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第二次世界大戦中に全米の新聞や雑誌は誤情報をチェックする「デマクリニック」を展開してばかばかしいデマと戦った


SNSが普及した現代において、フェイクニュースや誤情報はひとたび公開されると一瞬に広がってしまい、一定数の人がそういった偽の情報に踊らされてしまうことがよくわります。第二次世界大戦時のアメリカでも、多くのデマが出回ったため、これを取り締まるための「デマクリニック(rumor clinics)」という取り組みが存在したと、科学や歴史に関するブログ・Smithsonian Magazineが解説しています。

World War II 'Rumor Clinics' Helped America Battle Wild Gossip | History | Smithsonian Magazine
https://www.smithsonianmag.com/history/world-war-ii-rumor-clinics-helped-america-battle-wild-gossip-180983883/


第二次世界大戦中、アメリカではドイツ、イタリア、日本などの敵国の工作員だけでなく、アメリカ国民自身によって流布されたデマが大きな問題となりました。これらのデマは、戦争への支持を弱め、人種的・宗教的な対立を煽るものでした。当時はインターネットやソーシャルメディアがない時代でしたが、デマは口コミで広がっていきました。

例えば、「クイーン・メリー号に乗せられた黒人兵士が自殺任務に送られている」「ユダヤ人兵士は海外派遣を免除されている」といったデマが流れました。また、「戦時菜園の余った野菜を破棄するように指示されている」「戦時債券は償還されない」「献血は不衛生であり、血液の無駄遣いだ」「アラスカ帰りの兵士は脳が凍っている」「大統領選挙の中止」などというデマも多数あったとのこと。


さらに、エレノア・ルーズベルト大統領夫人に関するデマも流布しています。「エレノア・クラブ」と呼ばれるこのデマは、夫人が黒人家事労働者にストライキを呼びかけ、白人雇用主に家事をさせようとしているというものでした。この「エレノア・クラブ」はFBIが捜査を行い、司法長官が公に否定するほど広まったといいます。

これらのデマの流布に対抗するため、1942年2月、活動家のフランシス・スウィーニーがボストン・ヘラルド紙に相談。ハーバード大学心理学者ゴードン・オルポートの提案で「デマクリニック(rumor clinics)」を開設し、デマの真偽を調査・報道する運動が始まりました。これが全米に広がり、40以上の新聞や雑誌が同様の取り組みを行いました。


デマクリニックでは、読者から寄せられたデマを収集し、記者や地域のボランティアで構成される「デマ監視員」が事実関係を確認。調査結果は紙面の一面などで公表されました。


オルポートらは、1942年夏に収集された1,000件のデマを分析し、65.9%が人種的・政治的な対立を煽って分断を狙う「分断系」、25.4%が不安をあおる「恐怖系」、2%が願望を反映した「願望系」に分類されることを示しました。また、デマが広がるには、話題の重要性とあいまいさを掛け合わせた値が関係するとの理論も提唱されています。

そして第二次世界大戦が終結した後も、デマクリニックの講演会や、1960年代末の人種間緊張期におけるデマ対策ホットラインの設置など、類似の取り組みが全米で行われました。

Smithsonian Magazineは「現代では、情報の流れや政治文化が大きく変化したため、当時と同じ方法は通用しないでしょう。それでも、人間の本質は変わらず、事実無根の情報を信じ込む人は今後もいるはずです。メディアだけでなく、社会全体でデマへの対処を考えていく必要があります」と述べています。

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in メモ, Posted by log1i_yk

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