遺伝子研究で「才能ありで生まれるよりも金持ちに生まれる方がいい結果を生む」という結果が発表される
by namo deet
最新の遺伝子をベースにした測定法で調査が行われたところ、遺伝的な「才能」は低所得の家族と高所得の家族で等しく見られたとのこと。しかし、高所得の家族の元に生まれた「才能ない子ども」は、低所得の家族の元に生まれた「才能ある子ども」よりも高い割合で大学を卒業していることが判明しました。
Genes, Education, and Labor Market Outcomes: Evidence from the Health and Retirement Study
https://www.nber.org/papers/w25114
It’s better to be born rich than gifted - The Washington Post
https://www.washingtonpost.com/business/2018/10/09/its-better-be-born-rich-than-talented/
新たに行われた研究では学業成績に関係する遺伝子指標に基づき、子どもを上から順に4つのグループに分けました。
その結果、「遺伝子スコア」の上位25%、つまり高い才能の潜在的可能性を持ちながら、低所得の父親の元に生まれた子どもが大学を卒業した割合は24%だったのに対し、同様の遺伝子スコアを持ち高所得の父親のもとに生まれた子どもが大学を卒業した割合は63%にも上ったとのこと。
一方で、遺伝子スコアが下位25%でありながら、高所得の父親の元に生まれて大学を卒業した人は27%でした。27%という数字は、「才能を持ちながら父親が低所得」という人とほぼ同じ割合になります。この結果は「貧しい人と裕福な人では遺伝子が異なる」という都市伝説に反するものではあるものの、「才能ある貧しい子どもは困難に直面することとなる」という厳しい現実を示すものとなっています。
by klimkin
ニューヨーク大学の経済学者であるKevin Thom氏と、ジョンズホプキンズ大学の経済学者であるNicholas Papageorge氏は2018年7月にNature Geneticsの研究チームが発表した大規模なゲノム研究の結果を用いて分析を行うことで、この事実を明らかにしました。
Nature Geneticsの研究チームは、113万1881人の塩基対をスキャンし、遺伝子と学歴の関係を調査しました。そして、研究結果を使って遺伝的な要素から学業成績を予測できる指標を作り出したとのこと。
これまでは子どもの学業的な潜在可能性を、「親の裕福さ」からの切り離して調査する場合、その多くはIQテストの結果を基にしてきました。しかし、子どものIQもまた親の職業や収入、教育環境などによるバイアスがかかっているという点が問題点でした。「遺伝子的には似ている二人でも、IQテストの結果が異なることはあります。裕福な親は子どもにより多く投資を行うためです」とPapageorge氏は語ります。
もちろん単一の「賢い遺伝子」というものは存在しません。研究者は知性を制御するいくつもの遺伝子の相関関係や総数に着目し、遺伝子解析サービス「23andMe」が保有する100万人以上の遺伝子データを分析した結果、学業成績に関係する1200の遺伝子変異を特定したとのこと。
当初、研究者たちは学業成績のような複雑なものが遺伝子の指標と関係しているという発想に懐疑的だったそうです。しかし、何度テストを行っても、遺伝子の指標のスコアが大学の卒業率を予測するということが示されました。
いくつかの遺伝子のエンコーディングは胎児の脳の発達や神経伝達物質の分泌に影響を及ぼします。これらそれぞれのインパクトは微小なのですが、全てを合わせると、人の学歴の差を11~13%程度説明するものになるとのこと。
by paseidon
「私たちは、遺伝子マーカーと社会科学研究の結果の間にある説得力のあるつながりを初めて見つけ出し、新しい時代に踏み込んだと言えます」とThom氏は述べています。ただし、今回の研究は遺伝子データが限られていたため、白人の人々のみを対象としている点には注意が必要です。
高い才能の可能性を持ちながら経済的な困難のため大学を卒業できない子どもたちについて、Thom氏は「彼らの潜在的可能性はムダになってしまっています。これは彼ら自身にとっても、経済にとってもよくないことです」と語りました。
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