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日常のささいな決断だけで疲れてしまうのはなぜなのか?どうすれば決断に伴うストレスを軽減できるのか?


人は日常生活のあらゆる局面でささいな決断を迫られており、「目覚ましのスヌーズを今すぐ止めて起きるか、もう少し眠るか」「ベッドから出るか、まだスマートフォンを触ってダラダラするか」「コーヒーを飲むか、それとも紅茶を飲むか」など、朝の短時間だけでいくつもの決断をしなくてはなりません。これらの小さな決断の積み重ねがなぜ自分を疲れさせてしまうのか、決断に伴うストレスを避けるにはどうすればいいのかについて、イギリス・サウサンプトン大学意思決定科学の教授を務めるYaniv Hanoch氏が解説しています。

Why everyday decisions feel so stressful – and what to do about it
https://theconversation.com/why-everyday-decisions-feel-so-stressful-and-what-to-do-about-it-200124


人生にとっては取るに足らない小さな決断でさえ人を疲れさせてしまう理由について、Hanoch氏は「第一に、選択肢を比較対照するのが難しいため、選択肢の膨大な数が私たちを圧倒することがあります」と指摘しています。

かつて経済学者らは、より多くの選択肢が提示されているほど人々にとって有益だという考えを支持してきました。ところが2000年に、アメリカの心理学者であるSheena Iyengar氏らはこの考えに異議を唱える研究結果を発表しました。

Iyengar氏らはスーパーマーケットでジャムの試食テーブルを設置し、テーブル上に6種類のフレーバーがある場合と、24種類のフレーバーがある場合で顧客の購入率を比較しました。その結果、6種類のフレーバーがあった場合は30%の顧客がジャムを購入しましたが、フレーバーが24種類に増えると購入率はわずか3%に低下することがわかったとのこと。


人があまりに豊富すぎる選択肢を目の前にすると不安になってしまう現象は、選択のパラドックスと呼ばれています。選択のパラドックスが生じる理由について、Hanoch氏は「人々は選択肢を適切に評価するための知見が不足しているか、不足していると信じています」と指摘しています。

これは単純に専門知識の不足だけでなく、指針となるべき目標が曖昧な場合でも生じます。たとえば、「もっと貯金する」という漠然とした目標だけを持っている人は、友人から「昼ご飯を食べに行こう」と誘われた時、誘いを受けるか否かを判断するための明確な基準を持っていません。目標にどれだけ固執するかが明確でない場合、選択に悩んでしまう可能性が高まるというわけです。

また、「デートに着ていく服装を決める」といった決断など、一見すると取るに足らないものの感情的には重要な決断も存在します。「各要因はストレスを生み出すのに十分ですが、すべての要因が組み合わさると決定に対する不安は増幅されます」とHanoch氏は述べました。


さらにHanoch氏は、「最大化」と「満足化」という2つの主要な意思決定戦略についても言及しています。「最大化」は最良の選択肢を見つけようとする傾向のことであり、一方の「満足化」は許容できる選択肢が見つかれば検討を終了するという傾向のことです。

いずれの意思決定戦略を採用するのかはその人の性格に左右されますが、アメリカの心理学者であるBarry Schwartz氏らの研究では、最大化を求める傾向と人生の満足感との間に負の関係があることが示されました。最大化を求める人々は何かを決断してから後悔する可能性が高かったそうで、Hanoch氏は「この理由についての説明の1つは、最大化を求める人々は常に『どうすれば良かったのか』『どうすればもっと良い決断ができたか』を思い悩んでいるというものです」と述べています。


Hanoch氏は日々の決断による疲労やストレスを軽減する方法として、さまざまな選択を習慣化することを推奨しています。Hanoch氏は、「習慣は考える必要性をなくします。習慣を身につけるために時間を投資することで、日常の決断を繰り返すことを止められます」と述べています。

意思決定戦略における「満足化」の概念を提唱したノーベル経済学賞受賞者のハーバート・サイモンは、人間の認知能力や注意力などは有限だと考えていたことから、満足化のアイデアを生み出したとのこと。何かを行動する前にあれこれ思い悩むと、それだけでストレスがたまり疲れるため、行動に移せなくなってしまう可能性があるそうです。

Hanoch氏は、「あなたは自分の認知的・感情的・肉体的なリソースをどのように投資するのかを決めなくてはなりません。『運動することを考えること』にリソースを投入すると、運動に必要なエネルギーを消費してしまう可能性があります。私たちの日々の決断に関して言えば、選択肢の数を減らすことはプロセスを容易にすることにつながります。Appleの共同創業者であるスティーブ・ジョブズは、ほぼ毎日同じような服装(ジーンズにタートルネック)を着ていたことで知られていますが、これは決断のプロセスを簡略化するためです」と述べ、習慣を身につけて選択肢を減らすことが、日々の決断に立ち向かうカギになると主張しました。

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in メモ, Posted by log1h_ik

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