サイエンス

乳糖不耐症の人が牛乳を飲むと2型糖尿病のリスクが30%も低下することが判明、消化されない乳糖が善玉菌のごはんになっているのかもと専門家


牛乳を飲む人の健康と遺伝子に着目した研究により、牛乳に含まれる乳糖を分解する酵素が作られない遺伝子変異を持つ人は、牛乳を飲むと2型糖尿病のリスクが低下することがわかりました。専門家は、分解されずに腸に残った乳糖が腸内細菌の栄養源となり、これによって腸内細菌のバランスが変化したことで、生活習慣病のリスクに肯定的な影響が出たのではないかとしています。

Variant of the lactase LCT gene explains association between milk intake and incident type 2 diabetes | Nature Metabolism
https://www.nature.com/articles/s42255-023-00961-1

Increased milk intake associated with a decreased risk of type 2 diabetes in adults who do not produce lactase
https://www.news-medical.net/news/20240122/Increased-milk-intake-associated-with-a-decreased-risk-of-type-2-diabetes-in-adults-who-do-not-produce-lactase.aspx

Lower type 2 diabetes risk seen in lactose intolerant milk drinkers
https://newatlas.com/health-wellbeing/lower-diabetes-risk-milk-drinkers/

For people with certain gene variant, drinking milk may reduce risk of type 2 diabetes
https://medicalxpress.com/news/2024-01-people-gene-variant-diabetes.html

expert reaction to study of lactose intolerance, milk intake and type 2 diabetes | Science Media Centre
https://www.sciencemediacentre.org/expert-reaction-to-study-of-lactose-intolerance-milk-intake-and-type-2-diabetes/

牛乳と2型糖尿病のリスクに関する研究の結果はまちまちで、生活習慣病の予防に役立つとする論文もあれば無関係とする論文もあり、中にはむしろ悪影響だという研究結果も報告されています。牛乳が2型糖尿病の予防に肯定的な影響を与えるとする研究の例としては、朝食で牛乳を摂取するとその後の血糖値の上昇が抑えられ、食欲も抑制されることを示した2018年の研究が挙げられます。

朝食に牛乳を飲むと朝食後だけでなく昼食後も血糖値が低くなるという研究結果 - GIGAZINE


「研究結果のバラつきは個人のDNAの違いによるのではないか」と考えたアメリカと中国の研究チームは、まず1万2653人のヒスパニックおよびラテン系アメリカ人を対象に、日々の牛乳の摂取量と遺伝子の関係を分析するゲノムワイド関連解析(GWAS)を行いました。

ほとんどの人は、子どものころは乳糖を分解するラクターゼという酵素を作ることができますが、ラクターゼ遺伝子(LTC)に変異がある一部の人は大人になるとラクターゼを作ることができない「ラクターゼ非持続性(LNP)」、いわゆる乳糖不耐症になります。特に、ヒスパニック系では50%~80%、黒人では60~80%、日本人を含むアジア人に至っては95~100%がLNPだと(PDFファイル)いわれています

遺伝子の分析の結果、定期的に牛乳を摂取するLNPの人は2型糖尿病のリスクが30%低いことが判明しました。その一方で、定期的に牛乳を摂取していても、遺伝子変異を持たない人の場合は2型糖尿病のリスクに変化が出ないこともわかりました。


次に、研究チームがイギリスに住む16万人の人を対象としたUK Biobankのデータを分析したところ、同様の結果が得られ、最初の分析の結果が裏付けられたとのこと。

また、さらなる分析により牛乳の摂取量の増加が腸内細菌叢(そう)の変化、具体的にはビフィズス菌の増加やプレボテラ属の菌の減少などと関係していることも突き止められました。

この研究には直接携わっていないオランダ・ワーゲニンゲン大学のLonneke Janssen Duijghuijsen氏によると、LNPだからといって必ずしも乳糖を消費することが不可能なわけではないとのこと。乳糖に対する耐性には個人差がありますが、これまでの研究では「LNPの人でも1日当たり12gの乳糖であれば乳糖不耐症の症状に悩まされる心配はほとんどない」とされています。乳糖12gというと、大きめのコップ1杯の牛乳に相当します。


Duijghuijsen氏は、「LNPの人は小腸でラクターゼ酵素が作られないため、牛乳に含まれる乳糖を消化できません。その結果、小腸で消化されずに残った乳糖が腸内細菌のエネルギー源となります」と話しました。このプロセスは、Duijghuijsen氏らの研究チームが2023年12月に発表した別の研究でも明らかになっているとのこと。

とはいえ、この研究結果は「牛乳を飲むと腸内細菌のバランスが改善されて2型糖尿病が予防される」というような因果関係を証明したものではありません。

そのため、Duijghuijsen氏は「私たちの研究は、特定のグループの人々による牛乳の摂取が腸内細菌叢とその代謝物に及ぼす潜在的な影響と、特定の健康上の結果との潜在的な関係を強調するものであって、明確な食事の推奨事項を提供するものではありません」と述べて、牛乳が生活習慣病にもたらすメリットについて明らかにするにはさらなる研究が必要だと指摘しました。

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in サイエンス,   , Posted by log1l_ks

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