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古代ギリシアや古代ローマの人々は「メンタルヘルス」についてどう考えていたのか?


世界保健機関(WHO)によると世界中で約2億8000万人がうつ病を患っており、約10億人が何らかの精神疾患を抱えながら生活しているとのこと。しかし、当然ながらメンタルヘルスの問題は現代に限ったものではなく、古代世界の人々もメンタルヘルスの問題に悩まされていました。オーストラリアのメルボルン大学で歴史哲学を研究しているコンスタンティン・パネギレス氏が、「古代ギリシア古代ローマ時代の人々はメンタルヘルスについてどう考えていたのか」を解説しています。

4 things ancient Greeks and Romans got right about mental health
https://theconversation.com/4-things-ancient-greeks-and-romans-got-right-about-mental-health-232824


◆1:心の状態は重要である
うつ病といったメンタルヘルスの問題は古代人にとっても身近なものであり、紀元前8世紀の詩人であり「イーリアス(イリアス)」や「オデュッセイア」などの作品を残したホメロス(ホメーロス)は、うつ病による衰弱で亡くなったといわれています。

古代ギリシアの医師らは紀元前5世紀前半の時点で、人々の健康が思考の状態に部分的に依存していると認識していたとのこと。ヒポクラテスが紀元前400年頃に収集したとされる医学書「Epidemics」の中では、匿名の医師が人々のライフスタイル・衣服・住居・身体活動・性別といった思考に関する習慣が、健康の主な決定要因であると記しているそうです。


◆2:メンタルヘルスの問題が病気を引き起こす可能性がある
「Epidemics」に寄稿したある匿名の医師は、診察した1人の男性患者の精神状態が悪化し、錯乱状態となり、最終的に話すことができなくなったことを記しています。患者は回復するまで14日間ベッドの中にいたそうですが、どのような治療が行われたのかは不明です。

その後、紀元2世紀~3世紀の医師であるガレノスも、人々の精神状態が悪化して病気になる事例を報告しています。ガレノスは、「ある状況下では、『思考』が健康や病気をもたらす原因のひとつになるのかもしれません。というのも、何事にも腹を立て、ささいなことで混乱したり、悩んだり、おびえたりするような人は、そのために病気になることが多く、なかなか治らないためです」と述べています。

また、ガレノスはメンタルヘルスの悪化に苦しみ、やがて死んでしまった患者についても説明しています。ガレノスによるとその患者はお金を失って精神を悪化させたそうで、長いこと後悔と悲しみを繰り返す興奮状態が続き、やがて熱を出して錯乱状態から死に至ったとのことです。


◆3:精神疾患は予防や治療が可能
古代世界の人々も、精神疾患を予防または治療できるという考えを持っていました。たとえば紀元前5世紀の哲学者であるアリスティッポスは、精神的な混乱を避けるために今現在に集中することを説きました。アリスティッポスは、「その日の行動や思考に心を集中させてください。私たちが属しているのは現在だけであり、過去や未来ではありません。過去はもう存在しませんし、未来が存在するのかどうかわかりません」と述べています。

さらに古代の医師らは、メンタルヘルスの問題に対処するために独自のアプローチを採用しており、多くはライフスタイルの変更を推奨するものだったとのこと。その中には「新しい運動法を取り入れる」「マイルドなワインや果物を摂取するなどの食事療法を採用する」「海路で旅行する」「哲学者の講義を聞く」「チェッカーなどのゲームをする」「現代のクロスワードパズルや数独のような頭の体操に取り組む」など、現代でも行われているようなアドバイスもありました。

また、ガレノスなど他の医師らは、精神的な問題が「心を捉えた何かの考え」によって引き起こされたと考えており、この考えを取り除くことで治療できると信じていました。ガレノスの治療法には、「お金を失った悲しみや政治的陰謀、毒殺される危険」といった精神を悪化させる考えの代わりに、「不正に対する憤りや競争への愛、利益のために他人を打ち負かしたいという願望」といった考えを植え付けることで、精神疾患の原因となる思考から考えをそらすというものでした。


◆4:メンタルヘルスのニーズへの対応
多くの古代人は、精神状態を健康に保つためには努力が必要だと信じており、不安や怒り、落ち込みといった感情から離れるには、それらと正反対の感情を引き起こす行動をするべきだと考えていたそうです。たとえば5世紀頃の医師であるカエリアス・アウレリアヌスは、うつ病に苦しむ人々は劇場で喜劇を見るなど、笑って幸せになれるような活動をするべきだと主張していました

しかし、古代人は精神状態を改善するにはたった1つの活動で十分だとは考えておらず、大切なのは生き方や考え方を大きく変えることだと信じていたとのこと。パネギレス氏は、「メンタルヘルスの問題については、私たちは明らかに古代の祖先と多くの共通点を持っています。彼らが2000年前に言ったことの多くは、今日では異なる方法や薬を使っているものの、変わらず現代でも関連性があるように思われます」と述べました。

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in メモ, Posted by log1h_ik

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