AmazonはKindleユーザーの「読書情報」をどれだけ追跡しているのか?
カリフォルニア州は2018年、消費者が自分のデータをより詳細に管理できるようにするカリフォルニア州消費者プライバシー法(CCPA)を可決し、居住者は企業が持つ個人データを開示させることができるようになりました。2023年1月にはCCPAが改正されてより強力になったカリフォルニア州プライバシー権利法(CPRA)も施行されており、この法律に基づいてAmazonに個人情報を要求したユーザーによると、自身の注文履歴や配送情報のほか、Kindleで読んだ本のタイトルやページ数などが詳細に記録されていたことが報告されています。
'They know us better than we know ourselves': how Amazon tracked my last two years of reading | Amazon | The Guardian
https://www.theguardian.com/technology/2020/feb/03/amazon-kindle-data-reading-tracking-privacy
海外メディアのThe Guardianでテクノロジー系の記事を投稿するカリ・ポール氏は、CCPAに基づいてAmazonに自身の個人データを請求しました。すると、注文履歴、配送情報、カスタマーサポートのチャットログといった想定していた内容に加えて、以下の画像のようなスプレッドシートが2万行を超えるボリュームで含まれていたとのこと。スプレッドシートには購入しているKindle本のタイトル、タイムスタンプ、アクションが記されており、ポール氏の「読書習慣」が詳細に記録されています。
さらに、開示されたデータには、ユーザーがいつどの本をどれくらい読んだという情報だけではなく、読者がその本のどこを気に入ったのかも記録されています。ポール氏のデータによると、「2019年5月21日に『アナイス・ニンの日記』にハイライトをつけた」「2018年8月23日午後11時25分に『The Recovering: Intoxication and its Aftermath』のある部分にハイライトをつけ、8月27日にハイライトの色を変更した」ということまで記録されています。そのほか、文章をコピーしてクリップボードに保存した回数や内容、Kindleの辞書で調べた単語などが含まれていました。
ポール氏は「Amazonがサイトでの購入やサイト上での動き、音声コマンド、購入した内容、位置情報を追跡していることはすでに理解していました。しかし、私の読書習慣まで広範囲に追跡していたことを知ると、不快な気持ちになりました。この情報は誰と共有され、その情報で何が行われるのでしょうか。また、私のプライバシー、そして読書体験自体の将来にどのような影響を与える可能性があるのでしょうか?」とコメントしています。
Amazonの広報担当者は「ユーザーのハイライトは、デバイス間で読書の進行状況や本に対するアクションを同期するために記録しているのみであり、出版社や他の誰とも共有することはありません」と回答しています。また、ハイライトは集約したデータとして「この本で多くハイライトされている箇所」として表示されますが、個人が識別される内容で公開されることはありません。
ニューヨーク大学法科大学院のエンゲルベルクセンターは、電子書籍市場の成長により「本の購入や読書体験に関するユーザーデータを販売することが、新たな収入源になり得る」と論文で指摘しています。また、エンゲルベルクセンターは「電子書籍市場は、法的および技術的な変化により、購入者や読者の利益よりも出版社やプラットフォームの利益が優先される傾向にある新しい市場構造です」と表現しています。
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非営利団体の地域自立支援研究所のステイシー・ミッチェル氏は「人工知能によってアマゾンがこのデータをどのように活用できるようになるのか、私たちにとって理解するのは困難です。Amazonがデータの分析を通じて発見できる微妙な相関関係は、私たちが人間として概念化できるものを超えています。読書の時間帯やページをめくる速度でさえ個人の特徴を知るために使われる可能性があります」と指摘しています。また、CCPAの基盤を共同作成したアラステア・マクタガート氏は、「これらの企業の多くは、どのように使用するか定めないまま、ただできるだけ多くのデータを収集している場合があります。本質的な真実は、これらの存在は私たち自身よりも私たちのことをよく知っているということです」とデータ収集の懸念について語っています。
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