サイエンス

オリンピックメダリストやノーベル賞受賞者など多分野の天才たちの成長を調べた研究で従来の「才能ある子どもの育て方」が間違っていたことが判明


科学・スポーツ・音楽・チェスなどの分野で活躍する約3万5000人のエリートを分析した結果、幼少期に優れた才能を発揮した人物が、大人になってスーパースターになることは非常にまれであることが明らかになりました。ワールドクラスのパフォーマーのほとんどは、専門分野を絞る前に、ゆっくりと成長し、複数の分野を探求していることが明らかになっています。

Recent discoveries on the acquisition of the highest levels of human performance | Science
https://www.science.org/doi/abs/10.1126/science.adt7790

Science says we’ve been nurturing “gifted” kids all wrong | ScienceDaily
https://www.sciencedaily.com/releases/2025/12/251221043218.htm

卓越したパフォーマンスを発揮する人材は、イノベーションを推進し、世界で最も喫緊の課題に取り組む上で重要な役割を果たします。そのため、社会はトップレベルの才能がどのように育まれるのかを理解することに強い関心を持っています。


過去数十年にわたり、才能と専門性に関する研究は、「傑出した業績は学校の科目、スポーツ、コンサートなどで優秀な成績を収める、といった幼少期の優れたパフォーマンスと、知性・身体協調性・音楽的才能といった特定の能力の組み合わせによってもたらされる」と考えられてきました。そのため、多くの英才教育プログラムは、優秀な若手パフォーマーを早期に特定し、迅速に専門分野を習得させることに重点を置いています。

しかし、2025年12月に学術誌のScienceに掲載された「人間が最高レベルのパフォーマンスを獲得することに関する最近の発見」という論文では、長年にわたって行なわれてきた英才教育や才能育成アプローチの多くが、誤った前提に基づいていることを示唆しています。


この研究を主導したのは、ドイツにあるカイザースラウテルン・ランダウ大学のスポーツ科学学科のアルネ・ギュリッヒ教授です。これまでの才能に関する研究のほとんどが、若手または準エリートレベルのパフォーマーに焦点を置いたものばかりでした。しかし、研究チームはワールドクラスの成人アスリートを含む、これまでよりも広範なエリートの情報も含め、才能がどのように育まれていくのかを調べています。

研究では多くの先行研究から得られた大規模なデータセットを再検証し、世界中のトップレベルのパフォーマー3万4839人の成長を分析しました。調査対象となったパフォーマーには、ノーベル科学賞の受賞者やオリンピックのメダリスト、一流のチェス選手、著名なクラシック音楽家などが含まれます。

科学系メディアのScienceDailyは「この研究により、ワールドクラスのパフォーマーが異なる分野において、どのように発達していくのかを初めて比較することができるようになった」と指摘しました。


最も印象的な結論のひとつが、「ワールドクラスのパフォーマーたちは、長年信じられてきた想定とは異なる発達の道をたどってきた」という点です。研究を主導してきたギュリッヒ教授は、「様々な分野に共通するパターンが浮かび上がってきました」と語っています。

まず、若い頃に最も優れた人物として頭角を現した人は、後年になって最も優れた人物となることはほとんどありませんでした。次に、最終的に最高レベルに達した人は、若い頃に徐々に上達していく傾向があり、同年代でトップの成績を収めたわけではないことも明らかになりました。将来的に特定の分野で最高レベルの成功を収める人は、一般的に、若い頃に単一の分野に集中していなかったことも判明しています。むしろ、様々な学問分野や音楽ジャンル、スポーツ、職業など、幅広い活動を探求していたことが明らかになりました。

研究チームはこのパターンを説明するために3つの仮説を提案しています。ひとつは「探索とマッチング仮説」で、複数の分野に触れることで、最終的に自分に適した分野を見つけることに成功したという仮説です。もうひとつは「学習資本強化仮説」で、多様な分野での学習が学習能力全体を強化し、選択した分野においてのちに最高レベルを維持し、継続的に向上していくことが容易になったというものになっています。3つ目は「リスク限定仮説」で、複数の分野に取り組むことで、燃え尽き症候群や不健康な取り組みと休息のバランス、モチベーションの低下といった、メンタルに起因する身体的損傷や挫折の可能性が低減するという説です。


ギュリッヒ教授は3つの仮説が複合的な効果を発揮する可能性を示唆しており、「自分にとって最適な分野を見つけ、長期学習の可能性を高め、キャリアを阻害する要因のリスクを軽減した人が、ワールドクラスのパフォーマンスを発揮できる可能性が高くなります」と語りました。

調査結果を踏まえ、ギュリッヒ教授は若い才能をサポートするための明確な指針を示しています。まず、調査結果は早期に単一の分野に特化することは避けるべきであると示唆しています。むしろ、若者には複数の関心分野を探求し、2~3の分野でサポートを受けられる機会を与えるべきと主張しました。

若者が取り組む分野は必ずしも密接に関連している必要はありません。言語と数学、地理と哲学といった組み合わせも同様に価値のあるものになるはずであると、ギュリッヒ教授は指摘しました。有名な例としては、アルバート・アインシュタインが挙げられます。アインシュタインは史上最も優れた物理学者のひとりで、音楽にも造詣が深く、幼少期にはバイオリンを習っていたことで知られます。

研究チームは今回の研究結果が人材育成プログラムの設計方法を変える上で重要な指針となるはずだと主張。ギュリッヒ教授は、「科学・スポーツ・音楽・その他の分野でワールドクラスのパフォーマーを育成する機会が広がる可能性があります」と語りました。

この記事のタイトルとURLをコピーする

・関連記事
「才能あるね」はNG、子どもを褒める際は才能ではなく努力を認めるべき - GIGAZINE

子どもの才能を伸ばすのに重要な5つの要素とは? - GIGAZINE

遺伝子研究で「才能ありで生まれるよりも金持ちに生まれる方がいい結果を生む」という結果が発表される - GIGAZINE

「秘められた才能」は誰の中にでも眠っているのか? - GIGAZINE

45年にわたる5000人の天才の追跡調査で「早熟の天才」ほど社会的・経済的に成功を収めやすいことが判明 - GIGAZINE

in サイエンス, Posted by logu_ii

You can read the machine translated English article A study examining the growth of geniuses….