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児童ポルノ検出のためにあらゆるメールのスキャンを強制する「チャットコントロール案」の投票が議題から外されることに


欧州委員会では、通信内容の広範な監視を行う「児童性的虐待規制案(チャットコントロール案)」についての議論が進められており、2024年6月19日に採決が行われる予定でした。しかし、この規制案については多数の反発の声が挙がっていたことから、欧州委員会はチャットコントロール案の採決に関する議題を会議から外しています。

EU cancels vote on child sexual abuse law amid encryption concerns – POLITICO
https://www.politico.eu/article/eu-council-cancels-vote-on-encryption-breaking-child-sexual-abuse-law/


EU Council has withdrawn the vote on Chat Control
https://stackdiary.com/eu-council-has-withdrawn-the-vote-on-chat-control/

EU member states remain divided on controversial CSAM-scanning plan — but for how long? | TechCrunch
https://techcrunch.com/2024/06/20/eu-member-states-remain-divided-on-controversial-csam-scanning-plan-but-for-how-long/

欧州委員会で策定が進められていたチャットコントロール案とは、EUが児童性的虐待を規制するために推し進めている枠組みのことで、特に通信プロバイダーに全面的な協力を呼びかけ、児童性的虐待コンテンツ(CSAM)をスキャンするための仕組みを確立することを目指しています。


一方で、チャットコントロール案には通信の安全性が脅かされる危険があることから、プライバシー保護を重視する専門家などから強い非難を受けており、プライバシー特化のメッセージアプリ「Signal」などは制定後のEU離脱を示唆していました。

プライベートなメールや画像をスキャンするEUの「チャット規制法」成立が秒読みか、メッセージアプリ「Signal」はEU離脱を示唆 - GIGAZINE


そのほか、ドイツのNGOであるGesellschaft für Freiheitsrechte e.Vも「チャットコントロール案はEUの基本権検証に違反している」と主張し、反対意見を提起しています。

児童保護の名目でプライベートなメッセージを監視する「チャットコントロール案」は今すぐ廃止すべきとの声 - GIGAZINE


法案の修正に向けて、欧州委員会では2024年6月19日に採決が行われる予定でしたが、プライバシー専門家の警告を聞き入れたドイツやポーランド、オーストリア、オランダ、チェコなどはチャットコントロール案に対し反対の立場を表明。賛成の立場を示したのはアイルランドやスペインといった一部の国だけでした。欧州委員会の議長国を務めるベルギーの報道官は「採決に先立って行われた大使会議で委任状を出すつもりでしたが、必要な過半数を獲得できるかどうかは明らかではありませんでした。しかし、会議の数時間前に過半数を満たせないことが判明したため、議題からチャットコントロール案を削除しました」と認めています。

チャットコントロール案に反対の立場を示してきたパトリック・ブライヤー欧州議会議員は「十分な数のEU大使がチャットコントロール案の今後の方向性に合意できなかったことを歓迎します」と述べた一方で「これは単なる実行停止に過ぎず、監視過激派は数日のうちに採決に向けて再挑戦する可能性があります。いつになったら子どもの保護には新しいアプローチが必要だということがわかるのでしょうか」と指摘しました。


チャットコントロール案は今後、EU加盟国間での協議や法案の修正が再度行われることになります。2024年7月には、理事会議長国がベルギーからハンガリーに移りますが、ハンガリーは議長国の作業計画の一環として、オンラインでの児童性的虐待を防止・撲滅するための包括的な法的枠組みの策定と、児童の性的搾取に対する指令の改定を含む、チャットコントロール案に関する交渉を進める意向を表明しています。

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in ネットサービス, Posted by log1r_ut

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