メモ

ベーシックインカムのような無条件の現金給付の可能性についての大規模な調査研究結果が公開される


非営利団体のOpenResearchが、1000人の被験者を対象に2020年11月から2023年10月にかけて実施したベーシックインカムを支給する実験の結果について報告しています。

Unconditional Cash Study | OpenResearch
https://www.openresearchlab.org/studies/unconditional-cash-study/study


The case for universal basic income doesn’t need to involve rapid AI progress at all - Vox
https://www.vox.com/future-perfect/361749/universal-basic-income-sam-altman-open-ai-study

OpenResearchは2020年11月から2023年10月にかけて、テキサス州とイリノイ州に住む21歳から40歳までの人々3000人に毎月小切手を配布する実験を実施しました。実験では、1000人の被験者に毎月1000ドル(約15万6000円)が支給され、2000人の被験者には毎月50ドル(約7800円)が支給されました。

実験の結果、1000ドルを支給された被験者は50ドルを支給された被験者と比較して、1年間のうちに歯科を受診する割合が約10%高かったことが判明。また、毎月1000ドルを支給された被験者は、健康保険料を除いた医療費の負担額が1月当たり20ドル(約3100円)増加していたこともわかりました。


加えて、問題のある飲酒を行う割合が20%減少したことが報告されています。


さらに、毎月1000ドルを受け取った被験者は月の支出が310ドル(約4万8000円)増加したことが報告されています。最も支出が増加したのは、食費・家賃・交通費で、数値としては食費に67ドル(約1万円)、家賃に52ドル(約8100円)、交通費に50ドル(約7800円)です。

加えて、毎月50ドルを支給された被験者と比べて、1000ドルを支給された被験者は他者への支援に月22ドル(約3400円)を費やしたことが明らかとなっています。


また、1000ドルを支給された被験者は週あたりの労働時間が約1.3時間減少したことや、積極的に仕事を探す可能性が10%高まったことが報告されています。

一方で、世帯収入と個人収入の増加幅は毎月50ドルを支給された被験者の方が大きかったことが明らかになりました。以下のグラフは給付金の違いによる世帯収入の推移を示しており、紫で示された毎月50ドル支給の被験者は着実に増加している一方、赤の毎月1000ドル支給の被験者の上がり幅は小さいことが確認できます。


毎月1000ドルの受給者は、教育または職業訓練を受けたと報告する割合が毎月50ドルの受給者と比べて14%高かったことや、黒人の受給者は、ビジネスの立ち上げや起業の手伝いを実施したと報告する割合が約26%高かったことも報告されています。

加えて、毎月1000ドルのベーシックインカムを得られたことにより、近所に引っ越しする割合は約11%増加。引っ越し先を探すアクションは23%増加、住宅費は5%増加したことが明らかとなりました。


OpenResearchの研究チームは「ベーシックインカムの魅力は、受給者がそのお金をどこに消費するか自分で選択できる自由にあります。しかし、消費先が自由であるがゆえに、健康の改善や健康格差の是正にはあまり役立たないようです」と指摘。一方で「貧困層を減らし、国民の幸福感を改善しようとする場合、短期的には健康状態を改善しないとしても、ベーシックインカムは政策立案者にとって重要な選択肢となる可能性があります」と主張しました。

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in メモ, Posted by log1r_ut

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