サイエンス

たばこ会社がアメリカでジャンクフードを普及させたとの指摘


アメリカではジャンクフードと呼ばれる、脂肪や塩分などが組み合わさった嗜好(しこう)性の高い食品が人気です。アメリカ・カンザス大学の研究で、1980年代にアメリカのたばこ会社が所有する食品ブランドがジャンクフードを消費者に広めたことが指摘されています。

US tobacco companies selectively disseminated hyper‐palatable foods into the US food system: Empirical evidence and current implications - Fazzino - 2024 - Addiction - Wiley Online Library
https://onlinelibrary.wiley.com/doi/10.1111/add.16332

Big Tobacco’s Legacy: Pushing Hyperpalatable Foods in America - Neuroscience News
https://neurosciencenews.com/hyperpalatable-foods-big-tobacco-23906/


アメリカの大手たばこ会社であるフィリップ・モリスR.J.レイノルズは、1988年から2001年にかけてアメリカの食品産業に多額の投資を行い、クラフトフーヅ・インクナビスコなどの買収を行いました。

カンザス大学心理学部助教授のテラ・ファジーノ氏は「たばこ会社が保有していた食品会社において、過度に嗜好性の高い食品(HPF)が数多く開発され、その結果、アメリカの食品市場にたばこ会社による影響が大きく及んでいるのではないか」と推測しました。

HPFとは、ジャンクフードも呼ばれる脂肪や糖分、塩分、炭水化物などが多く含まれる食品で、中毒性があると考えられています。また、ファジーノ氏による以前の研究で、アメリカの食糧供給における68%がHPFに該当することが示されており、アメリカにおける食料供給源の大部分がこのHPFに分類されることがわかっています。


研究チームは、ファジーノ氏の過去の論文を基に、たばこ会社が保有していた食品会社が開発した105種の食品と、それ以外の食品587種を調査しました。その結果、たばこ会社の食品会社が開発した食品は、それ以外の食品に比べて、脂肪と塩分において嗜好性が高い食品である可能性が29%高く、炭水化物と塩分における嗜好性が高い可能性が80%も高いことが示されました。

ファジーノ氏は、「たばこ会社がなぜ嗜好性の高い食品を数多く開発したのかについて、このデータからはわかりません。しかし、たばこ会社がアメリカの食品市場をリードしていた1980年代から2000年代半ばにかけて、嗜好性の高い食品の開発と販売に関与していたことは紛れもない事実です」と指摘しています。


実際に、アメリカ疾病管理予防センター(CDC)は、肥満に伴う心臓病や脳卒中、糖尿病のリスクが高まる「メタボリックシンドローム」の割合が、アメリカ国民における全てのグループにおいて1988年から2012年にかけて上昇したことが報告されています。

2000年代初頭から2000年代半ばにかけて、たばこ会社はアメリカの食品市場から撤退しましたが、依然として現代でもタバコ会社の影響は残されています。カンザス大学の研究では、脂肪や塩分、炭水化物が多く含まれる嗜好性の高い食品の入手難易度は非常に低く、これらの食品がアメリカ人の食生活の主力になっていることが示されています。


この研究には関与していないミシガン大学の心理学教授であるアシュリー・ギアハート氏は「あらゆる中毒性を持つ食品は、自然から取りだしたものをより満足感が得られるように変化、加工、精製させたものです。しかし、私たちはこれらの食品を自然由来のもののように扱っています。実際のところ、これらの食品は大手たばこ会社からもたらされた食品なのです」と語りました。

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in サイエンス,   , Posted by log1r_ut

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