海賊版の視聴数と映画の興行収入には強い相関関係があるという調査結果
著作権を侵害する海賊版コンテンツの取り締まりは「海賊版の存在が著作権で保護されているコンテンツにネガティブな影響を与える」という考えを根幹として行われていますが、2015年には「オンライン上の著作権侵害がコンテンツの売上を変えるということを支持する証拠はない」と欧州委員会主導の調査で報告されたり、大規模海賊版サイトの閉鎖後に映画の興行収入が減少しているケースが判明したりと、海賊版がコンテンツの売上に悪い影響を与えない可能性が示されています。海賊版の調査会社であるMUSOによる新しい調査では、映画の著作権侵害は興行収入と強く関係していることが指摘されています。
MUSO study shows strong correlation between Box Office and Unlicensed Audience data
https://www.muso.com/magazine/correlation-between-box-office-and-unlicensed-audience-data
Movie Piracy is Strongly Linked to Box Office Revenue * TorrentFreak
https://torrentfreak.com/movie-piracy-is-strongly-linked-to-box-office-revenue-231009/
MUSOは2021年ごろまでに映画館で公開された「ライオン・キング」や「シャン・チー/テン・リングスの伝説」「スパイダーマン: ノー ウェイ ホーム」などの人気作を含む98本の映画について、毎日の著作権侵害数(海賊版の視聴数)と公式の興行収入を比較する調査を行いました。海賊版の視聴数は、映画の公開日から劇場で上映されなくなるまで、もしくは上映中に正規のストリーミングサービスが開始されるまでを測定範囲としています。
結果として、公式の興行収入と日々の海賊版視聴数は、同様のパターンに従っていることが示されました。以下のグラフは、分析した98本の映画について公開からの日時ごとの需要ランクを示したもので、赤が正規の映画、青が海賊版です。統計学において相関計数の指標を示すスピアマンの順位相関係数においては計数が「0.7~1.0」だと強い相関関係があるとされますが、興行収入と海賊版視聴数の相関係数は「0.85」で、非常に強い関係があるとMUSOは主張しています。
調査結果を受けて、MUSOは「興行収入と海賊版の視聴数の間には、非常に強力で統計的に有意な正の相関関係があります。したがって、海賊版の消費データは、興行収入データのプロキシとして使用でき、その逆も可能です」と述べています。
ただし、興行収入と海賊版視聴数とは強い「相関関係」があると示されていますが、「因果関係」が確認されているわけではありません。MUSOの調査結果は、単に「新しいものがリリースされた直後は需要が高まり、急速に需要が低下するが、週末に持ち直す」というパターンが劇場公開でも海賊版サイトでも同様であるという結果が出ただけの可能性があります。また、相関テストは数値をランク付けして比較したもののため、実際の数字の変化は興行収入と海賊版視聴数とで大きな差があると考えられます。
また、MUSOは「興行収入データと海賊版需要データを組み合わせると、映画消費の全体像が得られます」と結論付けていますが、主に著作権に関するニュースを扱うメディアのTorrentFreakは「98本のデータを総合しているため、一部の小規模なタイトルには相関関係がないとしても、データの山に埋もれてしまう可能性があります。映画の規模やジャンルなどの条件ごとで、異なる相関パターンがあるかどうか、などの追加の調査が期待されます」と指摘しています。
・関連記事
映画の著作権侵害による日本経済の損失は564億円 - GIGAZINE
Netflixで作品配信が行われない場合はBD・DVDの売り上げが伸びることが判明 - GIGAZINE
「オンライン海賊版はコンテンツ売上にネガティブな影響を与えない」という報告書が存在するが欧州委員会は発表せず放置 - GIGAZINE
Megaupload閉鎖後に映画の興収が減少、海賊版の宣伝効果は規模に反比例 - GIGAZINE
マンガの海賊版は「最新作の売り上げ減少」と「旧作の売り上げ促進」の2つの効果をもたらす - GIGAZINE
・関連コンテンツ