患者の体重を最大25%減らすことができる肥満治療薬「Zepbound」がアメリカ食品医薬品局の承認を受ける
![](https://i.gzn.jp/img/2023/11/09/obesity-treatment-zepbound/00_m.jpg)
2023年11月8日にアメリカ食品医薬局(FDA)が、アメリカの製薬会社「イーライリリー」が開発した肥満治療薬「Zepbound」の販売を認可したことを発表しました。
FDA Approves New Medication for Chronic Weight Management | FDA
https://www.fda.gov/news-events/press-announcements/fda-approves-new-medication-chronic-weight-management
![](https://i.gzn.jp/img/2023/11/09/obesity-treatment-zepbound/01_m.png)
FDA Approves Lilly's Zepbound™ (tirzepatide) for Chronic Weight Management, a Powerful New Option for the Treatment of Obesity or Overweight with Weight-Related Medical Problems | Eli Lilly and Company
https://investor.lilly.com/news-releases/news-release-details/fda-approves-lillys-zepboundtm-tirzepatide-chronic-weight
Lilly weight-loss drug Zepbound gets US, UK approval to rival Wegovy | Reuters
https://www.reuters.com/business/healthcare-pharmaceuticals/us-fda-approves-lillys-weight-loss-drug-2023-11-08/
イーライリリーの肥満治療薬「Zepbound」は、腸から分泌される「グルカゴン様ペプチド-1(GLP-1)」と「グルコース依存性インスリン分泌促進ポリペプチド(GIP)」という2種類のホルモンの受容体を活性化して、投与した患者の食欲と食物摂取量を減少させる薬品です。FDAは2023年11月8日、ボディマス指数(BMI)が30kg/m²を超え、肥満と判定される成人や、BMIが27kg/m²以上で「過体重」と判定された成人に対し、継続的な体重管理のために「Zepbound」の注射による投与を承認しました。
肥満もしくは過体重と判断された患者には、4~20週間にわたって週に1度5~15mgのZepboundが注射によって投与されます。また、Zepboundの投与と並行して患者には低カロリー食の摂取と、運動を伴う身体活動の増加が求められます。
Zepboundの有効性は、研究チームによる無作為化二重盲検プラセボ試験によって認められています。これらの研究では、週に1回5mg、10mg、15mgのZepboundを投与された合計2519人の患者と、同様にプラセボを投与された958人の72週間後の体重の推移を比較した結果、3つの用量レベル全てで、Zepboundを投与された患者は、プラセボを投与された患者と比較して体重が有意に減少していたことが報告されています。イーライリリーによると、最高用量でZepboundを服用した患者の3人に1人は、体重の25%以上の減量に成功しているとのこと。
![](https://i.gzn.jp/img/2023/11/09/obesity-treatment-zepbound/02_m.jpg)
また、肥満は2型糖尿病にも関係していることから、研究チームは糖尿病の有無でそれぞれプラセボ試験を行いました。実験の結果、糖尿病のない成人にZepboundまたはプラセボを投与した場合、Zepboundを投与された患者はプラセボ群と比較して平均18%の体重減少に成功したことが報告されています。同様に、糖尿病を抱えた成人でも実験を行ったところ、Zepboundを投与された患者はプラセボ群と比較して平均で12%体重が減少しました。
FDAの医薬品評価研究センターの糖尿病、脂質障害、肥満部門のディレクターであるジョン・シャレッツ医学博士は「肥満と過体重は、心臓病や脳卒中、糖尿病などのアメリカ人における主要な死因のうちのいくつかにつながる深刻な身体の状態です。アメリカの成人のうち、約70%が肥満または過体重と考えられていることを踏まえると、今回Zepboundが承認されたことは、肥満に対処するという医療分野のニーズに応えるものです」と述べています。
FDAによると、適切な食事や運動を行うことで、体重の5~10%を減らすことができると、肥満または過体重と判定された患者の心血管疾患のリスクを低下させることができるとのこと。
![](https://i.gzn.jp/img/2023/11/09/obesity-treatment-zepbound/03_m.jpg)
一方でFDAは、Zepboundに吐き気や下痢、おう吐、便秘、胃の不快感と痛みなどの副作用があることや、ラットでの実験において甲状腺のC細胞に腫瘍が発生したことなどを報告し、念のため甲状腺がんへの罹患(りかん)歴がある患者や、Zepboundに含まれる有効成分のチルゼパチドにアレルギー反応がある患者には投与してはならないと注意喚起しています。
イーライリリーは11月末から薬局でのZepbound販売を開始する予定で、2023年の年末までに製造能力を約2倍に向上させることを明かしています。また、Zepboundは月額1059.87ドル(約16万円)で販売される予定で、2024年には保険適用の範囲に追加される可能性があることをイーライリリーは報告しています。
・関連記事
体重を15%減らす薬「Wegovy」が当局の承認を受け2021年6月中に発売予定 - GIGAZINE
画期的な「肥満治療薬」の登場に沸く医療現場とその前途に横たわる問題とは? - GIGAZINE
23時間断食する「1日1食(OMAD)ダイエット」って一体何?効果はあるのか?について専門家が解説 - GIGAZINE
身長と体重だけで求めるBMIは肥満を表わす数値には向いていない、ではどうやって肥満を示すべきなのか? - GIGAZINE
依存症の克服につながる現象が見つかる、ダイエット薬の使用者が飲酒や「爪をかむクセ」をやめることができたとの報告 - GIGAZINE
・関連コンテンツ
in サイエンス, Posted by log1r_ut
You can read the machine translated English article Obesity treatment drug ``Zepbound'….