サイエンス

消費者は食品の内容量を減らす「シュリンクフレーション」より品質を低下させる「スキンプフレーション」を嫌う


スーパーやコンビニで食料品を購入した際、「前は同じ値段で4個入りだったのに3個入りに減ってる」「リニューアルしておいしくなくなった」といった変化に気付くことがあります。コスト上昇に対応する企業の戦略と消費者の反応について調べた実験で、消費者は価格据え置きの場合に「内容量が減る」よりも、「品質が低下する」のを嫌う傾向があることがわかりました。

Skimpflation Penalty: Decreases in Product Quality Trigger Stronger Consumer Reactions than Decreases in Size or Increases in Price | Journal of Consumer Research | Oxford Academic
https://academic.oup.com/jcr/advance-article/doi/10.1093/jcr/ucag019/8725346

Shoppers hate skimpflation more than shrinkflation, new research finds
https://www.scienceofmoney.org/why-quietly-cutting-quality-backfires-worse-than-raising-prices-or-shrinking-pac-996/

食品企業が原材料価格の高騰を補う戦略としては、単純に商品価格を値上げするほかに、値段を据え置きで内容量を減らすシュリンクフレーションや、値段はそのままに品質を低下させるスキンプフレーションなどがあります。「ジュースの内容量が500mlから450mlに減った」「クッキーのサイズが小さくなった」という変化はシュリンクフレーションで、「カレーの味が変わった」「チョコレートのカカオ含有量が下がった」などはスキンプフレーションです。

価格の引き上げとシュリンクフレーションの比較を行ったこれまでの研究では、消費者はシュリンクフレーションを価格引き上げよりも卑劣で不公平なものだと考えていると示されました。しかし、スキンプフレーションを含めた3つのアプローチすべてを直接比較した研究はなかったとのこと。


そこでスペインのESADEビジネススクールでマーケティング准教授を務めるイオアンニス・エヴァンゲリディス氏は、さまざまな実験を通じて価格の引き上げとシュリンクフレーション、そしてスキンプフレーションに対する消費者の反応を調査しました。

既存の理論ではこれら3つの戦略に対する消費者の反応ついて、さまざまな予測が立てられています。ある研究では、「企業が実際のコスト圧力に直面している場合、消費者は価格の引き上げを受け入れる」と示唆されており、別の研究では「消費者は欺瞞(ぎまん)的な戦略を嫌う」と示唆されています。また、製品の構成要素を変えるスキンプフレーションと量を減らすシュリンクフレーションでは、消費者が受け取る感覚が異なるとの予測もありました。

エヴァンゲリディス氏はオンラインプラットフォームを通じて募集した被験者に対し、「コスト直面に応じた企業が直面するシナリオ」を読ませる実験を複数行いました。これらのシナリオでは、企業が「価格を引き上げる」「パッケージを小さくする」「品質を低下させる」のいずれかを選択したことが示され、被験者はその変更が公平か不公平かを判断したり、その製品を購入する可能性を評価したりしました。


最初の調査では1502人の被験者に対し、「チョコレートバー」と「ストリーミングサービス」というまったく異なる2つの製品についてのシナリオが提示されました。その結果、不公平だと回答した被験者はチョコレートバーの価格が引き上げられた時は16%、チョコレートバーのサイズが小さくされた時は46%、チョコレートの品質が下げられた時は76%に達しました。ストリーミングサービスの場合、不公平だと回答した割合はチョコレートバーほど高くなかったものの、やはり品質低下が最も不公平だと評価されました。

追跡調査では、オリーブオイルスプレッド・オレンジジュース・洗濯洗剤・トイレットペーパーでも同様の傾向が確認されました。エヴァンゲリディス氏はこれらの傾向がみられた理由として、価格の変更は消費者にとってわかりやすい一方、「チョコレートバーのカカオ含有量を85%から70%に下げる」といった変更はわかりにくいため、透明性が低く欺瞞的な戦略と見なされるのではないかと考えたとのこと。

