インフルエンサーが別のインフルエンサーに投稿をパクられたとして訴訟した「サッドベージュ訴訟」とは?

SNSや動画サイトでは、他人が発した面白い投稿やバズった企画をそのままマネして発信する「パクリ投稿」がしばしば見られます。アメリカのファッション系インフルエンサーが「他のインフルエンサーが私のSNS投稿をパクったコーディネートをしている」と訴訟した事件が、オンラインコンテンツ作成に関する法律に多大な影響を及ぼす可能性があると注目されています。
Does IP Law Protect Influencers’ Aesthetics?-Gifford v. Sheil (Guest Blog Post) - Technology & Marketing Law Blog
https://blog.ericgoldman.org/archives/2024/12/does-ip-law-protect-influencers-aesthetics-gifford-v-sheil-guest-blog-post.htm
What is the 'Sad Beige' Lawsuit? About the Social Media Copying Case
https://people.com/what-is-the-sad-beige-lawsuit-everything-to-know-8755030

2024年4月、24歳のファッション系インフルエンサーであるシドニー・ニコル・ギフォード氏が、同ジャンルのインフルエンサーである22歳のアリッサ・シェイル氏に訴訟を起こしました。ギフォード氏がテキサス州の地方裁判所に提出した訴状の中では、「私は、TikTokやInstagramなど複数のSNSとeコマースプラットフォームを利用して、『独自のブランドアイデンティティ』を育て、フォロワーと信頼関係を築き、徹底的に調査した『思慮深い推奨商品リスト』を宣伝してきました。シェイル氏は、その美学やスタイル、キャプションをコピーし、同じ商品を多く取り上げています」と訴えが述べられています。ギフォード氏が模倣されたというスタイルが「ニュートラル、ベージュ、クリーム色の派手な色を使わない『サッドベージュ』の美学」であったため、この訴訟は「サッドベージュ訴訟」と呼称されています。
ギフォード氏はシェイル氏に対し、連邦著作権侵害、間接著作権侵害、デジタルミレニアム著作権法違反など、8件の訴訟を起こしています。この訴訟は、インフルエンサー間のコンテンツの類似性に関する初の訴訟と言われています。
以下の画像は、類似投稿の例として挙げられているもののひとつです。左がギフォード氏の投稿、右がシェイル氏の投稿で、撮影の角度は違うものの、同じマットを同じような壁紙と床色に合わせて配置しています。

シェイル氏の弁護士は2024年8月5日、訴訟に対してすべての申し立てを「(シェイル氏の活躍への)嫉妬から生じたもの」として否定しました。訴状によると、ギフォード氏とシェイル氏は2022年12月頃に面識があり、両者のコラボレーションの直後にシェイル氏がInstagramとTikTokでギフォード氏をブロックしたとのこと。「このため、シェイル氏はギフォード氏に気づかれることなくコンテンツをコピーしやすくなった」とギフォード氏は主張しています。しかしシェイル氏側は、過去に対面した際にコンテンツに関する質問をしたのはギフォード氏であり、より若くより成功していたシェイル氏をギフォード氏の方が模倣していたと主張。そんなギフォード氏を放置していた理由について、シェイル氏は「模倣はファッション業界やインフルエンサー業界の本質である」と考え、「自分のアイデアを盗んだと主張する根拠のない訴訟は起こさずにいた」と話しました。
法学教授のエリック・ゴールドマン氏によると、ギフォード氏が訴訟に含めた「不正流用」は、誰かの名前や画像をそのまま商業的に使用することが条件となっていますが、ギフォード氏の主張ではシェイル氏がスタイルをマネただけであり、画像をそのまま使っているわけではないため適用されにくいとのこと。また、トレードドレスや著作権法の観点でも、サッドベージュの概念自体はより有名なインフルエンサーにも象徴されるものであったり、玄関マットを配置した写真に創造性がほとんどなかったりする点など、保護範囲が薄いと考えられるそうです。
しかし、テキサス州地方裁判所の治安判事は、契約関係の不法妨害の訴え、不正競争と不当利得の訴えは棄却したものの、それ以外の棄却は拒否しました。そして2024年12月10日、ギフォード氏の間接著作権侵害の主張は十分に主張されているとの判決を下しました。
特に問題として指摘されたのが以下の画像です。以下は左がギフォード氏、右がシェイル氏で、使用しているアイテムは上下の服だけではなく首飾りやブーツまで同一です。この画像において、シェイル氏はギフォード氏と同じアイテムを身に付けた上で、自撮りの際にスマートフォンで顔を隠す構図にしていることから、「ギフォード氏になりすましている」という意図があったと裁判所に判断された可能性があります。

治安判事の報告書では、高い視聴回数とエンゲージメントを得られると紹介している商品の売上げや手数料につながることから、インフルエンサーによる投稿は直接的な金銭的利益を有していたと認められました。また、インフルエンサーの投稿をパクった投稿をすることは、直接著作権侵害と間接著作権侵害の両方の責任を負う可能性があり、フォロワーは「侵害コンテンツにアクセス、閲覧、ダウンロード」するだけで、ギフォード氏の著作権を直接侵害していると判断される可能性が示されました。ゴールドマン氏によると、一部の弁護士は「パクリ投稿を問題視するサッドベージュ訴訟が棄却されなかったことで、同様の訴訟が大幅に増える可能性がある」と推測しているそうです。
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in ネットサービス, Posted by log1e_dh
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