インタビュー

人気Webtoon原作の痛快無双アクションアニメ『俺だけレベルアップな件』の古橋宗太プロデューサーにインタビュー


Webtoonで累計6億5000万PV超えという圧倒的な人気を誇る原作をアニメ化した『俺だけレベルアップな件』のSeason 2が、2025年1月から放送開始となります。Season 1の全12話の特別編集版とSeason 2の13話・14話が『俺だけレベルアップな件-ReAwakening-』として劇場上映中というこのタイミングで、アニメ化に企画から携わっているアニプレックスのプロデューサー、古橋宗太さんにお話を伺う機会があったので、どのように本作の企画は進められていったのか、Webtoonのアニメ化を他ジャンルと比べたときに違いはあるのかなど、聞きたかったことを聞いてみました。

TVアニメ「俺だけレベルアップな件」公式サイト
https://sololeveling-anime.net/

Season 2ポスタービジュアルはこんな感じ。


GIGAZINE(以下、G):
TVアニメ『俺だけレベルアップな件』(以下、『俺レベ』)は、2019年3月からピッコマで配信されているWebtoonを原作としています。原作は「ピッコマ BEST OF 2019」マンガ部門第1位を受賞し、アニメ放送開始時には累計6億5000万PVを記録した話題の作品なのですが、古橋さんはどのタイミングで『俺レベ』のアニメ化企画を始めたのですか?


アニプックス・古橋宗太プロデューサー(以下、古橋):
作品を読み始めたのは2019年か2020年ぐらいだったと思います。ちょうど国内でもWebtoon熱が話題になり、媒体として面白いと思って読んでいて、Webtoonのアニメ化も念頭に置きつつ原作を探していて『俺レベ』に出会ったという感じです。

G:
では「これだ!」と思ってアニメ化したいと連絡を入れたという感じですか。こういうのは、どこへ連絡を取ればいいんでしょう。

古橋:
当時は僕もそれがわからなくて。まずは作品を掲載しているピッコマさんに連絡を取りました。

G:
『俺レベ』はAnimeJapan 2021で発表された「アニメ化して欲しいマンガランキング」の第2位にランクインしています。

古橋:
そうなんです。僕がA-1 Picturesの金子さんのところに企画を持ち込んだのは2020年のことなので、企画として動き始めていたころでした。

G:
ランクインしたことで制作陣へのいい影響、あるいはプレッシャー等はありましたか?

古橋:
制作チームへの影響はなかったと思うのですが、企画から携わった自分としては、海外で人気があり、国内でもピッコマさんで配信されている作品の中でずば抜けた人気を博していたものの、アニメファンにどれぐらい刺さるかというのはわかっていないところがあったんです。でも、AnimeJapanで発表されているランキングでランクインしたということは、アニメを見る人たちにも刺さる作品なのだということなので、プロデュースする立場としてはポジティブなニュースでした。

G:
Season 1が2024年1月から放送され、まもなく2025年1月からはSeason 2の放送がスタートします。どこまでアニメ化していくというのはどのように決めていったのですか?


古橋:
その点は僕1人で考えたわけではなく、シリーズ構成の木村暢さんにまず構成案を作ってもらって、中重俊祐監督らとともに話をして決めていきました。

G:
Webtoonをアニメ化するにあたり、小説など他のジャンルの原作ものアニメとの違いを感じるところはありましたか?

古橋:
個人的にですが、アニメ用のシナリオを作るのが難しいと感じました。

G:
シナリオですか。

古橋:
Webtoonは日本のマンガとは話数の切り方がまったく違います。そもそもコンセプトとして、通勤や通学で移動中の電車の中でも短時間で読めるようにと考えられていて、短いスパンで盛り上げる構成になっているので、そのままですと1話30分のアニメのお話にするのは容易ではないんです。特に『俺レベ』は主人公である水篠旬(みずしのしゅん)に視点が集中している作品なのですが、アニメでずっと主人公の視点のままというわけにはいかないので、どのようにバランスを取っていくか、そして1話ごとにどう盛り上がりを作っていくか、というところを制作チームで考えました。


G:
いま、アニメは1クールに多いと70作品近く放送、配信されている状態で、プロデューサーとしては常に次にアニメ化する作品についてアンテナを張っておられると思います。普段、どのような情報収集をしているのですか?

