定期的な運動習慣は記憶や学習をつかさどる脳領域の容積増加に関連しているという研究結果
日常的に運動することは心身にさまざまなメリットをもたらすことが知られています。1万人を超える被験者の脳を核磁気共鳴画像法(MRI)スキャンで調べた新たな研究では、ウォーキングなどの身体活動を定期的に行っている人は、重要な領域の脳容積が大きいことがわかりました。
Exercise-Related Physical Activity Relates to Brain Volumes in 10,125 Individuals - IOS Press
https://content.iospress.com/articles/journal-of-alzheimers-disease/jad230740
New Study Shows Exercise Can Boost Brain Health | IOS Press
https://www.iospress.com/news/new-study-shows-exercise-can-boost-brain-health
Regular Exercise Is Linked to Larger Brain Volume in Memory And Learning Regions : ScienceAlert
https://www.sciencealert.com/regular-exercise-is-linked-to-larger-brain-volume-in-memory-and-learning-regions
セントルイス・ワシントン大学とパシフィック神経科学研究所脳健康センターの研究チームは、全身MRIスキャンを提供する企業・PrenuvoのイメージングセンターがMRI撮影した1万125人分の脳スキャンデータを分析しました。
その結果、ウォーキングやランニング、スポーツといった何らかの身体活動を定期的に行っている人は、特定領域の脳の容積が大きいことがわかりました。運動している人ほど容積が大きかった領域には、人間の意思決定に関連している前頭葉や、記憶の保存や処理において重要な海馬などが含まれていたとのことです。
脳の容積が大きいことがそのまま認知機能が高いことを示すわけではないものの、容積の変化は認知能力の変化を示す指標として用いられます。論文の筆頭著者であるセントルイス・ワシントン大学のサイラス・ラジ准教授は、「私たちの研究は、体を動かすことが脳に良いという先行研究を支持しています。運動は認知症のリスクを下げるだけでなく、老化した時に重要となる重要な脳の大きさを維持するのにも役立つのです」と述べています。
また、脳の容積を大きくするのに必要な運動は、過度に激しかったり長時間だったりする必要はありませんでした。パシフィック神経科学研究所脳健康センターの神経科学者で論文の共著者でもあるデイヴィッド・メリル氏は、「1日4000歩未満の適度な運動でも、脳の健康に良い影響を与えることがわかりました。これはよく推奨される1日1万歩よりもはるかに少ない歩数であり、多くの人にとって達成可能な目標です」とコメントしています。
定期的な運動が脳の容積を大きくするメカニズムについては不明ですが、仮説としては「運動が脳を含む体内の血流を改善し、神経細胞を健康に保つタンパク質の濃度を上昇させる」というものが挙げられているとのことです。
人間は加齢と共に神経変性疾患を発症する可能性が高まりますが、脳の容積が大きいことでアルツハイマー病などに伴う認知能力の低下を遅らせられる可能性があります。また、「筋トレと有酸素運動の組み合わせが85歳以上の高齢者の認知能力を高める」という研究結果も報告されています。
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