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Google DeepMindとバイオテクノロジー企業のBioNTechがそれぞれ「AIラボアシスタント」を開発中


GoogleのAI研究部門であるGoogle DeepMindと、ファイザーと共に新型コロナウイルスワクチンを開発したバイオテクノロジー企業のBioNTechが、それぞれ科学研究に特化したAIアシスタントの開発に取り組んでいることが報じられました。

BioNTech Highlights AI Capabilities and R&D Use Cases at Inaugural AI Day | InstaDeep - Decision-Making AI For The Enterprise
https://www.instadeep.com/2024/10/biontech-highlights-ai-capabilities-and-rd-use-cases-at-inaugural-ai-day/

DeepMind and BioNTech build AI lab assistants for scientific research
https://www.ft.com/content/64b1bb33-095e-4cc5-a911-50df76fa3d1d

Google DeepMindは以前から科学研究分野でのAI開発を進めており、標的となるタンパク質にうまく結合するタンパク質を設計する「AlphaProteo」や、数理科学問題の新しい解決策を出力するAIシステム「FunSearch」などを発表しています。

経済紙のフィナンシャル・タイムズは、Google DeepMindのデミス・ハサビスCEOが「研究助手として機能する専用のAIモデル」を開発する同社の取り組みを主導していると報じました。ハサビス氏はノーベル財団のイベントで、AIソフトウェアの結果として生物学に革命が起きていると主張したとのこと。ハサビス氏は、「私たちは研究助手のような、科学的な大規模言語モデルの開発に取り組んでいます。それはもしかしたら、実験結果を予測するのに役立つかもしれません」とコメントしました。

ハサビス氏によると、Google DeepMindが構築しているツールは今後数年間で、与えられた仮説に基づいた実験を提案および設計し、提案された実験が成功するか失敗するかを確率に基づいて予想することができるようになるとのことです。


科学分野に特化したAIを開発しているのはGoogle DeepMindだけではありません。新型コロナウイルスワクチンの開発でも知られるバイオテクノロジー企業・BioNTechは、イギリスを拠点とするAIスタートアップのInstaDeepを買収し、科学的なAIモデルの開発に取り組んでいます。

BioNTechは2024年10月1日のイベント「AI Day」で、同社のAIアプローチの概要について(PDFファイル)説明しました。その中でBioNTechは、Metaの大規模言語モデルであるLlama 3.1をベースにしたAIエージェントの「Laila」を発表しました。

Lailaは生物学に特化したAIエージェントであり、パラメーターがそれぞれ異なる8B・70B・405Bの3つのモデルが存在します。Lailaは人間の科学者と共同で仮説を立て、実験を計画し、専門的なツールを呼び出して結果を分析できるとのこと。


ライブデモンストレーションでは、DNA配列の分析とセグメンテーション、実験結果の視覚化など、実験生物学における日常的な科学タスクをLailaが自動化する方法が示されました。また、Lailaを実験室のデバイスに接続し、ロボットが行っている実験やタスクを監視する方法や、機械的な故障を検出する方法についてもデモンストレーションしたそうです。

InstaDeepのカリム・ベギールCEOは、「私たちは、AIによる完全自動化の未来がすぐに来るとは考えていません。LailaのようなAIエージェントは、科学者や技術者が限られた時間を本当に重要なことに費やせるようにする、生産性の加速装置だと考えています」とフィナンシャル・タイムズに述べました。


また、海外メディアのBloombergは、Googleの複数のチームがAI推論ソフトウェアの開発を進めていると報じました。

Google Is Working on Reasoning AI, Chasing OpenAI’s Efforts - Bloomberg
https://www.bloomberg.com/news/articles/2024-10-02/google-is-working-on-reasoning-ai-chasing-openai-s-efforts


OpenAIが9月に複雑な推論能力をもつAIモデル「OpenAI o1」を発表して以降、Google DeepMindの一部は自社が遅れを取っているのではないかと不安視しているとのこと。しかし、すでにGoogleは自社のAI製品をリリースしているため、最初にChatGPTがリリースされた時ほどの懸念はないそうです。

Bloombergは、GoogleとOpenAIはAI分野の覇権を巡って争いを繰り広げており、Googleはリードを取り戻すために研究所を統合してGoogle DeepMindを立ち上げたり、研究者と製品チームの関係を強化したりといった手段を講じていると指摘。一方でGoogleは、AI製品のリリースに関して倫理的問題やブランドへの信頼、巨大な組織における利害関係などを考慮しており、OpenAIよりは慎重に動いているとBloombergは述べました。

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in ソフトウェア,   サイエンス, Posted by log1h_ik

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