運動をたくさんしてもやせにくい「ワークアウトのパラドックス」とは?
「最近お腹まわりが気になるから、もっと運動した方がいいのかも」と考えたことがある人は多いはず。運動をすれば体重が落ちると思われがちですが、たくさん運動をしても体重を落とすのは難しいという「ワークアウトのパラドックス」について、科学をアニメーションで説明するYouTubeチャンネル・Kurzgesagtが解説しています。
We Need to Rethink Exercise – The Workout Paradox - YouTube
そもそも食事の「カロリー」とは熱量のこと。炭水化物や脂肪を変換した熱量が、体中の細胞を機能させるためのエネルギーとなるのです。
1時間のウォーキングによる消費カロリーは約260kcal、水泳だと430kcal、サイクリングだと600kcal、ランニングだと700kcalになります。
しかし、脂肪1kgを変換して得られるカロリーは約7000kcal。単純計算でいえば、ランニングを10時間して初めて、余分な脂肪1kgを減らすことができるといえます。
では、運動をすればするほど脂肪を燃焼して体重を減らすことができるのでしょうか。昔はそのように考えられていましたが、近年の研究では「運動をすればするほどやせるとは必ずしもいえない」ということがわかっています。
例えば、PCに向かって座りながら仕事をする人と、毎日走り回って狩りをする狩猟民族では、1日の運動量に大きな差があります。
タンザニアのハヅァ族の1日当たりの運動量は、一般的な会社員の1週間当たりの運動量とほぼ同じだそうです。
しかし、ハヅァ族と一般的な会社員の1日当たりの消費カロリーには大きな差がないことがわかっています。この現象は民族による違いではなく、世界中のどこでも見られるとのこと。
確かに定期的に運動をする人の1日当たりの消費カロリーは、運動をあまりしない人よりも多くなりますが、その差はわずか100~200kcal。
もちろん普段運動していない人が突然運動を始めると、脂肪が過度に燃焼され、体重も減っていきます。しかし、運動を続けるうちに、運動をする生活に体が適応し、脂肪の燃焼バランスが調整され、余分に消費されるカロリーが減っていくため、体重が減らなくなっていきます。
また、運動をたくさんすればいいというものではありません。運動をして余分なエネルギーが体内で消費されるということは、体内の各器官や細胞の活動が活発になるということ。
例えば、ケガをした時に炎症が出るのは免疫システムの一環です。余分なエネルギーが体内で消費されると、免疫システムが活発になりすぎてしまい、炎症が出やすくなります。慢性的な炎症はさまざまな病気につながります。
また、ストレスの原因となるコルチゾールは副腎皮質ホルモンの一種ですが、これも余分なエネルギーが体内で消費されることでより多く分泌されることがわかっています。そもそもコルチゾールは、かつて人類が大自然の中でとっさの行動に出て生き延びるために必要だったと考えられていますが、座り仕事が当たり前な現代人にとってはストレスを招く物質という側面が強くなります。
要するに、普段から運動をしない生活に適応しているのであれば、定期的に運動をしている人と消費カロリーはそれほど変わらず、かつ十分に健康的でいられるということ。ただし、これはあくまでも適切でバランスの取れた食事を取っていることが前提。消費カロリーを上回るだけの食事を摂取すれば、当然脂肪は増えていきます。
Kurzgesagtによると、このような「ワークアウトのパラドックス」が生まれてしまうのは、人間が他の動物よりも消費カロリーが比較的高いからだとのこと。
他の動物と異なり、人間の子どもは発達段階が低い状態で生まれてくるため、赤ちゃんから少しずつ成長するにしたがって社会性を得て知識を獲得していきます。そして、新しく得た社会スキルと知恵を使い、より効率良くカロリーを摂取することができるようになります。つまり、人間がカロリーをたくさん摂取し、生活に適応して適切なカロリー消費を行うのは、バグではなく機能だとKurzgesagtは主張しました。
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