「牛乳を飲めない人」が牛乳の9つの栄養を効率的に摂取する方法
牛乳には、丈夫な骨に欠かせないカルシウムや体作りに重要なタンパク質が豊富に含まれています。しかし、日本人の3人に2人が牛乳を飲むと胃腸の調子が悪くなる乳糖不耐症だと言われており、牛乳を飲みたくても飲めない人は少なくありません。そこで、牛乳に豊富な栄養をほかの栄養源で補うとしたらどんな食べ物がいいのかについて、専門家が解説しました。
Don't drink milk? Here's how to get enough calcium and other nutrients
https://theconversation.com/dont-drink-milk-heres-how-to-get-enough-calcium-and-other-nutrients-165466
オーストラリア・ニューカッスル大学の栄養学者であるクレア・コリンズ氏によると、牛乳の風味が苦手という場合や動物福祉などの信条だけでなく、健康上の理由で牛乳を飲めない人も少なくないとのこと。その代表例が、牛乳に含まれる乳糖を分解するラクターゼ酵素が少ないか、または全く持たないことが原因で牛乳を飲むと体調が悪くなる乳糖不耐症です。
また、1歳児の約0.5~3%が発症すると言われている牛乳アレルギーで牛乳を飲めない人もいるほか、牛乳に含まれるホエイタンパク質の作用でニキビが発生しやすくなることを理由に、牛乳を避けている人もいます。
しかし、牛乳はカルシウム・タンパク質・リン・カリウム・亜鉛・ヨウ素・ビタミンA・ビタミンB2・ビタミンB12など健康を保つ上で欠かせない栄養を豊富に含む食べ物です。そこでコリンズ氏は、牛乳を飲まなくてもこれらの栄養素をとるにはどんな食べ物を選べばいいのかについて、以下のようにまとめました。
◆カルシウム
カルシウムはチーズやヨーグルトなどの乳製品のほか、豆腐・骨付きの魚の缶詰・緑黄色野菜・ナッツ類・種子などの食材にも含まれています。また、豆乳やライスミルクをはじめとする代替ミルクや朝食シリアルなどの中には、カルシウムが添加されている食品もあります。
牛乳に含まれるカルシウムは1杯250ml当たり約300mgで、牛乳を飲まずにこれと同じ量のカルシウムを摂取しようと思うと、以下の分量の食材をとる必要があるとのこと。
・ヨーグルト200g
・カルシウムが強化された植物性ミルク250ml
・骨付きのサケ缶100g
・木綿豆腐100g
・アーモンド115g
牛乳1杯またはこれに相当するカルシウムを含む食品を「1サーブ」とすると、1日の摂取量の目安は以下の通り。
・子どもは年齢と性別に応じて1日1~3.5サーブ
・19~50歳の女性は1日2.5サーブ、50歳以上は4サーブ
・19~70歳の男性は1日2.5サーブ、70歳以上は3.5サーブ
コリンズ氏によると、基本的に乳製品以外の食品のカルシウムは吸収効率があまりよくないので、乳製品を食べずに骨の健康を保つには、カルシウムを含む食品を多めにとることを意識する必要があるとのこと。参考までに、厚生労働省は、日本人の成人のカルシウム必要量は男性では1日当たり700~800mg、女性では650mgとしています。
◆タンパク質
タンパク質は成長や肉体の修復に必要なほか、酵素や抗体などの材料にもなります。牛乳以外のタンパク質が豊富な食品は、肉・魚・卵・ナッツ・種子・豆類・ドライビーンズ・豆腐です。
◆リン
リンは骨や歯の形成に必要なほか、成長や体の修復をサポートしたり、エネルギーを生み出したりするのにも使われます。リンが豊富な食材は、肉・魚介類・ナッツ・種子・全粒粉の穀物・ドライビーンズ・レンズ豆です。
◆カリウム
カリウムは、細胞や神経を活性化させ、筋肉の働きや血圧の調節などの助けとなります。カリウムが豊富な食材は、ほうれん草やケールなどの葉物野菜・にんじん・じゃがいも・さつまいも・かぼちゃ・トマト・キュウリ・ズッキーニ・ナス・豆類(特にエンドウ豆)・アボカド・リンゴ・ミカン・バナナなどです。
◆亜鉛
亜鉛は免疫の働きや傷の治癒をサポートするほか、味覚や嗅覚など人体の重要な機能を保つ上でも必須なミネラルです。亜鉛が豊富な食材は、赤身肉・鶏肉・魚介類(特にカキ)・豆類・ナッツ・全粒粉の穀物です。
◆ヨウ素
ヨウ素は正常な体の発育や脳の発達に必要なほか、甲状腺で成長や代謝に必要なホルモンであるサイロキシンが作られる際にも用いられます。ヨウ素が豊富な食材は、魚やエビなどの魚介類やヨードを添加した食塩などです。なお、厚生労働省によると昆布など海藻類にも豊富とのことです。
◆ビタミンA
ビタミンAは、体の免疫に重要な抗体の産生や、肺や腸の健康維持、目の視力の維持などに重要です。ビタミンAが豊富な食材は、卵・脂ののった魚・ナッツ類・種子です。また、体内では緑黄色野菜などに豊富なβ-カロテンからビタミンAを合成することもできます。
◆ビタミンB2
リボフラビンと呼ばれることもあるビタミンB2は、食べ物からエネルギーを得たり、粘膜や皮膚の健康を維持したりするのに使われます。ビタミンB2が豊富な食事は、全粒粉のパンやシリアル・卵白・葉物野菜・キノコ類・肉類です。
◆ビタミンB12
コバラミンと呼ばれることもあるビタミンB12は、赤血球やDNA、神経を保護する物質であるミエリン、脳の活動に必要な神経伝達物質の合成などに必要な栄養素です。ビタミンB12が豊富な食材は、肉類や卵をはじめとする大半の動物性食品・ビタミンB12が強化された植物性ミルクです。
・関連記事
朝食に牛乳を飲むと朝食後だけでなく昼食後も血糖値が低くなるという研究結果 - GIGAZINE
ミルクは体にいいものなのか悪いものなのか、どちらなのか? - GIGAZINE
人間は「牛乳を飲むとお腹を下してしまう」時代から牛乳を愛していたという証拠が見つかる - GIGAZINE
乳牛を利用せずに「本物と分子レベルで同じタンパク質を持つ乳製品」を生産するスタートアップとは? - GIGAZINE
「温かい牛乳を飲むと寝付きがよくなる」という説は本当なのか? - GIGAZINE
・関連コンテンツ