Flame Retardant Exposure in Vehicles Is Influenced by Use in Seat Foam and Temperature | Environmental Science & Technology
https://pubs.acs.org/doi/10.1021/acs.est.3c10440
Study: You’re Breathing Potential Carcinogens Inside Your Car - Green Science Policy Institute
https://greensciencepolicy.org/news-events/press-releases/study-youre-breathing-potential-carcinogens-inside-your-car
A Serious Hidden Risk Is Built Into Virtually Every Car, Scientists Warn : ScienceAlert
https://www.sciencealert.com/a-serious-hidden-risk-is-built-into-virtually-every-car-scientists-warn
アメリカでは運輸省道路交通安全局(NHTSA)が1970年代に導入した安全規則に基づき、火災を防ぐ目的で自動車のシートに難燃性の材料を添加することが求められています。しかし、これらの難燃性材料は発がん性などを含んでいることがあり、防火上の利点も明確ではないとのこと。
そこで研究チームは、2015年以降に製造された自動車に乗るアメリカの被験者101人を募集し、バックミラーにシリコンサンプラーを7日間吊るしてもらい、車内に漂う化学物質を分析する研究を2~5月に行いました。約半数の被験者には7~8月にもシリコンサンプラーを送り同様のテストを行ってもらったほか、車両の座席から採取したシートフォームのサンプル分析も行われました。
なお、分析対象となった自動車のうちガソリン車は49台、電気自動車は26台、ハイブリッド車は26台でした。製造国の内訳はアメリカが39台、日本が24台、メキシコが8台、ドイツが7台、韓国が5台、カナダが4台、その他および不明が14台でした。
研究の結果、分析した自動車の99%の空気中から、潜在的な発がん性物質として調査されている「リン酸トリス(1-クロロ-2-プロピル」(TCIPP)という物質が検出されました。TCIPPは家具や繊維製品にも難燃性材料として用いられることが多く、車両のシートフォームから検出された主要な難燃性材料でもありました。
また、「リン酸トリス(1 3-ジクロロ-2-プロピル)」(TDCPP)や「リン酸トリス(2-クロロエチル)」(TCEP)など、追加の有機リン酸エステル系の難燃性材料も検出されました。これらの難燃性材料は神経系や生殖系にも害を及ぼす可能性があるとみられています。
これらの潜在的に有害な化学物質は、特に気温が高い時期に空気中へ漏れ出すことが多いこともわかりました。研究チームによると、夏は冬に比べて空気中の化学物質濃度が2~5倍になったとのことです。
論文の筆頭著者であるデューク大学のレベッカ・ホーン氏は、「私たちの調査では、自動車の内装材が有害な化学物質を車内の空気中に放出していることがわかりました。平均的なドライバーが毎日約1時間を車内で過ごすことを考えると、これは公衆衛生上の重大な問題です。特に通勤時間が長いドライバーや、大人より多くの空気を吸っている子どもの同乗者にとっては深刻です」とコメントしています。
国際消防士協会のパトリック・モリソン氏は、難燃性材料が消火活動に当たる消防士のがん発症率を高めている可能性があると指摘。「これらの有害な化学物質を製品に詰めても、ほとんどの用途で火災を防ぐことはできません。代わりに犠牲者や、特に消防士や救急隊員にとって、火災の煙が増えてより有毒なものになります。NHTSAには、車内に難燃性化学物質を置かなくても満たせるよう、可燃性基準を更新するように要請します」と述べました。