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StarlinkのライバルAstranisが50Gbpsの爆速次世代インターネット通信を可能にする人工衛星「Astranis Omega」を発表


アメリカの衛星通信企業であるAstranisが2024年4月10日に、50Gbps以上のスループットを誇る衛星ブロードバンドを手頃な価格で提供する「Astranis Omega」を2026年にローンチさせる計画を発表しました。

Introducing: Astranis Omega
https://www.astranis.com/news/introducing-astranis-omega

Small Astranis GEO broadband satellites are getting bigger - SpaceNews
https://spacenews.com/small-astranis-geo-broadband-satellites-are-getting-bigger/

Astranis unveils Omega ‘MicroGEO’ satellites for beaming dedicated broadband down from high orbit | TechCrunch
https://techcrunch.com/2024/04/10/astranis-unveils-omega-microgeo-satellites-for-beaming-dedicated-broadband-down-from-high-orbit/

カリフォルニア州サンフランシスコを拠点とするAstranisは、小型の静止軌道(GEO)衛星である「MicroGEO」によりアメリカ、メキシコ、アルゼンチン、フィリピン、タイなどに衛星通信サービスを提供している企業です。


Astranisの共同創設者兼CEOであるジョン・ゲドマルク氏は今回、食洗機サイズで重さ約400kgほどのMicroGEOよりわずかに大型化した約600kgの人工衛星により、通信速度を10Gbps前後から一気に50Gbpsまで引き上げる「Astranis Omega」を発表しました。

現行の衛星は燃料と酸化剤を燃焼させる化学推進と、電気エネルギーで推進剤を噴射する電気推進のハイブリッドで運用されていますが、Omegaは電気推進のみとすることで設計寿命を10年近くに延長し、軌道上での操縦性を向上させる予定とのことです。


航空宇宙産業の報道に特化したニュースサイト・SpaceNewsによると、従来のブロードバンド衛星は大きさがスクールバスほどのサイズで、重さも数千kgになるのが一般的とのこと。例えば、高速衛星ブロードバンドサービスを手がけるViasatの小型衛星コンステレーションはスループットが1000Gbpsですが、その分衛星も巨大で重さは6000kgに達します。

一方、MicroGEOをはじめとするAstranisの人工衛星は小型なのが売りで、これにより打ち上げや運用上のコストを低く抑えられます。また、IT系ニュースサイトのTechCrunchは、小型の人工衛星には位置の特定や追跡が難しく攻撃を受けにくいという強みがあることから、「Astranisが民生用と軍用の両用技術としての用途を視野に入れているのは明らかです」と指摘しました。


顧客専用の衛星を用意するという特色も、Astranisの差別化に一役買っています。例えば、一部の国は独自の通信衛星を保有していますが、費用は膨大な国防予算によりまかなわれているため、私企業にはそのような資本を用意することは困難です。

これに対し、Astranisは前払いもしくは月額料金で「サービスとしての衛星(satellite as a service)」を提供することで、1基の衛星を完全に、もしくは部分的に単一の顧客に割り当てます。

ゲドマルク氏は、Omegaに興味を示している企業名の公表を拒否しましたが、広い地域にわたって株式を保有し、安全な衛星データを大量に必要とする「エネルギー・石油・ガス関連企業」が売り込み先のひとつであると示唆しました。

ゲドマルク氏はまた、バイデン政権の2025年度予算要求に、2年間で5億5800万ドル(約853億円)を投じてKaバンドとXバンドの小型衛星から成る静止通信コンステレーションを拡大させるプログラム「Protected Tactical SATCOM-Global(PTS-G)」が盛り込まれていることを指摘した上で、「商業用と軍事用のKaバンドを使用する両用衛星と、Xバンドの軍事専用衛星の2バージョンの開発を進めています」と話しました。


Astranisは、2025年に最初のOmega衛星を完成させ、2026年に6基の衛星を軌道上に投入する計画です。その後は、生産のペースに応じて最大で年間24基を打ち上げる予定としています。

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in ハードウェア, Posted by log1l_ks

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