魔物退治&ゲーム開発の忙しすぎる兼業はラストスパート!勇者で社畜な男の苦労と世界の謎を振り返ってみた
魔物がはびこる「異世界」から「現代日本」へと転移してきた勇者・クズールが「平日はブラックなゲーム会社で社畜」「休日は異世界に戻って魔物退治」というしんどすぎる兼業生活を送るフルカラーマンガ「勇者で社畜の兼業ライフ」は、2025年初旬に完結予定です。苦境に追い詰められた社畜勇者・クズールがどのように戦っていくのか、1話から最新話まで追いつくラストチャンスのため、作品のストーリーや世界の謎、より作品を楽しめる小ネタについて解説してみます。
本編は以下から読むことができます!
デスマ1「兼業、はじめました!」を読む!
◆01:「勇者」であり「社畜」でもあるってどういうこと?
◆02:「勇者で社畜」な男が生まれた謎とは、彼が引き起こした世界の危機とは?
◆03:作品をより楽しめる小ネタをまるっと解説
◆01:「勇者」であり「社畜」でもあるってどういうこと?
魔法と魔物がいる異世界・コナムで生まれ育ってきたクズール。生まれと素質から、世界でただ一人「勇者」と認定されて、魔王討伐の任務を課せられていました。
しかし、クズールはやる気ナシ根気ナシ体力ザコでビビりのへっぽこ勇者でした。格闘戦を得意とする姉御肌のフレア、優秀な魔法使いのエクレル、天才神官少女のファロンという強力な仲間たちに助けられて何とかやってこれただけ。
そんなある日、魔王軍幹部の強力な戦士に遭遇し、パーティはなすすべなく崩壊してしまいました。なにもできずビビってかくれるだけだったクズールも、敵の凶刃で最期を迎えます。
しかし、死んだと思った直後、クズールは見覚えのない世界で目を覚ましました。大量の人と見渡す限り鋼鉄の世界。
クズールが迷い込んだ先ではゲームのイベントが開催されており、途方に暮れるクズールをゲーム会社の社員だという美女が拾ってくれました。彼女の名前はワルキューレ。輝くような笑顔にダマされたクズールを今後苦しめ続ける鬼の上司であり、そしてクズールにとって大きな運命を左右する存在。
そこから超ブラックなゲーム会社で慣れない仕事をしまくっていたクズール。ここには恐ろしい魔王も魔物もいない。代わりにあるのは積み上がる仕事と目がうつろな同僚と魔物より怖い上司と……あれ、こっちのほうがしんどくない?するとある日、目の前に開いたワープゲートのような魔法から、異世界の仲間・ファロンが顔を出しました。魔物を討伐するため、勇者を探して異世界からやってきた仲間たち。ゲームを完成させるため、マンパワーを一人でも失いたくない同僚たち。どっちに転んでも、クズールにとっては地獄。
しかし、クズールを待ち受けていたのはそんな優しい地獄ではありませんでした。上司のワルキューレが場を収めるために提案した、「念願の週休2日をあげる」という言葉。それは、二つの世界を股にかけた、「平日社畜、週末勇者」という悪夢のような二重生活の幕開けでした。
それからというもの、魔物と命懸けの戦いをしていたら上司から連絡が入って会社に戻らなきゃいけなくなったり、息をつく暇もなく働いているのに魔物が会社まできて邪魔してきたりと、ドタバタにもほどがある日々を送るクズール。
そこからは、因縁の魔王軍幹部・デュラハンに勝利したり、会社に潜入してきたサキュバスをバックドロップで討伐したり、会社で鍛えた契約手腕で召喚獣を手なずけて最強の魔物を倒したり、ブラック労働しすぎて余命3カ月とかウソの診断を下してきた魔王軍のスパイを撃退したりと、目が回るほど忙しくはあるものの順風満帆な日々でした。
というのも、勇者としてはへっぽこで会社員としては知識も経験もゼロのクズールでしたが、ブラック労働の経験や無理やり詰め込んだゲームの知識が勇者業に生きていた様子。半年間の社畜生活は忙しかったけれど、とにかくしんどかったけれど、もう隙あらば逃げ出したかったけれど、無駄じゃなかった。
その成果のひとつが「魔法理論」。勇者に選ばれるくらい素質はあったはずのクズールでしたが、バカで根気もないため難しい魔法の仕組みを理解できないでいました。しかし、ゲーム会社で社畜としていやがおうにも覚えさせられたコーディングの知識は、魔法に応用して理解するのを助けてくれます。さらには、重要な戦いのキーにもなるというウワサ。
それだけではなく、ファンタジーゲームを作ろうとしている同僚たちからも、実際に魔物と戦ってきた人生のクズールは貴重な資料です。へっぽこすぎて誰にも求められなかったクズールは、今やどちらの世界にも欠かせない戦力になりました。
◆02:「勇者で社畜」な男が生まれた謎とは、彼が引き起こした世界の危機とは?
