個人の機密情報の対象をニューラルデータにまで拡大する法案をカリフォルニア州が可決
アメリカ・カリフォルニア州のギャビン・ニューサム知事が2024年9月28日に、人々の脳のデータを保護してテクノロジー企業による悪用を防ぐことを目的とした新たな法律「SB-1223」に署名しました。
Bill Text - SB-1223 Consumer privacy: sensitive personal information: neural data.
https://leginfo.legislature.ca.gov/faces/billNavClient.xhtml?bill_id=202320240SB1223
Proposed California Law to Protect Neurorights? | Senator Josh Becker
https://sd13.senate.ca.gov/news/in-the-news/may-14-2024/proposed-california-law-to-protect-neurorights
California Passes Law Protecting Consumer Brain Data - The New York Times
https://www.nytimes.com/2024/09/29/science/california-neurorights-tech-law.html
California Enacts Privacy Protections For Brain Wave Data
https://news.bloomberglaw.com/ip-law/california-enacts-privacy-protections-for-brain-wave-data
近年では、テクノロジーの進歩に伴い集中力の向上やうつ病を含むメンタルヘルス疾患の治療を目的としたスマートフォン向けアプリなど、消費者向け製品が多くリリースされています。これらの製品は、思考や感情など、ユーザーの心の中を反映した脳データを監視および記録することが可能で、イーロン・マスク氏が創業した脳インプラント企業「Neuralink」やMetaによるCTRL-Labsの買収など、大手企業も脳データを活用した製品の開発に取り組んでいます。
しかし、こうした製品には個人の脳情報が悪用される危険性をはらんでいる一方、これまで規制がありませんでした。そこでジョシュ・ベッカー上院議員はカリフォルニア州上院に対し、カリフォルニア州消費者プライバシー法(CCPA)の下で、「機密情報」に「ニューラルデータ」を分類することを目的とした法案「SB-1223」を提出しました。
SB-1223では、「ニューラルデータ」には「ニューロテクノロジーによって、またはニューロテクノロジーの助けを借りることで処理が可能な、個人の中枢神経系または末梢神経系の活動を測定して生成された情報」が該当するとのこと。具体的には、ウェアラブルデバイスや脳インプラントなどによって収集された脳活動に関連するデータで、法案が可決された場合、カリフォルニア州の住民は企業に対してどのようなデータが収集されたかを開示することを要求できるほか、必要に応じてデータの削除を求めることができます。
CCPAではすでに、肖像権やDNA、指紋などの生体認証情報を保護しており、SB-1223の可決によってニューラルデータも同様に保護されることになります。
その後、SB-1223はカリフォルニア州議会と上院での投票が行われ、全会一致で可決されました。そして2024年9月28日にニューサム知事はSB-1223に署名しています。
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ベッカー氏は「SB-1223の成立に非常に興奮しています。ニューラルデータという人間の非常に重要なデータセットのプライバシー保護について、積極的に考えることが重要です。カリフォルニア州の住民のニューラルデータを保護することの重要性は、過小評価することはできません」と語りました。
一方でニューラルデータを取り扱う企業を代表するロビー団体のTechNetは「SB-1223は人間の行動について記録されたほぼ全ての技術を規制するものだ」として反対の意を示しています。なお、海外メディアのThe NewYork Timesによると、SB-1223は人間の心拍数や血圧など、人体の非神経データから得られた情報には適用されないとのことです。
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