8000万年前の鳥「ナバオルニス・ヘスティエ」の頭蓋骨化石から脳を再現、鳥類の脳の進化解明のキーになるか
ケンブリッジ大学とロサンゼルス自然史博物館の研究チームが、ブラジルで2016年に発見された8000万年前の鳥類「ナバオルニス・ヘスティエ(Navaornis hestiae)」の化石を3Dスキャンし、脳を再現することに成功しました。これにより、ナバオルニスが始祖鳥(アーケオプテリクス)よりも大きな大脳を持ち、高い認知能力を持っていたことが示唆されています。
Cretaceous bird from Brazil informs the evolution of the avian skull and brain | Nature
https://www.nature.com/articles/s41586-024-08114-4
Bird brain from the age of dinosaurs reveals roots of avian intelligence
https://www.cam.ac.uk/stories/roots-of-bird-intelligence
‘One of a kind’ fossil from the age of dinosaurs reveals roots of bird intelligence | Natural History Museum
https://www.nhm.ac.uk/discover/news/2024/november/fossil-from-the-age-of-dinosaurs-reveals-roots-of-bird-intelligence.html
Rosetta Stone of Bird Brain Evolution | #CambridgeResearch - YouTube
当該化石はブラジルのサンパウロ州にあるマリリア古生物博物館のウィリアム・ナバ館長が2016年、博物館に近いプレジデンテ・プルデンテという地域で発見したものです。
体の大きさはムクドリほどで非常に保存状態がよく、特に鳥の化石としては珍しく、頭蓋骨全体がほぼ完全な状態で保存されていました。鳥は、ナバ館長にちなんで「ナバオルニス・ヘスティエ」と名付けられました。
ケンブリッジ大学とロサンゼルス自然史博物館の研究チームは、高度なマイクロCTスキャン技術を用いてナバオルニスの頭蓋骨をデジタル化し、脳を3Dで再現しました。
再現データから、ナバオルニスは始祖鳥よりも大きな大脳を持っていて、認知能力も高かったことが示唆されています。一方で小脳などの領域はほとんど発達しておらず、現生鳥類のような複雑な飛行制御メカニズムはまだ持っていなかったと考えられます。
これまで、始祖鳥から現生鳥類に至るまでの間にどのような進化があったのかを知る手がかりはなく、脳の構造が始祖鳥と現生鳥類のちょうど中間ぐらいに位置するナバオルニスの情報は、鳥類の脳がどのように進化していったかを解明する大きなヒントになりそうです。
研究に携わるケンブリッジ大学地球科学部のギレルモ・ナヴァロン博士は「ナバオルニスの化石は唯一無二のものであり、最初に見た時から頭蓋骨と脳を再構築して構造が完全にわかる瞬間まで、畏敬の念を抱き続けてきました」と述べました。
同じくケンブリッジ大学地球科学部のダニエル・フィールド教授は「現生鳥類は哺乳類に匹敵する、動物界でも特に高度な認知能力を持っています。しかし、鳥のその独自の脳と驚異的知能が、いつ、どのように進化してきたものなのかを理解するのに科学者は苦労してきました。まさに、ナバオルニスのような化石の発見を待っていたのです」と述べています。
研究チームによると、ナバオルニスの頭蓋骨はハトやムクドリに似ていますが、詳しく見ると、「逆の鳥類」を意味する名を与えられたエナンティオルニスの仲間であることがわかるとのこと。
エナンティオルニスは現生鳥類とは1億3000万年以上前に枝分かれした鳥類で、現生鳥類と同じように飛行能力があったとみられていますが、どのように飛行制御を行っていたかはわかっていません。
研究チームは、今回の発見は重要なブレイクスルーである一方、鳥の知能の進化を理解するための第一歩に過ぎないと捉えていて、今後、ナバオルニスが環境とどのように相互作用していたかを解き明かすことができれば、鳥の認知の進化についての答えが見えてくるかもしれないと述べています。
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