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出前や配車アプリで働くプラットフォームワーカー数百万人を従業員扱いにする指令案をEU議会とEU理事会が支持、業界は数千億円規模の負担増か


フードデリバリーサービスの配達員や配車サービスの運転手などのようにプラットフォーム経由で仕事を請け負うプラットフォームワーカー(ギグワーカー)について、2年前から行われてきた「従業員(正社員)として当然の権利を与えられるべき」という議論が煮詰まり、従業員扱いする方向で欧州議会と欧州連合理事会の代表者が暫定合意に達したことが発表されました。

Platform workers: deal on new rules on employment status | News | European Parliament
https://www.europarl.europa.eu/news/en/press-room/20231207IPR15738/platform-workers-deal-on-new-rules-on-employment-status


Rights for platform workers: Council and Parliament strike deal - Consilium
https://www.consilium.europa.eu/en/press/press-releases/2023/12/13/rights-for-platform-workers-council-and-parliament-strike-deal/

European Union lawmakers agree deal to bolster gig worker rights | TechCrunch
https://techcrunch.com/2023/12/13/eu-platform-worker-directive-political-deal/

タクシーの運転手や出前配達、家事代行などのプラットフォームワーカーは、EU全体で2800万人いると推計されています。その大多数は「自営業」となっていますが、企業の従業員と同じように規則や制限に従わなければならない状態にあり、実態は企業と雇用関係にあることが指摘されてきました。もし自営業者ではなく従業員なのであれば、最低賃金や傷病手当、休日などの扱いが大きく変わってきます。


EU圏ではさらなるプラットフォームワーカーの増加が見込まれており、2021年、欧州委員会はプラットフォームワーカーに従業員としての権利を与えるべきだという提案を行いました。

「ギグワーカーは正規雇用者として当然の権利を与えられるべき」として欧州委員会が新法案を発表 - GIGAZINE


そこから2年かけてプラットフォームワーカーについての扱いは議論が重ねられ、現地時間2023年12月13日、欧州議会と欧州連合理事会は、プラットフォームワーカーの労働条件を改善する指令案に暫定合意しました。この「プラットフォームワーカー指令」では、大きく2つのことが定められています。

1つは雇用状態の正しい分類です。これまでプラットフォームワーカーの大多数は自営業者扱いとなってきましたが、今後は定められた5つの指標のうち少なくとも2つの指標が満たされた場合、プラットフォームの従業員であると法的に認められることになります。

指標は以下の5つです。
1:労働者が受け取れる金額の上限
2:電子的手段を含む、パフォーマンスの監視
3:タスクの配分または割り当ての制御
4:労働条件の管理と労働時間の選択制限
5:仕事を整理する自由の制限、服装や行動に関する規則

合意文書では、EU加盟国は国内法の問題として、このリストにさらに指標を追加可能となっています。

これまで、プラットフォームワーカーが従業員としての権利を認められるためには、プラットフォームワーカー自身が「企業に雇用されている従業員である」ことを証明しなければいけませんでしたが、今後は、雇用関係がない(従業員ではない)ことを証明するのはプラットフォーム側の責任となります。

「プラットフォームワーカー指令」で定められたもう1つのことは、アルゴリズムをより透明性を持って使用することです。人材派遣プラットフォームでは管理アルゴリズムが用いられることにより、意思決定方法や個人データの使用方法が不透明になっている場合があります。

今回の合意により、自動監視および意思決定システムの使用については労働者に確実に通知しなければならなくなります。また、プラットフォームワーカーの心理的・感情的状態に関する個人データやプライベートな会話データ、労働組合活動を予測するデータ、人種的・民族的出自や移民かどうかや政治的・宗教的信念、健康状態に関するデータ、生体認証データといった種類の個人データに関しては、資格のあるスタッフによる管理が求められ、アカウント停止については人間による管理が必要となります。

なお、今回の発表はあくまで「プラットフォームワーカー指令について暫定合意に達した」というものであり、今後、指令は理事会と議会での承認と法的言語化を経て、両機関によって正式に採択されることになります。正式な採択後、加盟国は指令を国内法に組み込むにあたり2年の猶予があります。

当然のことながら、最低賃金保障や傷病手当の設定などはプラットフォーム側にとっては出費増となる部分で、その金額は業界全体で数十億ユーロ(数千億円)規模と推計されます。指令に先駆けて、2021年に同じ趣旨の法律が成立したスペインでは、フードデリバリーサービスのDeliverooが撤退し、他のフードデリバリーもサービス規模を縮小していることが報じられています。

EU to Force Uber (UBER US), Deliveroo (ROO LN) Treat Some Drivers as Employees - Bloomberg
https://www.bloomberg.com/news/articles/2023-12-13/eu-deal-to-make-uber-deliveroo-treat-some-drivers-as-employees

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in メモ, Posted by logc_nt

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