「TikTok禁止法は違憲ではない」との判決をめぐりTikTokが上訴、最高裁で争う構え
「TikTok禁止法」と呼ばれている規制法は、表現や言論の自由を保障する憲法修正第1条に違反する可能性があるとしてTikTokが異議を申し立てていた件について、控訴裁判所は「問題なし」とする判決を下しました。判決の4日後、TikTokが上訴しました。
TikTok Files Emergency Motion for Injunction | TikTok Newsroom
https://newsroom.tiktok.com/en-us/tiktok-files-emergency-motion-for-injunction
DC Circuit rejects TikTok’s First Amendment defense, opening door for January ban | Courthouse News Service
https://www.courthousenews.com/dc-circuit-rejects-tiktoks-first-amendment-defense-opening-door-for-january-ban/
TikTok failed to save itself with the First Amendment - The Verge
https://www.theverge.com/2024/12/9/24316941/tiktok-divest-ban-court-ruling-breakdown-first-amendment
争点となっている法律は「外国の敵対者が管理するアプリケーションからアメリカ人を守る法」で、ソーシャルネットワーキングアプリが「外国の敵対者が管理するアプリケーション」であるとアメリカ大統領が判断するか、または関連条項によって認定された場合、270日から360日以内に配布、維持、または提供の禁止を求めるものです。当該法律において中国が敵対的な外国と見なされており、中国に拠点を置く親会社により運営されるTikTokには、事業の売却またはアメリカでのサービス提供停止が求められていました。
2024年5月7日、TikTokは憲法修正第1条を根拠に異議申し立てを行いました。憲法修正第1条は表現や言論の自由を保障するもので、TikTokは「サービス提供停止が命じられた場合、アメリカ人の言論の自由を妨げ、正しい情報へのアクセスを遮断する可能性がある」などと主張し、当該法は違憲だという判断を下すよう裁判所に求めました。
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2024年12月6日、コロンビア特別区巡回区連邦控訴裁判所は当該法を支持し、違憲ではないとの判決を下しました。担当した3人の裁判官は「中国が外国の敵国であるという議会の決定がある」「法律がターゲットにしているのは、中国政府がコンテンツを秘密裏に操作できるという能力である」などと指摘し、当該法が求めているのは「TikTokが中国により管理されなくなること」だけであって、特に言論の自由を侵害するものではないとして、満場一致で合憲の判断に至っています。
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担当判事のドナルド・ギンズバーグ氏は「中国がTikTokをコントロールしないことを要求しているだけであり、アプリで議論されるトピックとは何の関係もない。仮に売却されてもプラットフォーム上のコンテンツは原則的に変わることはなく、アメリカの人々は中国のプロパガンダを望むだけ読んだり共有したりする自由が残るだろう」と意見を述べています。
ただし、アメリカ政府はこれまで中国政府がTikTokのデータにアクセスしたという具体的な証拠を提示しておらず、あくまで「可能性がある」という仮定の話を元に議論が進められているのが現状です。TikTokのアメリカ本社はシンガポールとロサンゼルスにあり、TikTokのショウ・チュウCEOは「TikTokは親会社ByteDanceから独立して運営されていて、アメリカ人のデータは、アメリカ人が監督するアメリカ企業によって管理されている」と主張して中国との結びつきを否定しています。
上記判決の4日後、TikTokは最高裁に上訴しました。TikTokは「私たちは本日、上訴が最高裁判所で審理されるまで、TikTok禁止法の発効を差し止める命令を求めて緊急申し立てを提出しました。TikTokの核となるのは1億7000万人のアメリカ人ユーザーです。TikTok禁止措置が停止されない限り、TikTokを利用する中小企業はわずか1カ月で10億ドル(約1500億円)以上の収益を失い、クリエイターは3億ドル(約450億円)の逸失利益を被ることになるとの試算もあります」との声明を発表し、TikTok禁止措置は経済的損失が大きいと訴えました。
もし最高裁が介入しなければ、TikTokは2024年1月19日の期限までに売却か停止かを決定する必要があります。この点について、民事訴訟に焦点を当てたニュースサイト・Courthouse News Serviceのライアン・ナッペンバーガー記者は「1月20日にドナルド・トランプ氏が大統領に就任します。判断を迫られたTikTokは、最近『TikTokを救う』と公言したトランプ大統領に陳情する可能性があります」と指摘しました。
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