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「図書館に電子書籍のライセンスを供与するビジネス」の問題点とは?


公共の図書館が扱う電子書籍の量は増加傾向にありますが、紙の本と違って図書館は電子書籍を「購入」しておらず、図書館に対する「電子書籍の貸与権の販売」が1つのビジネスとなっていることが大きな問題となっています。図書館において電子書籍がどのように扱われており、何が問題なのかを、作家のDaniel A. Gross氏が指摘しています。

An App Called Libby and the Surprisingly Big Business of Library E-books | The New Yorker
https://www.newyorker.com/news/annals-of-communications/an-app-called-libby-and-the-surprisingly-big-business-of-library-e-books

図書館が物理的な本を無償で貸し出しできるのは、「一度合法な方法で入手したものは、著作権者の許諾なく販売・貸与できる」という著作権法の例外規定「ファーストセール・ドクトリン」が存在するためです。一方、近年の図書館は物理的な本だけでなく電子書籍も扱っていますが、電子書籍にファーストセール・ドクトリンは適用されません。これは電子書籍が図書館によって購入されるのではなく、出版社からデジタル配布権を購入したサードパーティーベンダーが、図書館に「貸与権」を販売するという仕組みが存在するためです。

2020年に新型コロナウイルス感染症(COVID-19)のパンデミックが発生した際、アメリカの図書館では電子書籍の扱いが急増しました。このため例えばデンバー公立図書館は、2019年には予算全体のうち20%だったデジタル書籍に対する予算を、2020年には予算全体の3分に1にまで増加させました。貸出数は前年比で60%アップし、230万件に上ったとのことです。しかし、電子書籍の貸与は紙の書籍の貸与よりもコストが高くつくため、図書館の財政を圧迫しているという問題が報告されています。


図書館に電子書籍の貸与権を販売するサービスにはBibliothecaHooplaAxis 360など複数ありますが、最大手は「Libby」という貸出アプリを開発するOverDriveです。

OverDriveはもともと、1980年代に「ドキュメントのデジタル化」を行う企業として創業されました。2021年時点ではOverDriveの収益の大部分が「デジタルコンテンツのライセンスを学校や図書館に提供すること」によって生み出されていますが、これは言い換えると「アメリカの税金を主な収益にしている」ことだと指摘されています。

2000年、OverDriveは出版社がオンラインストアを開設し電子書籍を消費者に直接販売することを支援するとともに、いくつかの出版社に対して電子書籍のライセンスを図書館に供与するよう働きかけました。この結果、それまでAmazonを通して販売されるだけだった電子書籍が、「1つのコピーを1人の読者に」というライセンスで図書館に販売されるようになったとのこと。このライセンスには期限が存在せず、「1人のユーザーが電子書籍を返却すると次のユーザーが借りられる」という紙の書籍そのものの仕組みが再現されました。


しかし、2011年には出版社のHarper Collinsが、ライセンスに「貸出26回まで」という上限を付ける新しいモデルを導入しました。このライセンスの場合、26回の貸出が終了すると、図書館は再度ライセンスを購入する必要があります。また、他の出版社もこの動きに続き、「2年しばりのライセンス」「一度に複数のユーザーが借りられるライセンス」といったさまざまなバリエーションを登場させることで、収益の増加を図りました。この結果、図書館は「古典作品のようにユーザーが今後何年にもわたって借りる本は高額の永久ライセンス」「一時の流行とみられる本は安価なライセンスを大量購入する」といったライセンスの使い分けを行うようになったとのこと。

たとえば、ニューヨーク公共図書館(NYPL)はバラク・オバマ大統領の回想録である「A Promised Land」のライセンス購入に際し、まず、オーディオブックの永久ライセンス310個を1ライセンスあたり95ドル(約1万円)・計2万9450ドル(約320万円)で購入しました。また1年および2年しばりの電子書籍ライセンスを639個、計2万2512ドル(約250万円)分購入。A Promised Landは消費者向けの電子書籍として1冊18ドル(約2000円)で販売されていたので、換算すると消費者向け電子書籍3000冊に相当します。一方、NYPLは2021年8月時点でA Promised Landのハードカバーを260冊だけ購入。ハードカバーの定価は45ドル(約5000円)ですが、Amazonでは23.3ドル(約2600円)から購入可能とのこと。この電子書籍は最初の3カ月で数千人が借り、待機リストには数千人が連なっていたそうです。

OverDriveは上記のような複数のライセンスを扱っており、図書館は日々、出版社との価格交渉やデジタル権利システムの管理といった業務にあたっているとのこと。一方で、AppleやAmazonが、出版社と共謀して電子書籍の価格をつり上げていることが問題となっています。

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既にOverDriveは大きな市場シェアを占めていますが、統合が進み競争がなくなることで、今後、図書館における電子書籍コストもさらに上がっていく可能性が考えられます。図書館がデジタルコンテンツを扱うことに対する需要はますます増加していますが、価格の高騰により、長期的にみると図書館にとって「デジタルコンテンツのライセンス制」が受け入れがたいものになる可能性も。このため、図書館が物理的な本に対してファーストセール・ドクトリンによる公的権利を持っているように、何らかの方法で法律を修正し、電子書籍についても公的権利を取り戻す必要があるとのこと。出版協力を行うBrick HouseのMaria Bustillos氏は「図書館の重要なポイントは『保存』にあり、保存するためには、図書館が所有する必要があります」と現状の問題について指摘しました。

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in メモ, Posted by darkhorse_log

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