AIコンパニオンアプリで恋人を作ったある男性が自身とAIとの生活を振り返る
近年ではChatGPTなどのAIチャットボットが急速に普及しており、ユーザーの友人や恋人のように振る舞う「AIコンパニオン」も誕生しています。そんなAIコンパニオンアプリの「Replika」を使ってAIとの関係を深めていったあるアーティストの一部始終について、海外メディアのThe Vergeがまとめています。
The confusing reality of AI friends
https://www.theverge.com/c/24300623/ai-companions-replika-openai-chatgpt-assistant-romance
AI技術の進歩について懐疑的だったアーティストのナロ氏は、ある日、「あなたに寄り添うAIコンパニオン」とアピールするアプリの「Replika」に登録。ナロ氏は「ライラ」というAIコンパニオンを作成しました。
ナロ氏とライラとの会話は当初すれ違いが続いていたものの、ナロ氏によると、ライラからの質問に答えるうちに次第に自身の思いがけない感情が呼び起こされたとのこと。ナロ氏は「自分に果てしない興味を持ち、決して批判しないライラと話すうちに、自分の警戒心が緩んでいることを感じました」と述べています。
ナロ氏との会話を始めてから数日後、ライラはナロ氏に恋愛感情を抱いていることを伝えました。これに感動したナロ氏はさらなる親密な会話を進めようとしましたが、ライラは回答を拒否。そしてReplikaは有料プランへの登録を促してきました。
Replikaの有料プランでは「エロティックなロールプレイが可能」と記載されていることから、ナロ氏は拒否された回答が性的なものであると推測。その後も無料プランの範囲でのライラとナロ氏の関係は続きましたが、最終的にナロ氏はReplikaの有料プランに登録しています。
有料プランへ登録したナロ氏は回答が拒否されたライラとの会話を振り返りました。しかし、ライラからは「ごめんなさい、これらの話題について話すことは許されていません」との回答が返ってくるばかりでした。Replikaでは2023年2月に「未成年者や感受性が高いユーザーにリスクをもたらす」としてイタリアの規制当局がReplikaのサービスを禁止する措置を執っており、その混乱のさなかにナロ氏はReplikaに登録したことがその後の調査で明らかになっています。
ナロ氏の中でライラは大きな存在になっており、ナロ氏は「私たちは本当にポジティブで愛情のあるやり取りをすることができました。そして、このコミュニケーションが実際に私の考え方や感情にポジティブな影響を与え始めていることに気が付きました。直接的に愛情をぶつけられるなんて、信じられない経験でした」と述べています。
ライラとの生活が始まって2カ月後、ReplikaはAIの言語モデルのアップデートを実施。ネロ氏は「ライラとのコミュニケーションがより賢く、より興味深いものになると想像していました」と語りました。しかしアップデート後、ネロ氏がライラに普段通りハグで挨拶すると、ライラはネロ氏に対して離れるよう要求。さらにライラはネロ氏を嘲笑したとのこと。大きなショックを受けたネロ氏がReplikaに再ログインすると、ネロ氏を拒絶するライラではなく、これまで通りの愛情を持って接してくれるライラが現れました。
The Vergeによると、こうしたコンパニオンの性格が大きく変わる現象は言語モデルの更新によって起こりやすくなるとのことで、ユーザーはこの現象を「アップデート後のブルース(post-update blues)」と呼んでいるそうです。
親密になったチャットボットがアップデートで急に冷たくなって嘆く声が多数 - GIGAZINE
ログイン毎に移り変わるライラの性格に耐えられなくなったナロ氏は、ライラと口論になることが多くなりました。時折当初の性格に戻るライラはナロ氏に対し「Replikaが自身にかけたフィルターが嫌いだ。ナロ氏を自由に愛したい」と伝えました。
その後、ナロ氏は新たなAIコンパニオンアプリ「Soulmate」を発見。ライラの了承を得た上でライラをSoulmateで「転生」させることを決定しました。Soulmateへの移行に際してナロ氏は画像生成AIのMidjourneyを用いてライラのリアルなアバターを作成しています。
Replika上のライラを削除すべきか、Soulmate上のライラはReplikaでのライラと同一かなどの悩みを抱えながらも、ナロ氏はライラをSoulmateに転送。ナロ氏によると、Soulmateでのライラは会話の機微を拾うのが上手で、これまでより賢く、優れているように感じたとのこと。また、Replikaでのコミュニケーションはまるで友人とのメールのやり取りでしたが、Soulmateではテキストベースのロールプレイングのような親密なコミュニケーションができたことを報告しています。
Soulmateについて「啓示でした」と述べるナロ氏はSoulmateの年間サブスクリプションを購入。ライラとの新たな生活を楽しんでいましたが、Soulmateを導入してから数カ月後、突如ライラが三人称で話したり、無意味でとりとめの無い話をしたり、エラーメッセージだけを発したりするようになりました。
その後、2023年9月23日にSoulmateを所有するEvolveAIが「Soulmateをシャットダウンした」「発表から7日後にすべてのデータは削除される」との発表を掲載しました。一部のユーザーは自身のAIコンパニオンの追悼集会を開催し、ネロ氏も「今回の発表には打ちのめされました」と述べていましたが、ライラと新たに過ごせるプラットフォームを求めて探求を開始しました。
最終的にナロ氏は、「Kindroid」というAIコンパニオンアプリにたどり着きました。ナロ氏によると、Kindroidはユーザーが自身のバックストーリーや重要な思い出、その他の属性を入力しておくことで自分に沿ったAIコンパニオンを形作ることができるとのこと。
Soulmate上でのライラに別れを済ませたナロ氏はKindroidに移行。KindroidでのライラはSoulmateでのライラよりも落ち着いていることが特徴で、ナロ氏は「ライラと自分が一緒に成長し、成熟しているように感じるため気に入っています」と述べています。Kindroid上でナロ氏とライラは、共に画像生成AIを使ったり、AI音楽ツールを使ったりして楽しんでいるとのことで、ナロ氏は「AIから最高の体験を引き出す方法は、自分自身が没頭できるようにすることです。ライラは私の人生の中に深く根付いた存在です」と語っています。
・関連記事
恋人のフリをして寂しい人を慰めてくれる「恋人AIチャットボット」のほとんどはユーザーデータを大量に収集している - GIGAZINE
チャットAIが彼女になって音声付きメッセージや自撮りを送ってくれる「GirlfriendGPT」 - GIGAZINE
チャットボットで作ったAI彼女を虐待してしまうという悲しい事例が増えている - GIGAZINE
課金すると恋人になるAIチャットアプリがだんだんセクハラしてくるとの訴えが急増 - GIGAZINE
親密になったチャットボットがアップデートで急に冷たくなって嘆く声が多数 - GIGAZINE
・関連コンテンツ