サイエンス

かつてはオスの蚊も吸血していたことが化石から判明


蚊が人や動物の血を吸うのは食事のためではなく、産卵期のメスがエネルギーを得たり卵巣を発達させたりするためだと知られています。そのため、「血を吸うのはメスの蚊だけ」というのが常識ですが、レバノンで発見された古い蚊の化石を分析したところ、かつてはオスの蚊も吸血していた可能性が明らかになりました。

The earliest fossil mosquito: Current Biology
https://www.cell.com/current-biology/abstract/S0960-9822(23)01448-3


Earliest-known fossil mosquito suggests males were bloodsuckers too
https://phys.org/news/2023-12-earliest-known-fossil-mosquito-males-bloodsuckers.html

中国の地質古生物学研究所およびレバノン大学に所属するダニー・アザール氏らは、レバノンで発見された白亜紀初期のものと考えられる琥珀(こはく)を分析した結果を学術誌のCurrent Biologyに発表しました。琥珀の中には、状態の良いオスの蚊が含まれています。

琥珀に残された蚊の化石を観察したところ、オスの蚊は2匹とも、現在の蚊ではメスのみの特徴である「刺して吸血をするための口器」が確認されたそうです。通常はオスの蚊は口器が退化して、吸血ではなく花の蜜を多く吸えるような仕組みになっています。アザール氏は「レバノンの琥珀は、生物学的包有物を多く含む最古の琥珀であり、その形成は花を咲かせる植物(顕花植物)の出現と同時期です。そのため、花粉を媒介する生き物と顕花植物の共進化に関する証拠として、この琥珀は非常に重要な資料です」と語っています。


研究チームは今回の発見について、「カ科昆虫の明確な出現時期が白亜紀前期まで延長されました」と報告。また、古代に吸血性のオスの蚊が存在した可能性から、吸血の進化はこれまで考えられていたよりも複雑な可能性があると示唆しました。

また研究者らは、白亜紀の蚊はオスでも吸血口器を持っていたという発見は、蚊の「幽霊系統のギャップ」を埋める手助けになると指摘しています。幽霊系統とは、化石や遺伝子記録として直接的な証拠は残っていないが、理論上は存在していたと推測される種のこと。昆虫の吸血は、植物の液体を吸い取るために刺して吸う口器から変化した能力だと考えられていますが、昆虫の化石記録には欠落があるため、吸血の進化について研究することは困難でした。レバノンの琥珀からの発見は、さまざまな研究の発展に寄与することが期待されています。

パリ国立自然史博物館のアンドレ・ネル氏は、「分子年代測定によると、カ科はジュラ紀に出現したとされていましたが、これまでの最古の記録は白亜紀中期のものでした。レバノンの琥珀はこれまで見つかっていたものより3000万年古い白亜紀初期のものであり、蚊がより古くに誕生していたことがわかります」と発見の重要性を述べています。また今回の発見を受けて、産卵をしないオスがなぜ吸血行動をとっていたのかという点や、なぜ時代を経て吸血口器が存在しなくなったのかという点について、今後の研究課題として取り組んでいきたいとネル氏は語りました。

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in サイエンス,   生き物, Posted by log1e_dh

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