NVIDIAがCUDAを他のハードウェア上で実行することを禁止
NVIDIAが、GPU向けのコンピューティングプラットフォームとして提供している「CUDA」のソフトウェア利用許諾契約(EULA)の中で、翻訳レイヤーを通じてNVIDIA以外のハードウェアプラットフォームで実行することを禁止していることがわかりました。もともとこの条項はNVIDIAのサイト上で公開されているオンライン版のEULAには含まれていましたが、インストールしたCUDAのドキュメントにも含まれるようになったとのことです。
License Agreement for NVIDIA Software Development Kits — EULA
https://docs.nvidia.com/cuda/eula/index.html
Nvidia bans using translation layers for CUDA software — previously the prohibition was only listed in the online EULA, now included in installed files [Updated] | Tom's Hardware
https://www.tomshardware.com/pc-components/gpus/nvidia-bans-using-translation-layers-for-cuda-software-to-run-on-other-chips-new-restriction-apparently-targets-zluda-and-some-chinese-gpu-makers
A lone developer just open sourced a tool that could bring an end to Nvidia's AI hegemony — AMD financed it for months but abruptly ended its support. Nobody knows why | TechRadar : r/StableDiffusion
https://www.reddit.com/r/StableDiffusion/comments/1ayfb66/comment/krx40h7/
問題となっている条項は、EULAの第1条第2項「制限」の中の小項目8番目です。
原文は以下の通り。
You may not reverse engineer, decompile or disassemble any portion of the output generated using SDK elements for the purpose of translating such output artifacts to target a non-NVIDIA platform.
訳すると「ユーザーは、SDK要素を使用して生成された出力の一部を、NVIDIA以外のプラットフォームをターゲットとする出力アーティファクトに変換する目的で、リバースエンジニアリング、逆コンパイル、または逆アセンブルすることはできません」となります。
ニュースサイト・Tom's Hardwareによれば、この文言はCUDAのバージョン11.4や11.5のドキュメントには含まれておらず、バージョン11.6から含まれるようになったものとみられます。
CUDAはNVIDIAが自社のGPU向けとして公開しているコンピューティングプラットフォームで、NVIDIAのハードウェアと組み合わせることで高い効率を発揮します。しかし、NVIDIAと競合するプラットフォームでCUDAを実行するユーザーもいます。
Tom's Hardwareによれば、CUDAを他プラットフォームで使うための方法は「コードを再コンパイルする」「翻訳レイヤーを使用する」の2つがあり、特に「ZLUDA」のような翻訳レイヤーを使用するのが簡単だとのこと。
中国の複数のGPUメーカーは、CUDAを実行していることを認めています。
たとえば、登臨科技(Denglin Technology)は「CUDAやOpenCLのようなプログラミングモデルと互換性のあるコンピューターアーキテクチャ」を特徴とするプロセッサを開発しています。NVIDIAのGPUのリバースエンジニアリングは難しいため、何らかの翻訳レイヤーを扱っているものとTom's Hardwareは推測しています。
また、摩爾線程(Moore Threads)もCUDAのコードをGPUで動作させるために設計された「MUSIFY」という翻訳ツールを扱っていることがわかっています。なお、MUSIFYが翻訳レイヤーに属するかどうかはわからないとのこと。
Tom's Hardwareは、NVIDIAによるCUDAの他プラットフォームでの使用禁止が、これら中国メーカーらの動きに反応したものなのか、将来的な開発へ先回りして対応したものなのかはわからないと記しています。
ただ、翻訳レイヤーの使用は、特にAIアプリケーションにおいて、高速コンピューティング分野でNVIDIAの覇権を脅かすものになるとみられるため、NVIDIAが禁止に動く推進力になるとTom's Hardwareは予測しています。
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