「まずはこれだけ押さえていれば大丈夫」なメカニカルキースイッチ初心者ガイド
昨今、メカニカルキースイッチを自分で交換できるメカニカルキーボードが増えていますが、赤軸や青軸などいろいろな種類があってやや混乱します。そんなメカニカルキースイッチの構造や使用時のメリットについて、キースイッチコレクターのThereminGoatが解説しています。
A Beginner's Guide to Switches — ThereminGoat's Switches
https://www.theremingoat.com/blog/beginners-guide
ノートPCのキーを外したことがある人は、スイッチ部分にゴムのような部品が使われているのを見たことがあるはずです。メカニカルキーボードに使われるメカニカルキースイッチはこうしたゴム製ではなく、金属やスプリングなどで構成されています。
ThereminGoatは「ゴム製のスイッチよりも長い距離を押し込まないといけない様子を見ると、あなたは『意味もなくバカみたいに複雑じゃないか?』と思うかもしれません。しかし、キーボードの使い方に関係なく、ゴムと比較してメカニカルキースイッチを使うことには大きなメリットがあります」と述べ、いくつかの利点を紹介しました。
メカニカルキースイッチ最大のメリットは反復性疲労障害の軽減だといいます。つまりキーボードを長時間触ることによる疲労が少ないという意味で、メカニカルキースイッチはその稼働距離と内部の設計でクッション性を高めてくれるのがポイントです。この他にも、カスタマイズ性が高いという分かりやすいメリットや寿命が長いなどのメリットもあります。
次に、ThereminGoatはメカニカルキースイッチを5つのパーツにわけて解説しました。
◆トップハウジング
スイッチのカバーを取ったら一番上にある部分です。特にLEDスロット(B)が空いているのが特徴で、一部のキーボードではこの部分からLEDピンを刺すことで回路基板に接続することができ、キーを光らせることが可能です。
LEDピンを収めると以下のようになります。特徴的なのは、基板によっては「北向き」または「南向き」という向きがあることで、正面から見て下側にLEDピンが来るものは「南向き」と呼ばれているとのことです。
また、トップハウジングの脚にもバリエーションがあり、一般的なのは上下または左右二箇所にフックがあるもの(ウィングラッチ)と四隅にフックがあるもの(4ピン)になります。
トップハウジングに「ステム」という部品を取り付けることで、それらしい見た目になります。
◆ステム
ステムは設計段階で最も考慮される部品だといいます。いわゆるリニア(赤軸)、タクタイル(茶軸)、クリッキー(青軸)の形状はこの部分で決まります。
一番上にあるのは「キーキャップマウント」または「マウント」で、センターから突き出ており、実際にキーキャップをスイッチに取り付けるものです。
十字型に突き出した「クロスマウント」と呼ばれるデザインが一般的。コンセントの穴のようなデザインはロープロファイルスイッチにしか見られないため、「ロープロマウント」と呼ばれています。横長の長方形が特徴的なのは、アルプスアルパイン(旧アルプス電気)がデザインした「アルプスマウント」です。
スイッチの改造面で重要な役割を果たすのが、ステムの両側にあるレールです。以下の画像のように2つのバリエーションがあり、左のステムには通常のレール、右のステムにはレールの上下に突き出たゴムがあります。これらのゴムパッドは「サイレント」スイッチと呼ばれるものによく見られ、ステムがトップハウジングなどに接触する際の音を減衰させるために使用されます。
最後は「脚」です。ステムの脚とはステムから斜めに突き出た2つの小さな突起のことで、「リーフ」と呼ばれるもう1つのスイッチ部品と相互作用し、スイッチを作動させるだけでなく、クリック感のある特性を生み出します。
◆リーフ
メカニカルキースイッチの最も複雑な部品が、金属部品で構成されたリーフです。
通常は2つあるリーフが縦向きに装着され、ステムの上下運動でリーフ同士が接触した際に入力判定が生じます。リーフは壊れやすいため、通常はボトムハウジングから取り外されないことが多いそうです。
◆スプリング
スイッチのクリック特性において、ステムに次いで重要なのがスプリングです。スプリングの外観にはいくつかのバリエーションがあり、長さ当たりの巻回数や素材など細かい違いがあるのが特徴。ほとんどの場合はスチール製です。
主なタイプは「リニア」「プログレッシブ」「コンプレックス」の3つがあります。リニアスプリングは、スイッチが作動している間は同じ力で反発するもの、プログレッシブスプリングは、スイッチが押されるにつれて徐々に力が増加するもの、コンプレックススプリングは2つのハイブリッドタイプで、最初はリニア、途中からプログレッシブに移行するものです。
◆ボトムハウジング
スイッチの底部にあるのがボトムハウジングです。ボトムハウジングはスイッチの内部部品を保持し、スイッチをキーボード下部の回路基板にはめる役割を果たします。
ボトムハウジングの裏側を見ると、金属が飛び出ているのがわかります。これは、「リーフ」の脚を受け入れて基板に接続する役割を果たします。
ボトムハウジングにもいくつか種類があり、両側に突起がないもの(画像左)とあるもの(画像右)などに分かれます。この突起は「PCBマウントレッグ」と呼ばれるもので、スイッチを回路基板へ効果的に固定するために使われます。PCBマウントレッグがある場合は「PCBマウント」、ない場合は「プレートマウント」として販売されています。
実際、回路基板にPCBマウントレッグを取り付けるための穴があるものとないものがあり、ないものにPCBマウントレッグがついたスイッチを取り付ける場合は自己責任で削るなどしなければなりません。
ThereminGoatは「メカニカルキーボードには複雑な部分がいろいろありますが、大抵の場合、使用する部品やパーツの細部まで知らなくても大丈夫です。とはいえ、メカニカルキーボードを構築するにはスイッチが欠かせません。スイッチについて詳しく知っておくことは有益です」と述べました。
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