順風満帆に思えた日々は、驚きの形で崩れ始めました。ある日、いつものように会社で目を覚ますと、テレビのニュースで魔物の出現が報じられているのを目にします。クズールが現代日本と異世界コナムを行き来しているのは特殊な魔法のおかげなので、そのへんの魔物がこちらに来ることはできないはず。さらに、クズールの仲間の一人であるフレアが、回復魔法でもどうにもならないほど重い病気にかかってしまいました。その正体はインフルエンザ。コナムには存在しないはずの病気です。
世界に危機が起きている。そうクズールに伝えたのは、現代日本に迷い込んだクズールをゲーム会社に拾ってくれた上司・ワルキューレでした。ワルキューレは自らの正体を、さまざまな世界から神の素質を持つ人物を選び「昇神」させる神様だと明かします。勇者として素質だけは高いクズールを、命の危機だったため早めに回収して、クズールを鍛えるために作ったゲーム会社で働かせる。これまでの兼業も残業も勇者業も、クズールの成長と成功も、すべてワルキューレが仕向けたもの。
しかし、クズールが世界を行き来しまくったことで、2つの世界が接近しすぎて崩壊の危機が生まれてしまいました。これを防ぐには、最終目的をぐっと早めて、クズールが神になる必要がある。そのためには、今抱えている2つの課題、「魔王を倒してコナムを救う」「ゲームを完成させてリリースする」という難題をクリアする必要があります。
課題クリアのため、さらなる兼業を加速させるクズール。しかし、本来はもっと余裕があったリミットを世界の危機によって早めたため、ゲーム作成のリソースが圧倒的に足りていません。そこでクズールは、まずは魔王を討伐して、ゲーム作りのヒントにもしようと思いつきました。
数ある魔物をはねのけ、強力な魔王軍幹部にも勝利し、ついに魔王の城にたどり着いたクズールたち。しかし、そこで待っていたのは絶望的な事実でした。
魔王の力を受けることで、魔物は何度倒しても復活する。無限の軍勢を目の前に心が折れたクズールは、一度大敗を喫してしまいました。ゲームは完成しない。魔物は倒せない。どっちにも進むことができなくなったクズール。
絶望の中でもう一度立ち上がり、クズールは最後の戦いに挑みます。勇者として歩んできた日々、社畜として目を回した日々を、すべて一緒くたにぶつけて戦うクズールの戦いに、最後まで応援お願いします。
そしてベールを脱ぐ魔王。最強の存在に挑む、クズールの秘策はあるのか……?
◆03:作品をより楽しめる小ネタをまるっと解説
「勇者で社畜の兼業ライフ」はまず最初に1話から最終話までシナリオを完成させていました。そのため、後に出るエピソードや情報などが作中にちりばめられています。そのような伏線や小ネタ、ネーミングの秘密などを、まるっと解説していきます。
まずはキャラクターのネーミングについて。勇者たちに立ちはだかる魔物として、一番よく登場するのが群れで戦う「タスク」とその親玉である「マルタス」。タスクはそのままタスク(仕事)から、マルタスは「マルチタスク」からきています。
また、第7話で勇者であるクズールを魔王軍に寝返らせようと接触してきた最高幹部の「コンプラ」は、「コンプライアンス(法令遵守)」が名前の由来。コンプラの側近である「コポ」と「レト」は「コーポレート(企業)」が由来というように、異世界の魔物たちが現実世界のビジネス用語に似た名前というネーミングになっています。
ネーミングについてもう1点、異世界と現代日本を行き来する「兼業」の重要なファクターとなったワープゲートのような魔法について。この魔法は、もともとクズールの仲間であるファロン(以下画像左)による特別な魔法でしたが、後にクズールも身に付けます。
世界を移動する魔法は、最強の敵に出会ってピンチになったクズールを救うためにファロンが使った第5話、上司から逃走するために必死に覚えたクズールが使う第7話で、「ムーンライト」という名前が唱えられました。これは、日中にメインの仕事をこなして夜は副業をする二重就業者のことを英語で「Moonlighter」と表現することから。作品のタイトルを検討している際に、「ムーンライター(兼業)」というワードが候補に挙がっていたため、兼業を成立させるための魔法の名前に転用されたという経緯があります。
近い由来のワードに、第9話で最後の戦いに出向いクズールを見送るワルキューレが「コーポレート・ブレイブ」とつぶやくシーンがあります。これは「社畜」を示す英語のスラングである「corporate slave」と「勇者」を表す「brave」を合わせた言葉で、これもタイトルの一例として検討していたもの。
