サイエンス

火星の宇宙飛行士は「緑色の空」を見るかもしれない


空が青く見えるのは、大気中の微粒子によって波長の短い青い光がより強く散乱され、空一面に広がって私たちの目に入ってくるためです。火星にも大気があり、火星から空を見上げた場合にも大気中の微粒子で散乱した光を見ることになりますが、夜の火星から見上げた空は「緑色」に広がっている可能性を欧州宇宙機関(ESA)の研究者が解説しています。

Observation of the Mars O2 visible nightglow by the NOMAD spectrometer onboard the Trace Gas Orbiter | Nature Astronomy
https://www.nature.com/articles/s41550-023-02104-8

ESA - A green glow in the martian night
https://www.esa.int/Science_Exploration/Human_and_Robotic_Exploration/A_green_glow_in_the_martian_night


Astronauts on Mars may see a green sky, eerie new study suggests | Live Science
https://www.livescience.com/space/mars/astronauts-on-mars-may-see-a-green-sky-eerie-new-study-suggests

ESAは火星で活発な生物学的、地質学的プロセスの兆候となる可能性のあるメタンやその他の微量大気ガスの証拠を探す「トレースガスオービター(TGO)」というミッションをロシアの機関と共同で実施しています。TGOでは2016年に大気検査機とスキャパレリEDMという着陸実証モジュールを火星に送り込んでおり、スキャパレリEDMは地表に墜落して着陸に失敗したものの、継続して大気の調査は実施しています。

ESAは2023年10月ごろに、TGOミッションの一環で、火星の大気圏で「緑色の夜空」を初めて検出しました。火星で夜光が見えることは予想されていましたが、可視光で観測されたのは初めてとのこと。ESAによると、緑色の夜空は探査機が夜に活動することができるほどの明るさとなる可能性があるそうです。

ESAは大気が夜光を発生させる仕組みについて、以下のように説明しています。まず、惑星の表面から約50㎞上空で、二酸化炭素分子が太陽光からエネルギーを受けることで酸素原子に分裂します。そして、2つの酸素原子が結合して酸素分子を形成するとき、太陽光が散乱します。


酸素原子が太陽光と逆側、つまり夜側に移動すると太陽からのエネルギーがなくなり、より低い高度で集まって光を拡散させることになります。ベルギーのリエージュ大学の大気惑星物理学研究所に勤める研究者のローリアン・ソレ氏は「この放射は、夏の大気中で生成された酸素原子が、風によって運ばれた後に再結合したことで発生するものです。このとき、移動した先では火星の大気中の高度40~60km程度、夏よりも低い冬の高緯度の位置で放射が行われます」と説明しています。


TGOは高度400kmで火星を周回し、可視光を検知するチャンネルで火星の夜側を観測したところ、一面に広がる緑色の光を見ることができたそうです。ESAは探査機が緑色に光を反射する大気を撮影した様子について、以下のような想像図を示しています。


リエージュ大学の惑星学者であるジャン=クロード・ジェラール氏は、ESAの声明で「これらの新しい観測結果は予想外で、将来の火星探査にとって興味深いものです。夜光の強さは、火星軌道上のシンプルで比較的安価な機器で大気の流れを測量し、監視できるほどです。将来のESAミッションでは、火星全体を撮影するためのカメラを搭載できるでしょう。さらに、放射は十分に強いため、将来の宇宙飛行士が軌道上または火星の地上から極夜の間に観測できると予測できます」と述べています。

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in サイエンス, Posted by log1e_dh

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