企業による欺瞞が被験者の判断に影響するのかどうかを調べるため、別の実験では企業や小売業者が変更内容を消費者に明示的に伝えるかどうかを操作しました。企業が自社の行動を公に開示した場合、3つの戦略の公平性に関する違いは大幅に縮小しました。透明性が低い場合は被験者の67%が値上げを不公平だと判断した一方、透明性が高い場合は不公平だとみなされる割合は21%にまで低下したと報告されています。

続いて「品質の低下によって製品自体が別物に感じられてしまったのではないか」という仮説を検証するため、エヴァンゲリディス氏はトイレットペーパーを例にした実験を行いました。企業がトイレットペーパーの紙の品質を下げた場合、被験者の70%が不公平だと感じた一方、「トイレットペーパーのパッケージ」の品質を下げた場合、不公平だと回答する割合はわずか26%にとどまりました。パッケージの品質低下はシュリンクフレーションよりも不公平感が少なく、製品周辺の品質削減は製品そのものと同じような反発を引き起こさなかったことを意味しています。

また、コスト増加による値上げは受け入れられても、企業が利益を増やすためにコスト増加分を超えて値上げする「グリードフレーション」は受け入れられない可能性があります。そこで企業が直面するコスト増加分を「5%」「10%」「15%」に調整し、企業による値上げ・シュリンクフレーション・スキンプフレーションによるコスト調整割合を「10%」に固定して調査を実施。その結果、コスト調整割合がコスト増加分を上回った場合、すべての戦略において約4分の3の被験者が不公平だと回答しました。つまり、消費者はコスト上昇分を相殺する調整は受け入れる一方、コスト上昇分を上回る調整は非難したというわけです。


被験者に「実際に商品を購入する可能性」について尋ねたところ、値上げされた製品では7点満点中「4.20点」で、シュリンクフレーションされた製品では「4.27点」だった一方、スキンプフレーションされた製品では「3.01点」にとどまりました。被験者は製品の品質が低下した場合、その製品に対する購入意欲を一気に失うことが示されています。

また、エヴァンゲリディス氏は「被験者のうち一部が実際に商品を受け取れる」という条件で、被験者がどの調整が行われたチョコレートバーやオレンジジュースを選ぶかも調べています。オレンジジュースの場合、値上げ版を選んだ被験者は39%、容量減少版を選んだ被験者は37%だったのに対し、品質低下版を選んだ被験者は25%にとどまりました。

最後の実験では洗濯洗剤を例にして、半数の被験者には「新たな変更で有効成分濃度は低下したものの、1回の洗濯で使う量を増やせば以前と同じ効果が得られる」と説明して、製品への購入意欲を尋ねました。購入意欲はシュリンクフレーションされた製品では61%だったのに対し、被験者が「品質低下は補える」と認識していた場合は41%、「品質低下は補えない」と認識していた場合は32%でした。つまり、被験者が何らかの方法で以前の体験を取り戻せると思っていた場合、スキンプフレーションによる低評価はやや小さくなったというわけです。

なお、今回の研究は「消費者にすべての変更内容が伝えられた状態」での反応を調べたものである点に注意が必要です。価格の引き上げはすぐに気付かれる可能性が高いですが、企業がこっそりシュリンクフレーションやスキンプフレーションを行った場合、消費者は変化に気付かないまま購入し続ける可能性があります。

とはいえ、メディアの報道や口コミによって秘密裏に行われていたシュリンクフレーションやスキンプフレーションが明るみに出た場合、消費者からより強い反発があるかもしれません。エヴァンゲリディス氏は、「今回の結果はコスト上昇に直面している企業にとって、消費者が変化に気付いた場合、製品の品質を落とすことは大きなリスクを伴う可能性があることを示唆しています」と述べました。

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in サイエンス, Posted by log1h_ik

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