サイエンス

子どもは屋外での危険な遊びを通して成長する、適切に大人がサポートして怪我の予防と遊びのバランスをうまく取るのがポイント


「高いところに登る」「自転車でスピードを出す」など、子どもは屋外で「危険な遊び」をすることがありがちですが、近年では、遊びに関する全てのけがを予防することを目的として、子どもが屋外で自由に遊ぶ機会が失われつつあります。しかし、カナダ小児科学会(CPS)の研究チームは、子どもたちの精神や社会性、豊かな感情を育成しつつ、肥満や不安、行動上の問題などの一般的な健康問題を防ぐために、危険な遊びを奨励する声明を発表しました。

Healthy childhood development through outdoor risky play: Navigating the balance with injury prevention | Canadian Paediatric Society
https://cps.ca/en/documents/position/outdoor-risky-play


The importance of risky play for childhood development
https://www.sickkids.ca/en/news/archive/2024/the-importance-of-risky-play-for-childhood-development/

CPSが想定する「危険な遊び」のカテゴリーと例が以下。CPSは主に、結果の不確実性や身体的傷害の可能性を伴う、スリリングで刺激的な自由な遊びの形を「危険な遊び」と定義しています。

遊びのカテゴリー
高所での遊び高所に登る、高所から飛び降りる、高所でバランスをとる
スピードを伴う遊び自転車でスピードを出す、ソリで滑り降りる
道具を使った遊びおのやノコギリ、ナイフ、ハンマー、ロープなどの使用
潜在的な危険がある遊び火や水の近くで遊ぶ
荒っぽい遊びレスリングや格闘技、棒を使ったフェンシング
行方不明や迷子になるリスクがある遊び大人の監督なしに、近所や森を探検する
衝撃のある遊び何かや誰かに繰り返しぶつかる
身代わりとしての遊び他の子どもたちが行う危険な遊びを見てスリルを味わう


これらの「危険な遊び」は、砂利や砂、枝など天然の素材を含む屋外環境で、子どもの想像力を高める遊びの機会を提供するため、非常に重要です。しかし、CPSの傷害予防委員会のスザンヌ・ベノ委員長は「危険な遊びの機会を作る際には、『リスク』と『ハザード』の違いに留意する必要があります」と指摘しています。


ベノ氏によると、「リスク」とは、「斜面をどれだけ早く駆け下りることができるか」など、子ども自身が課題を評価し、自身の認識能力に基づいて行動方針を決定できる状況です。一方で「ハザード」は「子どもの体重でも倒れる可能性のあるすべり台」「簡単に折れる可能性のある腐った樹木」など、けがの可能性が子どもの認識能力を超えている状況です。

ベノ氏は、子どもたちに適切に「リスク」を提供しながらも、「ハザード」の軽減や排除を行うことで、子どもたちが危険な遊びを通して自身のリスク管理戦略を育むことができると主張しています。


実際に、危険な遊びを禁止するのではなく積極的に子どもたちに認めると、座りがちな時間が減少し、激しい身体活動のレベルが増加したことが報告されているほか、学校での適度な取っ組み合いなどを認めた結果、押したり突き飛ばしたりという報告が増えたものの、イジメに関する報告は少なかったことが明らかになっており、荒っぽい遊びは子どもたちの紛争解決能力を養うのに役立つ可能性が示唆されました。

また、危険な遊びをしている子どもは、社交性のスキルや仲間との帰属意識が高まることが示唆されているほか、自分の限界を試すことができるような状況では、他者とのコミュニケーションや協力する能力が高まる可能性が報告されています。

このように、リスクのある遊びには多くの利点がありますが、リスクを冒すこととけがの予防のバランスを適切に取る必要があります。危険な遊びによるけがは、すり傷や捻挫など軽微なものが多いですが、個々の子どもの年齢や能力、快適さのレベルを考慮して危険を取り除き、自分の遊び方について決定できるようにすることが重要です。

そのため、「自転車に乗る際はヘルメットをかぶらせる」「道路で遊んでいる子どもから目を離さない」「遊ぶにはふさわしくない場所で遊ばせない」など、大人が子どもに対して安全対策を行うことが求められます。


また、子どもに対して親が「気を付けて」「大丈夫?」などの言葉を繰り返しかけるのは、「信用されていない」「それができると思われていない」と子どもに思わせ、遊びに対する積極性を失う要因になるとのこと。そこで一部の専門家は、親は子どもの遊びに介入する前に、15~30秒待って、子どもの「遊びの状態」を観察することを(PDFファイル)推奨しています。

適切に親が介入することで、子どもの状況や行動に対する意識を高めることができるとともに、子どもが苦境を乗り越えたり、問題を解決したりするのを助けることが可能になります。

海外メディアのSickKidsは、「危険な遊びを促進するには、子どもがリスクを冒すことを認める安全で協力的な環境を大人が作りだす必要があります。子どもを『可能な限り安全』ではなく、『必要なだけ安全』に保つバランスの取れたアプローチを採ることで、子どもにとって健康的で活動的なライフスタイルの創造に役立ちます」と述べています。

この記事のタイトルとURLをコピーする

・関連記事
「外に出て自然と触れ合いなさい」と言われると自然環境に接するメリットが減るという研究結果 - GIGAZINE

子どもへの体罰は発達リスクを増加させるだけで悪影響しかないと20年の研究を総括 - GIGAZINE

オフラインのChromeで遊べる「恐竜ゲーム」を巡り学校関係者から「生徒が遊ぶのを止める方法」の質問が多数寄せられていた - GIGAZINE

子どもの時間を塾や習い事でがんじがらめにするメンタルヘルス上の弊害について専門家が解説 - GIGAZINE

子どもをうつ病にしているのはSNSではなく親からの過剰な干渉という研究結果 - GIGAZINE

in サイエンス, Posted by log1r_ut

You can read the machine translated English article here.