているともみられるため、ニュージーランドにとっては極めて重要な領域であるとも言えるというわけです。
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