ハローキティはなぜ成功したのか?というサクセスストーリーをマーケティング教授が解説
ハローキティは1974年が誕生年とされており、2024年で生誕50周年を迎えるロングセラーの人気キャラクターです。ハローキティが長く愛されることになった特徴や巧みなマーケティング戦略について、ロンドン大学ロイヤル・ホロウェイのマーケティング教授であるサミール・ホサニー氏が解説しています。
Theory and strategies of anthropomorphic brand characters from Peter Rabbit, Mickey Mouse, and Ronald McDonald, to Hello Kitty
https://www.researchgate.net/publication/263730797_Theory_and_strategies_of_anthropomorphic_brand_characters_from_Peter_Rabbit_Mickey_Mouse_and_Ronald_McDonald_to_Hello_Kitty
Hello Kitty at 50: a Japanese success story of simplicity and cuteness
https://theconversation.com/hello-kitty-at-50-a-japanese-success-story-of-simplicity-and-cuteness-238809
ハローキティ(キティ・ホワイト)は1974年にキャラクターとして開発され、初めてのグッズは1975年3月にリリースされました。初グッズから爆発的に人気が出たハローキティはそこから50年にわたって人気を博し続けています。ハローキティは日本だけではなく世界的に人気があり、50周年の記念はシンガポールやアメリカでも祝われたほか、2024年6月にイギリスのチャールズ国王が晩さん会のスピーチで「今年50歳になるある人物についてお話しさせてください。彼女はロンドン郊外で双子の姉妹と育ち、何十億ドルもの資産を持つ自力で成功した起業家であり、その上ユニセフの子ども大使も務めました。そのため、私はただハローキティの誕生日を心からお祝いするしかありません」とメッセージを送っています。
ホサニー氏はハローキティが長く愛されている理由のひとつとして、「その生まれながらのシンプルさによるところが大きいです」と指摘しています。1974年に清水侑子氏がデザインした黒い点と黄色い鼻、ヒゲ、リボンで構成された外観は、50年たってもほとんど変更されていません。アイコン的に認識できて安価に複製できるほか、日本的な「カワイイ」の典型例でもあるとホサニー氏は述べています。
ハローキティやミッキーマウスといったキャラクターが子どもから大人まで人気があるのは、動物などに人間的な特徴を与える「擬人化」に対する根強い熱意にあるとホサニー氏は語っています。一方で、社会学者のサイモン・ゴットシャルク氏は「子どもたちにとって丸っこい安心できるキャラクターとして魅力的なものが、大人にも需要があるというのは、私たちがコンピューター技術と日常的に関わるようになって、『文化の幼児化傾向』を加速させていることを示しています」と、キャラクタービジネス拡大の否定的な面を主張しました。
by Hello Kitty
ホサニー氏によると、キャラクターとして秀逸なデザインというだけではなく、サンリオによる巧みなマーケティング戦略もハローキティの長期にわたる大ヒットを生んだ原因であるそうです。ハローキティのマーケティングとして特に有名なものは、他企業やコンテンツとのコラボです。
ハローキティが初めてコラボを実施したのは、誕生から21年後となる1996年の電気製品小売りチェーンとの企画です。その3年後にマクドナルドとコラボしてハローキティのセットを発表したところ流行に火が着き、2000年に台湾やシンガポールでも同様のコラボが実施された際には長蛇の列や負傷者が出るほどの騒動になったと報道されました。その後ハローキティコラボは、文房具や電化製品などのアイテム、ナイキやアディダスなど大手ブランドとのコラボ商品、Fenderのストラトキャスターなど、とにかく幅広く展開されています。
ホサニー氏が主著者を務める論文「ピーターラビットやミッキーマウス、ドナルド・マクドナルドからハローキティに見る擬人化ブランドキャラクターの理論と戦略」では、擬人化されたキャラクターブランドをどのように構築し、持続させるかについての理論を展開しています。論文によると、ハローキティブランドの構築と維持に役立つのは「デザインのシンプルさ」「キャラクターライセンス」「サードパーティとのコラボ」「『懐かしい』という感情の活用」「製品ラインの拡張」「ブランドの拡張」「消費者の関心の維持」「テクノロジーの活用」の8つの戦術が重要と考えられるとのこと。
戦術はそれぞれ組み合わさって活用されており、たとえば他企業やコンテンツとのコラボ、ライセンス契約、さまざまな商品ラインを拡張することによる多重化戦略のほか、有名人とのコラボによるブランド認知の拡大はブランドの「切れ目のないサイクル」を生んでいます。このサイクルで消費者の関心を維持し続けたり、「幼い頃に好きだった」という懐かしむ気持ちを誘発したりすることで、子どもから大人まで愛される長期にわたる戦略に成功していると論文では分析しています。
by Marceline Smith
ただし、ホサニー氏らの論文は単一のケーススタディを分析したのみで、ブランド戦略の定型的な手段として見るには限界がある点には注意が必要です。今後の研究では、ハローキティのデザイン的な魅力、マーケティング的な消費者の態度や愛着について、より定量的な方法を用いて調査する必要があるとホサニー氏は述べています。
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