海底通信ケーブルの耐障害性強化のため国際的な諮問委員会が設立される
世界の海底に張り巡らされた通信ケーブルは、自然災害や摩耗、漁業、第三者による意図的な破壊工作など、さまざまな要因で損傷することがあります。国際電気通信連合(ITU)と国際ケーブル保護委員会(ICPC)は2024年11月29日に、海底通信ケーブルの損傷を防ぐための方法に関する会合を行う国際諮問機関を設立しました。
Launch of international advisory body to support resilience of submarine telecom cables
https://www.itu.int/en/mediacentre/Pages/PR-2024-11-29-advisory-body-submarine-cable-resilience.aspx
Undersea cable advisory board arises as cut cable repaired • The Register
https://www.theregister.com/2024/12/02/cable_advisory_board/
相互接続が進む世界では、海底通信ケーブルが世界中のデジタル経済のライフラインとして機能し、国際的なデータ交換の99%以上を担っており、これらのケーブルにより、通信や金融、クラウドサービスなどが国境を越えてシームレスに運用できるようになります。しかし、海底通信ケーブルは自然災害からインフラの老朽化、漁業や停泊時の投錨などの偶発的な人間の活動まで、さまざまな損傷の要因に直面しています。
ITUによると、海底通信ケーブルが損傷すると業界や政府の運営に影響が生じるだけでなく、個人が教育や医療、金融サービスにアクセスすることも困難になるとのこと。ICPCは2023年に世界中で毎年平均150~200件以上の海底通信ケーブルの修理を実施したことを報告しており、1週間に3回はケーブルが損傷している計算になります。
ITUは「安定した高速インターネットへの依存度が世界中で日々高まっており、これらのケーブルの耐障害性は最も重要です。政府や規制当局、業界リーダー、海底通信ケーブルの専門家、国際機関など、マルチステークホルダーとの対話は、デジタルの未来と世界経済の安定を守るため、海底通信ケーブルの耐障害性を高めるために不可欠です」と述べています。
こうして設立された国際諮問機関は、海底通信ケーブルの耐障害性を向上させるための潜在的な方法と手段に関する対話と協力を促進することを目的としています。諮問機関は海底通信ケーブル事業者や通信会社、政府機関、海事当局、国際機関、およびアドバイザーを務める国連機関の代表者を含む官民合わせて40人のメンバーで構成されています。共同議長にはナイジェリアの通信・イノベーション・デジタル経済大臣であるボスン・ティジャニ氏と、ポルトガル国家通信局の取締役会長であるサンドラ・マクシミアーノ氏が就任しました。
ICPCのグラハム・エバンス議長は「ITUとのこの国際諮問機関の設立は、私たちのグローバルなデジタルインフラストラクチャを保護するための新たな一歩を示しています。ITUと協力することで、ベストプラクティスを推進し、国際協力を促進し、グローバルな接続性を支える重要な海底通信ケーブルネットワークを保護するための一貫したアプローチを生み出すことができます」と述べています。
また、ティジャニ氏は「海底通信ケーブルは、接続された世界が機能するために不可欠ですが、協調的で積極的な行動を必要とするリスクに直面しています」と語りました。マクシミアーノ氏は「このイニシアチブは、これらのネットワークを強化し、デジタルレジリエンスのための国際協力を推進するという国際社会のコミットメントを強調しています」と述べました。
諮問機関では少なくとも年に2回の会合が開かれ、電気通信やデジタルレジリエンス、インフラ開発などの専門家との協議が開かれ、戦略的なガイダンスの選定を行います。機関が設立されて最初の会合は2025年2月下旬にナイジェリアのアブジャで開催予定です。
なお、諮問機関の設立と同時期にはバルト海に敷設された海底通信ケーブルが何者かによって切断されるという事件が発生していますが、ITUやICPCはこの事件と諮問機関の設立との関連について明言しませんでした。
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