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キャラクターを「道に迷わせる」ことで物語に深みを与えるテクニックとは?


読者を物語に没頭させるためには、現実にあるような街が舞台の場合でも、ファンタジーやSFなど架空世界が舞台の場合でも、「今どのような場所を歩いているか」「AとBの位置関係はどれくらいの距離か」といった場所の感覚を持ってもらうことが重要です。短編小説を書く作家を育成し、技術向上のサポートも行う出版社のOne Storyで編集長兼作家を務めるレナ・バレンシア氏が、物語の舞台に奥行きを与えるための「道に迷わせる」テクニックを解説しています。

Experiencing Place in Fiction: On Allowing Your Characters to Get Lost ‹ Literary Hub
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バレンシア氏が物語作成の授業を行う際に、「子どもの頃に生活していた近所の地図を描く」という練習をさせるそうです。かつて慣れ親しんでいた場所では、道順や目立つランドマークをよく思い出せるはず。一方で、慣れすぎていることでむしろ、劇的な変化がない部分は認識できていないことがあります。この練習により、「場所と登場人物が共生関係にあることを伝えることができます」とバレンシア氏は述べています。

作家のレベッカ・ソルニット氏は、エッセイ集「迷子になるためのフィールドガイド」の中で、「迷わないことは生きていないことであり、迷い方がわからないことは破滅につながります。そして、その間のどこか未知の土地に、発見の人生があります」と迷うことの重要性を語っています。ソルニット氏によると、ある程度自分を見失った状態で、「人生において未知のものを受け入れる余地を作ること」が重要になるとのこと。


バレンシア氏はこれを受けて、「慣れ親しんだ思い出の街を思い描いた後、その地域を歩き回る見知らぬ人を書いてさまよわせてみる」というトレーニングを提案。このトレーニングには2つの側面があり、1つは見慣れた環境を見知らぬ人の目を通してみることで、作者がこれまで気付けなかった詳細を明らかにすることができるという点。物語を作る作者は、自分で作った世界をよく知っていますが、読者はそうではありません。その場所を知らない人がどのような点に気付くのかという想像をすると、その場所に関わるさまざまな人物を想定できたり、それまでは気付けなかった舞台の特徴に気付くことができたりと、フィクションにとって有益な「不確実性」が生まれ、物語を面白くします。


もう1つは、フィクションにおける舞台ないし場所というものが、「登場人物とその場所にどのような関係があるのか」という文脈に大きく左右されることを理解できるという点です。その場所に慣れた人物は重要な建物やランドマークについて言及しやすく、その場所に不慣れな人は特有の文化に気付きやすいもの。さらに、登場人物が見ているものに文脈がない状況、例えば急に殺風景な空間に迷い込むシーンをあえて作り出すと、その場所が奇妙で異質なものとなり、現実と非現実の境界が裂けるような感覚を作り出すこともできます。

バレンシア氏は創作のテクニックとして「登場人物をなじみのない状況、または気まずいパーティーや険悪なデートなど感情的に心地良くない状況に置くと、物語に緊張感と重みが加わります。同じように、登場人物をなじみのない土地や空間、場所に配置することで、物語に緊迫感が生まれます。そこから比較的安全な場所に戻る方法を見つけることで、ストーリーにおける波や登場人物の内面の変化を描くことができるでしょう」とまとめています。

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in メモ, Posted by log1e_dh

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