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「インドのレンタルハッカー事業」を暴いたロイター通信の報道が裁判所命令で削除

by Focal Foto

大手報道機関のロイター通信が2023年11月16日に公開した「How an Indian startup hacked the world(インドのスタートアップが世界をハッキングした方法)」という記事が、インドの地方裁判所で下された裁判所命令により一時的に削除されました。これを受けてロイター通信はこの決定を不服として控訴する姿勢を表明しています。

Editor’s note
https://www.reuters.com/investigates/special-report/usa-hackers-appin/

Indian Court Orders Reuters To Take Down Investigative Report Regarding A ‘Hack-For-Hire’ Company | Techdirt
https://www.techdirt.com/2023/12/07/indian-court-orders-reuters-to-take-down-investigative-report-regarding-a-hack-for-hire-company/


Reuters Takes Down Blockbuster Hacker-for-Hire Investigation After Indian Court Order
https://www.404media.co/reuters-takes-down-blockbuster-hacker-for-hire-investigation-after-indian-court-order/

2023年11月16日にロイター通信が公開した記事は「インドでは企業ぐるみでハッキングを行い、政治家や国際的な経営者、著名な弁護士などからデータを盗みだした」と告発するものです。ロイター通信によると、2009年以降、インドの「Appin Software Security」という企業が、10年以上にわたってシステムへの侵入やデータのハッキングなどを他企業から請け負っているとのこと。

ロイター通信からデータ提供を受け、独自の分析を行ったサイバーセキュリティ企業のSentinelOneは、「Appin Software Securityと数多くのデータ盗難事件との関連性がほぼ証明されました。Appin Software Securityが盗み出したデータには、パキスタンや中国の政府高官の電子メールなどが含まれていただけでなく、インドの宗教的少数派のシーク教徒のコミュニティサイトに対して改ざん攻撃を実行した形跡が見つかりました。また、特定のシーク教徒のGmailアカウントに対するハッキングの形跡も発見されています」と報告しています。

これらの報道に対してインド・ニューデリー地方裁判所は2023年12月4日に、ロイター通信に対して記事の削除を求める命令を下しました。これを受けてロイター通信は該当記事を一時削除。記事作成時点で該当の記事のページには「編集後記」として一時的な記事の削除を行った旨を示す文章が記されています。

Editor’s note
https://www.reuters.com/investigates/special-report/usa-hackers-appin/


一方でロイター通信は「今回の記事は数百人へのインタビューや数千の文書、および複数のサイバーセキュリティ企業との調査に基づいている」と述べ、記事に誤りや不正確な情報が含まれていなかったことを強く主張しています。

また、ロイター通信はニューデリー地方裁判所の決定に対して、「記事の正当性を支持し、この決定を不服として控訴する予定です」と報告しています。

「報道の自由」に問題を抱えるインドではこれまでにもジャーナリズムが制限される事例が多数発生しています。2020年9月には人権擁護活動家への弾圧を行うインド政府に対して批判するキャンペーンを行ったアムネスティ・インターナショナルインド支部の銀行口座が当局によって凍結されました。その結果、職員は解雇され、最終的にアムネスティ・インターナショナルはインドでの事業を閉鎖しています。


また、2023年2月には、インドのナレンドラ・モディ首相を批判するドキュメンタリーを公開したイギリスの公共放送局・BBCのインド支局に対して当局が家宅捜索を行い、複数の口座や財務ファイルなどを押収したことが報じられています。

なお、この件を報じたテクノロジー系メディアの404 Mediaに対し、ロイター通信はコメントを残していません。

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in ネットサービス, Posted by log1r_ut

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