「Blueskyは実際のところどれぐらい分散化されているのか?」についてプロトコル開発者が直々に解説
Blueskyは分散型ネットワークプロトコル「AT Protocol」をベースに開発されていますが、しばしば「Mastodonなどの分散型SNSと比べて分散できていない」と指摘されています。この指摘を受けて、AT Protocol開発チームの一員であるブライアン・ニューボールド氏が「Blueskyにおける分散とは何なのか」を解説しています。
Reply on Bluesky and Decentralization | bryan newbold | WhiteWind blog
https://whtwnd.com/bnewbold.net/3lbvbtqrg5t2t
How decentralized is Bluesky really? -- Dustycloud Brainstorms
https://dustycloud.org/blog/how-decentralized-is-bluesky/
Blueskyはもともと「AT Protocolという分散型ネットワークプロトコルで実現可能なSNSの一例」として開発が始まったSNSです。AT Protocolは各ユーザーのデータを保存する「PDS」、各PDSの情報を集約して1つの巨大データストリームとして出力する「Relay」、Relayから受け取ったデータを処理してタイムラインや検索インデックスなどを生成する「AppView」という3つの主要コンポーネントで成り立っています。
「PDS」「Relay」「AppView」は誰でも自由にホスト可能です。PDSは比較的簡単にホスト可能であり、コアなBluesky愛好家の中には自分でPDSサーバーをホストしている人も多くいます。
Blueskyのデータを独自サーバーでホストする仕組み「PDS(Personal Data Server)」を使ってみた - GIGAZINE
AppViewを用いて独自のサービスを開発しているユーザーも存在しており、例えばブログ投稿サービスの「WhiteWind」などが公開されています。また、Relayは膨大データを処理する必要があるため高コストのインフラが必要ですが、技術的には自力でホスト可能。なお、ニューボールド氏はRelayサーバーのホスト代金を「高くても月額512ドル(約7万8000円)」と見積もっています。
hrm! that Linode number is quite a bit more expensive than the couple hundred/month that both Alice and I found.
— bryan newbold (@bnewbold.net) 2024-11-08T17:15:59.965Z
even linode block storage (expensive!) seems to be on the order of $512/month for 5TB?
current relay impl stores most data as files-on-disk; postgresql is an index
上記の通り、Blueskyの基盤となるシステムは技術的には誰でもホスト可能ですが、金銭面で多大な負荷がかかります。このため、Mastodonなどで採用されている分散型SNSプロトコル「ActivityPub」の設計者であるクリスティン・レマー・ウェバー氏は「BlueskyおよびAT Protocolの背景には常に企業が存在している」「経済面に着目すると、BlueskyおよびAT Protocolは中央集権的な権威に依存する中央集権システムといえる」と指摘しています。
ニューボールド氏は「AT Protocolのホストには大規模なリソースが必要である」という意見を認めつつ、「大規模なリソースが必要だからといって、営利企業だけが参加できるということにはならない」と述べています。ニューボールド氏は大規模なリソースを駆使してサービスを提供する非営利組織の例としてWikipediaやDebianプロジェクトなどを挙げているほか、フェディバースにも大規模な予算を背景にもつインスタンスが存在すると指摘しています。
また、ニューボールド氏は「分散化(Decentralization)」という単語の定義が人によって異なっているとも指摘。レマー・ウェバー氏は「分散化」を「特定の権力を保持するノードが現れないように、システム構造全体に権力を分散させた結果」と定義していますが、集中化および分散化に関するインターネット標準「RFC 9518」では「分散化」を「単一のポイントに依存する必要がない状態」と定義しています。つまり、Blueskyはレマー・ウェバー氏の提唱する「分散化」の定義を満たしていませんが、RFC 9518の定義は満たせているというわけです。
なお、レマー・ウェバー氏は「Blueskyの開発チームには善意ある優秀な人材がそろっている」と述べています。ニューボールド氏はレマー・ウェバー氏の言葉に感謝を述べつつ「開発メンバーのこれまでの実績だけを頼りにBlueskyやAT Protocolを信頼することは避けてください。私たちは『例え開発チームが最悪でも、AT Protocolそのものは正当かつ有用である』と人々に認めてもらえるように努力しています」と述べ、属人的な信頼度ではなくプロトコルの仕組みそのものの信頼度を上げていく姿勢を示しています。
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