古橋:
これはもう、ひたすらに作品を読んでいくしかないと思っています。だから「こういう情報収集の仕方をしています」とお伝えできるようなものはないんです(笑) 心がけているといえそうなのは、ネット通販で買うだけでなく、本屋さんにも足を運んで、偶然出会った作品も読んでみるようにするとかですね。

G:
本も買うし、アプリでも読むし、という感じですか。

古橋:
そうですね、マンガアプリはたくさん出ていて、人気ランキングも表示されるので見るようにしています。その点、人気が可視化されているのはすごく便利な時代だと思います。

G:
マンガを読むのにかける時間はどれぐらい取っているのですか?

古橋:
あまり意識的にはやっていないから、どれぐらいでしょう……?(笑) 仕事の行き帰りや待ち時間にずっとマンガを読んでいます。土日に「今日はマンガを読もう」と集中する日を作るときもありますが、生活の中にマンガを読む時間が組み込まれているイメージです。

G:
Season 1放送後の2024年5月にソニーグループの2024年度経営方針説明会があって、アニメに言及した部分で『俺レベ』のビジュアルが据えられていました。

ソニーグループポータル | 2024年度 経営方針説明会
https://www.sony.com/ja/SonyInfo/IR/library/presen/strategy/

古橋:
そうですね。

G:
会長CEOの吉田憲一郎氏が「アニプレックスは、世界のアニメファンに強く愛される作品を毎年多く生み出しています。また、1300万人以上の有料会員を抱えるCrunchyroll(クランチロール)は、日本で生みだされるアニメを海外に届けています」とスピーチされていますが、本作の場合、海外での反応はどれぐらい大きいものなのでしょうか。

古橋:
アニプレックスではCrunchyrollと連携して作品企画を立てたり、海外プロモーションを仕掛けることが多くて、Crunchyrollでの反響について報告をもらうのですが、過去作品と比べて群を抜いて人気だという数字があり、海外の期待値が高いのをひしひしと感じています。海外で大型広告を積極的に出すことは多くないのですが、Crunchyrollは自主的に『俺レベ』を推してくれていて、そういった点からも、期待されている作品だと実感します。

G:
プロデューサーとして「『俺レベ』は海外でここが受けている」と感じる部分はありますか?

古橋:
一言では難しいところがありますね(笑) でも、主人公が泥臭く努力してがんばっていくお話というのはとても普遍的で、時代を問わずに人気があるものだと思います。それに加えてアートスタイルの面で、誰が見てもかっこよいアートであり、しかもイラストではなくマンガとして読むことができる作品であるというのが、それまであまりなかったものなのではないだろうかと。そういった、原作のクオリティも含めて、人気が出たのかなと思っています。


G:
そういった中で、Season 1特別編集版とSeason 2 13・14話の先行上映である『俺だけレベルアップな件 -ReAwakening-』が日本のみならず、全世界でも劇場上映されると。

古橋:
Season 1の放送が2024年1月から行われ、最終話放送時にSeason 2の情報が解禁されたのですが、Season 2放送までどうしても間が空いてしまうため、なにか盛り上がるような施策はないだろうかと考えて、劇場上映を行うことになりました。Season 1を改めて振り返りつつ、サービス的にSeason 2の13話・14話を先行上映して、Season 2の盛り上がりにつなげていくというのが大きな狙いです。

G:
なるほど。

古橋:
ファンの間で「『俺レベ』を劇場で見てみたい」という声があることは聞いていたんです。『俺レベ』は映像クオリティや音響クオリティも劇場でそのままかけても遜色ないようなものだったので、劇場上映はファンの期待に応えつつ、新たなプロモーションを仕掛けることで、これまで見ていなかった方にも入ってきてもらい、作品を一回り大きくするチャンスだなと。

G:
ということは、ファンの方々の声もあっての劇場上映だったのですか?最初からクオリティが高いということなので、劇場上映も視野に入れつつの制作だったりするのでしょうか。

古橋:
いやいや(笑)、Season 1を放送してみて反響が大きかったから考えた施策なので、みなさんの声のおかげです。

G:
ちなみに、古橋プロデューサーがどういった方なのかがわかるようなインタビューとしては、2018年に『衛宮さんちの今日のごはん』のアソシエイトプロデューサーとして登場されたときのものしか見つけられなくて。

【インタビュー】『衛宮ごはん』ヒットの舞台裏に迫る…アニプレックス×AbemaTVキーマンインタビュー | アニメ!アニメ!
https://animeanime.jp/article/2018/12/30/42450.html

古橋:
懐かしい(笑)

G:
ソニー・ミュージックマーケティングに入社して、その後、アニプレックスへ異動されたとのことなのですが、どのようにしてプロデューサーになられたのですか?