「ムーンライト」を習得したクズールは、第7話で会社と仲間たちを裏切ってもっとホワイトな会社と魔王軍に就職しようとします。しかし、ムーンライトで会社から異世界へ逃げてきたはずが、その先で異世界の仲間たちが待ち構えていました。
結局はボコボコにされて捕まったクズールでしたが、「なんで会社の上司であるワルキューレは、異世界にいるコナムのみんなに密告できたんだ?」と疑問に思います。この答えは第8話で明かされる勇者な社畜の秘密と世界崩壊の秘密が関係しています。
より細かい小ネタとして、作中ではエナジードリンクがちょくちょく登場します。社畜になったクズールが常飲しているエナジードリンクに興味を持ったファロン。
クズールからもらったエナジードリンクは、慣れない味と炭酸で口に合わなかった様子ですが、気に入ったのかせっかくもらったものだからか、スピンオフエピソードの第3.5話でも飲んでいる様子が描かれました。
第8話でもエナジードリンクを飲んでいるシーンがありました。エクレル(画像中央)はストロー、フレア(画像右)は豪快にぐびぐびと飲んでおり、キャラクターが出ています。また、2人が持っているのは紫色のパッケージなのに対し、ファロンはピンク色の違う缶を持っているので、より優しい味のエナジードリンクを選んでもらった様子。
フレアというキャラクターのデザインには、ちょっとした裏話があります。戦士であるフレアは、普段はノースリーブ&ショートパンツという動きやすい服装ですが、寒いエリアに進んだ際にはオレンジのパーカーを着ています。
このパーカーは、作中でちょくちょくクズールが着ているもの。第2.5話「社畜な勇者からのプレゼント」では、ファロンの誕生日ということで、仲間たちからそれぞれ贈り物が用意されました。しかし、忙しすぎて用意を忘れていたクズールは、その時着ていた会社グッズのパーカーを手渡してめちゃめちゃ怒られます。ファロンへのプレゼントとしてはNGでしたが、異世界にはないパーカーのストリートなスタイルを気に入ったフレアが、ここで回収していたというエピソードです。
そもそもなぜ「フレアがクズールのパーカーをもらう」というエピソードができたのかというのは、最初のキャラクターデザインにさかのぼります。キャラクターデザイン作成時、キャラデザ担当がキャラのイメージだけでパーカールックを立ち絵として描いたところ、「異世界のキャラクターなのでパーカーなのはおかしいが、とても似合っているので採用したい」となりました。そのため脚本にクズールから受け取るシーンが追加されたという流れ。余談ですが、以下の右上にある獣耳姿も元の脚本や設定には含まれていませんでしたが、やけに似合っていたので「戦闘時は獣耳が生える」という設定が後から誕生しました。
さらなる細かい余談として、第4話「VSサキュバス!? 職場争奪三本勝負!!」でクズールの上司・ワルキューレが、会社に進行してきた魔物・リリミルとコスプレ対決する以下のシーンについて。本編では、警官風のコスプレをするワルキューレと、くのいち風のコスプレをするリリミルが描かれました。
ネーム時点では別の候補として、「ゲーム会社で行うコスプレ対決のため、有名なゲームキャラの衣装を着る」という案もありました。有名なキャラクターではありますが詳しくない人には意図が伝わりにくい可能性があるのと、キャラクターのコスプレだと勝ち負けを判定する差をつけにくかったため、以下の案は不採用となりました。
スピンオフエピソードの第3.5話「人に仕事おしつけて先に帰る奴を許すな」では、ワルキューレが本編で使用していない和風衣装を購入しようか迷うシーンがあります。これは、ネーム時点の案の名残というわけ。
さらなる余談として、このコスプレのシーンはとにかくキャラを見栄え良く見せたいため、「秘密の宮園」の原作ネーム担当であるすこやかさんにキャラの見せ方について助言をお願いしました。本来は構図やポイントのアドバイスをもらいたいのみでしたが、すこやかさんが「脚本見ていたらコスプレするシーン描きたくなっちゃった」とのことで、同じシーンのネームを描き下ろしています。
「勇者で社畜の兼業ライフ」は第10話で完結予定で、1話から9話までは以下から読むことができます。また、GIGAZINEシークレットクラブ(GSC)に入ると作者をより応援できるほか、さらに深い裏話や作劇のノウハウがわかるメイキング、マンガを一覧で読むことができる本棚や一足早く最新話が届く先行公開など特典がありますので、ぜひこちらからチェックをお願いします!
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