サイエンス

ダークマターの正体や人類が存在する理由など宇宙の3つの謎に迫る粒子「アクシオン」とは?


アクシオンとは、ニュートリノミラーマターなど共にダークマターの正体の候補に数えられている未発見の素粒子です。そんなアクシオンが、「宇宙が現在の姿になった理由」などの大きな難題を解く鍵になるとの学説が発表されました。

[1910.02080] Axiogenesis
https://arxiv.org/abs/1910.02080

'Axion' particle solves three mysteries of the universe -- ScienceDaily
https://www.sciencedaily.com/releases/2020/03/200310114721.htm

Hypothetical particle explains three major mysteries of the universe
https://newatlas.com/physics/axion-dark-matter-antimatter-universe-mysteries/

アクシオンには宇宙の3つの謎を解く鍵が秘められているとの説を発表したのは、ミシガン大学の物理学者であるRaymond Co氏と、プリンストン高等研究所の素粒子物理学者・張ヶ谷 圭介氏です。両氏は、「宇宙の在り方を説明する現行の標準理論には、明らかな矛盾が存在しています」と指摘しています。

by ParticlesAndMath

アクシオンが鍵を握っているとされるのが、以下の3つの「謎」です。

◆謎1:強いCP問題
そもそもアクシオンは、素粒子物理学上の未解決問題である「強いCP問題」を説明するために考案された粒子です。原子を構成する陽子と電子にはそれぞれ正と負の電荷があり、中性子には電荷がありません。しかし、中性子を構成するクォークには電荷があるので、本来なら電界と相互作用を引き起こすはずですが、実際には相互作用が確認されていません。

この「強いCP問題」は標準理論だけではうまく説明できませんが、アクシオンが存在すると仮定された場合には、中性子と電界との相互作用が起きないので、問題も発生しないのだとのこと。

◆謎2:ダークマターの正体
また、アクシオンはダークマターの正体としても期待されています。観測可能な宇宙の物質をかきあつめても、全宇宙に存在する質量とエネルギーの総和の5%に過ぎず、残りの95%は不明です。仮にダークマターが存在すれば、95%のうち25%は説明可能ですが、標準理論にはダークマターの候補となる粒子がありません。

もしダークマターが存在しなければ、重力不足で銀河の星々が散り散りになってしまい、銀河は今の形状を保つことができません。そこで登場するのがアクシオンです。他の物質と相互作用を起こさないほど質量が小さいとされるアクシオンですが、このアクシオンで銀河系の中が満たされていれば、銀河が今の形状になっていることが説明できます。

by Maxwell Hamilton

◆謎3:物質の存在
そして、最も根本的な問題は、「なぜ宇宙に物質が存在することができているのか?」というもの。宇宙のはじまりとされている大爆発ビッグバンでは、物質と反物質は同じ量だけ発生したと考えられています。しかし、物質と反物質が衝突すると対消滅を起こして膨大なエネルギーとともに質量が消滅してしまうため、もし物質と反物質の量が釣り合っていたら目に見える宇宙は存在せず、人類も誕生していません。

この「物質と反物質の非対称性」という謎の答えになるのが、アクシオンの存在です。Co氏と張ヶ谷氏は、初期の超高温の宇宙が冷えはじめた時にアクシオンが振動を始めたことで、物質が反物質よりわずかに多く誕生した可能性が高いことを突き止めました。このアクシオンの運動により生み出された「反物質を上回る物質の量」は、反物質の100億分の1程度だとされていますが、それでも今の宇宙の姿を説明するには十分な量だとのこと。

宇宙の誕生に関わるアクシオンの働きを、両氏は「アクシオジェネシス(Axiogenesis)」と名付けました。Co氏は「初期の宇宙におけるアクシオンの動きは、さながらペットボトルの底を回るビー玉のようなものです。アクシオンが円を描くようにして回転することで生じた振動から、現在の宇宙を形作った物質が発生しました」と説明しました。


Co氏はさらに、「人は常に、『なぜ自分がここにいるか?』の理由を問い続けてきました。素粒子物理学の見地からすると、この問いかけは『なぜ物質と反物質が非対称なのか?』ということになりますが、その答えとなるのがアクシオンです。ワクワクすることに、アクシオンに関する私たちの発見は、この問題を含む3つの謎をすべて同時に説明できます」と話しました。

また、張ヶ谷氏は「アクシオンは当初、理論素粒子物理学者によって提唱された存在でしたが、近年では実践派の粒子物理学者や天体物理学者、宇宙論学者などが協力してアクシオンの研究に乗り出しています。私たちの研究により、アクシオンの回転が宇宙論の中で果たす役割が明らかになったことで、学際的な取り組みが一層発展することを願っています」と述べて、今回の発見は多分野にわたる研究に資するものだとの見方を示しました。

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in サイエンス, Posted by log1l_ks

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