IBMが従業員の功績に18万円を進呈する報奨プログラムをいきなり終了、未使用ポイント没収で社内に不満が噴出
アメリカのテクノロジー企業であるIBMが、特許の取得や論文の発表といった従業員の功績をたたえる報奨プログラムを終了したと、イギリスのニュースサイト・The Registerが報じました。IBMは代わりとなるプログラムを開始しましたが、未換金の旧プログラムのポイントが引き継がれないことから、従業員からは不満の声が上がっています。
IBM ends inventor reward program, cancels points for patents • The Register
https://www.theregister.com/2024/01/17/ibm_inventor_reward_program/
伝えられるところによると、IBMでは長年にわたり従業員のイノベーションを奨励するための「発明功労賞制度(Invention Achievement Award Plan)」が実施されてきたとのこと。これは、特許を出願したり、競合企業の特許への対抗となるような論文を発表した従業員にポイントを与え、ポイントが一定に達したら表彰したり現金を支給したりするプログラムです。
このプログラムに参加すると、特許を出願した際には3ポイント、特に価値が高い特許の場合は4ポイントが与えられ、合計12ポイントを獲得すると「プラトー」と呼ばれるレベルに達します。そして、このプラトーに達するたびに、従業員は報奨金として1200ドル(約18万円)がもらえるという仕組みです。
「発明者は12ポイントを獲得するごとに発明プラトーに達し、発明者がプラトーを達成するごとにIBMはその努力をたたえて1200ドルを払います」と、The Registerが閲覧したIBMの社内資料には書かれています。
しかし、IBMは2023年末でこのプログラムを廃止し、BluePointsという別のポイントシステムに切り替えました。
社内のFAQでIBMは、「従来の発明功労賞制度は2023年12月31日午前0時に終了します。これによりプラトー賞が廃止されるので、12月31日以前にプラトーレベルを達成していなければ賞の対象にならず、既存のプラトーポイントのうち未適用のものはBluePointsに変換されません」と説明しました。
報奨金の獲得に至っていない旧制度のポイントは没収されることになりましたが、ポイント獲得のための審査には数カ月かかるとのこと。そのため、制度の廃止を聞いた社員が急いで自分の成果を申請をしても、間に合わずに水の泡になってしまったようです。
突然の変更に、プログラムの利用者からは抗議の声が出ており、社内のSlackチャンネルには上層部への問い合わせが複数寄せられました。
ある従業員は変更の通知を引用して、「仕事の納品後に顧客が支払いスケジュールを一方的にキャンセルしてきたら許せますか?」と訴えたほか、また別の質問には「知的財産を開発するために通常業務以外の仕事をしていた従業員にこんな仕打ちをするのが妥当なのですか?」と書かれていたとのことです。
こうした問い合わせは、CEOの月例ミーティングに提出された質問の中で最も多くの賛成票を集めましたが、会社側は取り合いませんでした。
IBMはThe Registerからのコメントの要請に応じませんでしたが、ある元IBM社員は「私見ですが、元のプログラムはだいぶ前にバグを起こしていました。つまり、本物のイノベーションではなく形だけの点数稼ぎに報いるようになっていたわけです。元CEOのジニー・ロメッティ氏は、若手の功名心を刺激しようとこのプログラムを提唱して事態を悪化させてしまいました」と話して、制度の形骸化が廃止の理由だったのではないかとの見方を示しました。
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