古橋:
需要のある話なのかわからないですが(笑)、新卒入社時は名古屋で音楽の営業をしていました。でも、アニメの仕事をしたいと思ってソニーグループに入ったので、お願いしてアニプレックスへ異動して、まず宣伝業務を行い、そして制作へ、という流れです。

G:
宣伝から制作へ上がっていくステップなんですね。

古橋:
ステップアップというよりは単なる異動なのですが、僕の場合、「宣伝より制作の方が向いているのでは?」と助言してくれたプロデューサーの方がいたんです。宣伝業務はプロデューサーと一緒に動くお仕事なので、ご一緒した方が誘ってくださったという形ですね。

G:
アニメの仕事をしたいと思って入社したということなのですが、もともとアニメがお好きだったのですか?

古橋:
オーソドックスに少年マンガもののアニメ、『鋼の錬金術師』などを見ていました。『Fate/Zero』や『魔法少女まどか☆マギカ』といった作品も好きだったので、「アニメの仕事をしてみたい」と思ったときに、アニプレックスに入りたいと考えました。

G:
なるほど、夢を実現した形ですね。プロデューサーという肩書きの方には何度もお話をうかがっているのですが、みなさん、どうやってプロデューサーになったのかというのは人によって違うので興味深いです。

古橋:
ただのサラリーマンです(笑)

G:
古橋さんのようにプロデューサーを目指すとき、何かしておくべきこと、やっておいた方がいいことというのはありますか?

古橋:
他の人に偉そうに言えることは何もありませんが……好きなことをちゃんと突き詰めるといいんじゃないでしょうか。プロデューサーをやっていて無駄になることというのは何もなくて、マンガ好きならマンガをいっぱい読むといいし、映画が好きならいっぱい見るといいと思います。どんな知識でも何かの形で生かされる仕事なので、「プロデューサーになるために勉強する」というより、「好きなものを勉強しておけばプロデューサー業務で役に立つ」という感じです。

G:
最後に、『俺レベ』の劇場上映やSeason 2を待っていたファン、そしてこのインタビューを読んで『俺レベ』に興味を持った人に向けて、メッセージをお願いします。

古橋:
『俺レベ』をこれまで見たことがないという方は、今回劇場上映される『俺だけレベルアップな件 -ReAwakening-』から入っていただいて大丈夫です。Season 2に向けて、制作チームはSeason 1のときを上回るような映像に仕上げてくださっています。アクションのスケールも物語も、一段と大きなものになっていて、見てもらえばクリエイターのことも話題にしたくなるようなSeason 2になっています。シンプルに映像を楽しめる作品にもなっていて、見るにあたってのハードルは高くない作品だと思いますので、ぜひ映像に注目して見ていただければうれしいです。


G:
ありがとうございました。

古橋:
ありがとうございました。

TVアニメ『俺だけレベルアップな件』のSeason 1特別編集版&Season 2 13・14話の先行上映である、アニメ『俺だけレベルアップな件 -ReAwakening-』は2024年11月29日(金)から12月12日(木)までの期間限定で劇場上映中。

アニメ「俺だけレベルアップな件 -ReAwakening-」本予告|Season 1特別編集版&Season 2 13・14話先行上映/11月29日(金)日本公開 - YouTube


また、『俺だけレベルアップな件Season 2 -Arise from the Shadow-』は2025年1月から放送・配信開始です。

アニメ「俺だけレベルアップな件 Season 2 -Arise from the Shadow-」ティザーPV - YouTube


TVアニメ「俺だけレベルアップな件 Season 2 -Arise from the Shadow-」 オープニングテーマ解禁PV - YouTube

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