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素晴らしいアイデアを生むための重要な要素とは?


技術系の記事を投稿するブログであるThe Generalistのマリオ・ガブリエレ氏が、イノベーションを生み出すアイデアを発想できる人材や方法、環境づくりについて研究した学術研究の中から、7つの研究をピックアップして解説しています。

Where Do Great Ideas Come From? | The Generalist
https://www.generalist.com/briefing/where-do-great-ideas-come-from


有名な経営学者のピーター・ドラッカーは、「アイデアは安価で豊富にあります。価値があるのは、それらのアイデアを行動に発展する状況に効果的に配置することです」という言葉を残しました。このような立場は学会やビジネス理論の業界全体で見られる一般的なものですが、ガブリエレ氏は「確かにアイデアは効果的な配置を必要とするものですが、アイデアがなければ配置するものもありません。アイデアはあらゆる進歩の種で、希少価値は年々高まっています」と述べています。実際に、スタンフォード大学が2018年に公開した論文(PDFファイル)では、「研究努力は大幅に増加しているが、研究生産性は急激に低下しており、アイデアを見つけるのは難しくなっている」ということが示されました。

アイデアの重要性とアイデアを生む難しさが高まる中で、どのようにすれば良いアイデアを生んでいくことができるのかなどに焦点をあてた複数の学術研究をガブリエレ氏は調査して、7つの研究に絞って重要なポイントを解説しています。

・1:インセンティブの使い方
まず1つ目に、インセンティブの重要性をガブリエレ氏は説いています。「毒ヘビであるコブラを減らすためにコブラを捕獲したら報酬を与えるようにしたところ、コブラを大量に繁殖させる人が増えた」という「コブラ効果」がビジネスや政治ではしばしば引用されます。インセンティブは多くの場合で効果的ですが、ただ導入するとむしろ目的に反する方向に強く後押しするコブラ効果を発生させる可能性があります。

インセンティブの望ましい形として、過去の研究では、研究者に資金提供をするアメリカ国立衛生研究所(NIH)とハワード・ヒューズ医学研究所(HHMI)というグループの違いに焦点を当てています。NIHは具体的な成果物に重点を置いて短い審査サイクルで研究者への資金提供をしています。一方でHHMIは、長期的な視野でプロジェクトそのものよりも、人材に資金提供する形となっています。結果として、HHMIの資金提供を受けた研究者らの方がさまざまな面で優れたパフォーマンスを発揮したと論文の著者らは結論付けました。これを受けてガブリエレ氏は、プロジェクトよりも人材を重要視するインセンティブは「失敗に対する許容度」が高くなっており、この点が長期的な思考と実験をサポートし、成功へつながりやすいと分析しています。


・2:専門外の人と話す
良いアイデアを生む重要なポイントの2点目として、「特定のトピックについてほとんど知らない人から、専門家が気づかない解決策を得られることがあります」とガブリエル氏は述べています。2014年の研究では、「類似市場」の人々が独自のアイデアを生み出すのにかなり優れていることが発見されました。専門家がアイデアのために刺激が欲しい場合に、同僚や業界の専門家ではなく、類似した分野の人に訪ねてみるということが望ましいです。

ただし、研究らは「非専門家のアイデアは現実的な知識を伴わないため、より創造的だが、実際には主にコストの面で実現はほぼ不可能なアイデアのこともある」と指摘しています。

・3:共同で取り組んでフィードバックを得る
アドバイスを受けるだけではなく、共同で取り組むことも良いアイデアを生む要素としてガブリエレ氏は挙げています。ミーティングやデータを共有したフィードバックから得られるプロセスは非常に効果的で、特に「質問に答える」ことはアイデアを考える上で特に重要です。自分とは違う視点や、より狭い知識や観点から出る質問は、知識を再構成するために重要な役割を果たします。


・4:良いアイデアを生む「スーパースター」について
グループが重要になる一方で、良いアイデアを生みまくる「スーパースター」はしばしば現れます。2008年に公開された「スーパースターの絶滅(PDFファイル)」という研究では、1万人以上のエリート科学者のうち不慮の死を遂げた112人に焦点を当て、その人物の死によりどれくらい研究に影響があったか分析しました。

結果として、8.8%~12.2%が「大幅かつ有意に生産量が減少した」と記録されました。並外れた活躍をするスーパースターがアイデアを生み出している場合は、スーパースターが何らかの形で失われても生産量が大きく落ちないように、情報や知識の共有、共同研究資金の確保などを積極的に行う必要があるとガブリエレ氏は指摘しています。

・5:組織のどこから良いアイデアは生まれるのか
グループないし組織からアイデアが生まれる場合、人と情報が飛び交うネットワークのどこからアイデアが生まれるのか、という点も注目すべきポイントです。アメリカの社会学者であるロナルド・バート氏は2004年に、アメリカ最大のエレクトロニクス企業の管理職を研究して、組織のネットワークにある構造を研究しました。

バート氏によると、一般的なトップダウン型の組織には、組織内の各グループ間で情報がうまく共有されない「構造的な穴」が存在するとのこと。管理職が各グループ全体から情報を受け取っていても、そこから新しいアイデアは生まれにくいもの。一方で、それぞれのグループから情報を受け取って統合する「ブローカー」のような存在は、「ビジョンの優位性があり、組織をより良く見ることが出来ます」とバート氏は語っています。組織のネットワークにはある程度の制約があり、そのような制約を受けにくい立場の方が、質の高いアイデアを生むことができます。

・6:モチベーション
全米経済研究所(NBER)は2008年に、研究開発を行う1万1000人以上の科学者について、研究に対する努力と成果への外発的・内発的動機の影響に焦点を当てています。研究では、科学者が今の仕事や研究内容を選んだ理由について回答し、回答内容を給与や研究資金、特別な立場を得られるなどの「外発的動機」や、責任や知的挑戦といった「内発的動機」にランク付けしました。その後、仕事を選んだ理由を週あたりの労働時間および過去5年に得た特許数とあわせて分析しました。

研究の結果、どれくらい努力して打ち込めるか、および革新的な成果を出せたかという点は、外発的動機よりも内発的動機と高い相関を見せたことが示されています。好奇心を理由に職を選んだ科学者はより多くの時間働き、より多くの特許を取得しています。一方で、高給を動機とした科学者は労働時間が少ない傾向にあり、また雇用の安定を動機とした科学者は創造的な成果が低い傾向にありました。

・7:良いアイデアを埋める年齢層
経済学者のベンジャミン・ジョーンズ氏は、「なぜアイデアを見つけるのが難しくなっているのか?」という原因として、「重要な教育の高度化」と「知識の最前線の変化」を挙げています。取り組む分野の知識レベルが上がると、そこに到達するまでに必要な教育の負担が大きくなります。結果として、注目すべきイノベーションを達成する人の年齢が大幅に上昇しています。以下のグラフは、1935年以前、1935年から1965年、1965年以後で、イノベーションを起こす能力のピークとなる年齢がシフトしていることを示しています。


ジョーンズ氏の発見を受けて、ガブリエレ氏は「社会的な観点から見ると、若い人がイノベーションを起こしにくくなっているというのは、憂慮すべき点です。ただ、各個人の観点からすると、優れたアイデアを生み出せていない状況に陥っていたとしても、『時間がたてばなんとかなる』と思わせてくれることかもしれません」と述べています。

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in メモ, Posted by log1e_dh

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