「運命は存在するのか?」を科学的に考えてみる
by Fredrik Rubensson
朝食のメニューから人生を左右する決断まで、人は毎日何かを決めながら生きていますが、もし物事が運命で決まっているのであれば、実は人は何も決めていないことになります。哲学界を二分する「自由意志」の有無という課題について、科学系YouTubeチャンネルの「Kurzgesagt」がわかりやすいアニメーションで解説しました。
Are You an NPC? - YouTube
自由意志について、Kurzgesagtは「ノンプレイヤーキャラクター(NPC)」という言葉を使って説明しています。
もし人に自由意志があるなら、人はゲームのキャラクターを操作している時のように、どう動くかを自分で決めているはずです。
しかし、キャラクターの挙動があらかじめ決まっているのであれば、それはNPCに過ぎません。
自由意志の存在を否定する決定論の立場の人は、人間はNPCだと主張します。
人体は臓器、細胞、分子、原子といった具合に、細かく分けていくことができます。つまり、人間は突き詰めれば粒子のパターンといえます。
そして、個々の粒子の振る舞いは一定です。
ここで、すさまじい性能を持つスーパーコンピューターが、宇宙の始まりであるビッグバンを観測していたとします。
粒子の動きは全て予測可能なので、この世界がどうなるのかは、宇宙に誕生した全ての粒子の動きをシミュレートすればわかるはずです。
人の行動を決める脳の動作も、実は140億年前に始まったある種の「運命」によって定められていたというわけです。
科学に詳しい人なら、「じゃあ量子はどうなんだ」と思うかもしれません。
量子プロセスは本質的にランダムで、予測できないからです。しかし、量子力学は決定論に影響を与えません。
例えば、ランダムに動く電子が右ではなく左に行ったとします。
そして、これが引き金となって、脳のニューロンの一連の発火を引き起こすとします。
その結果、その人はYouTubeの動画を視聴しようと決めるかもしれません。
しかし、もし先ほどの分岐で電子が右に行っていれば、インターネットをやめて部屋を片付けようと決意したかもしれません。
脳内の電子が左に行くか右に行くかの決定権は、本人にはありません。つまり、量子の動きがランダムだとしても、結局自由意志などないわけです。
これに異を唱えるのが、非決定論です。この立場の人は、人間はNPCではなくメインキャラクターであると唱えます。
この世界には、単純な粒子の動きでは説明できない創発という現象があります。創発とは、多くの小さなものが集まって、新しい基本的な特性が生み出されることです。
例えば、水場に飛び込むとズボンがぬれます。
個々の水の分子はぬれていませんが、集まって水になることでぬれるという新しい特性が生まれています。これが、創発です。
分子、細胞、臓器、人間、社会という具合に、小さなものが集まると次の階層が生まれ、階層を上がるごとに新しい特性が生まれます。そして、新しく生まれた階層は、構成要素の集まり以上のものになります。
階層同士はある程度つながっており、分子で細胞を説明したり、細胞で人を説明したりできます。しかし、創発があるので素粒子で銀河を説明することも、クォークで人間の心理をひもとくこともできません。
同様に、個別のニューロンは何かを考えません。
しかし、脳にある無数のニューロンは相互につながり、YouTubeの動画を見ようと決めます。こうして、人の決定が現実の世界に影響を与え、世界もまた人の決定に影響しています。ここに自由意志があるのではないかと、一部の非決定論者は考えています。
Kurzgesagtは「自由意志があるのかどうかはわかりませんが、個人的には、自由意志があるという考えの方が魅力的だと思います」と述べました。
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